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【詩】新宿虎落笛

新宿虎落笛

  

新宿虎落笛


         満天に不幸きらめく降誕祭    
                 西東三鬼

満天に不幸がきらめいて
わたしのさみしいのうみそは
はまべのようによこたわり

満天に不幸がきらめいて
わたしのひえきったこころは
発光ダイオードのように青ざめる

満天に不幸がきらめいて 
地上では 青白いサイレンとともに
あなたの生誕を祝う花火が打ち上がり

満天に不幸がきらめいて
わたしのねむらないたましいは
冬の鬼火のようにただよう

満天に不幸がきらめいて
わたしのやりきれなさが
新宿の虎落笛となり

満天に不幸がきらめいて
今日も地上はあまたの友人や恋人が
虚飾のイルミネーションカクテルに酔い痴れ

満天に不幸がきらめいて
地上は一億光年の闇のなかの賛美歌で充ち
地下は数え切れない羊の命と冬のひまわりが
震え瞬いている

ああ 今夜も満天に不幸がきらめいている

さあ 唄え 新宿虎落笛
もっと 悲しく やるせなく

満天に不幸がきらめいて とうとう
無神論のわたしも祈るようになった


「満天に不幸がきらめいて」の姉妹作です。
西東三鬼の「満天に不幸きらめく降誕祭」がしばらく頭にひっかかったままの年末でした。なにげなくネットで夜の新宿の画像を見ていたら、虎落笛という言葉が浮かんで、それがそのまま三鬼の句とつながって、変なものができちゃいました。



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