見出し画像

街の温度/連載エッセイ vol.19

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.21(2004年3月)」掲載(原文ママ)。

東北を基盤に全国を飛び廻る私にとって、冬の服装ほど厄介なものはない。
こちらの北風に合わせて着込めば、あちらで無用の汗をかくことになるし、あちらの陽射しに合わせれば、こちらでの発着時に凍える。

身軽な格好が好きな私は、基本的に後者の服装を選ぶのだが、最近は講義を担当することも多くなり、スーツの手荷物まで増える始末。
面倒な事この上ない。
旅慣れて、せっかく荷物がコンパクトになってきたのが台無しである。

(ちなみに私は1週間程度の外出なら
 下着を3組程しか持ち歩かない。
 毎晩の手洗いは面倒だが
 重い荷物を持つよりはマシである。
 結構マメなのだが
 自分のパンツを
 夜な夜なジャブジャブする男の後姿は
 想像するに忍びない。)

そういえば先日、久々に東京をブラブラする機会があった。

関東での用事の後、続けて関西へ行く用事が控えていたのだが、移動日として1日ポッカリ空きができてしまったからだった。

不要になったスーツだけ人に預けて、私は愛用の3ウェイバッグ1つ持って寝台発車の時刻まで、街を闊歩することにした。

とは言っても元来、喧騒が苦手な私である。
品川の仲間内の院を見学させて貰った後、もう1つの院を見学するという名目で、自然と足は下町へと向いた。

(余談だが、都会の院の工夫は素晴らしい。
 狭い空間をいかに有効活用するか
 「匠の技」が凝縮されていた。
 ああ、我が院よ!
 無駄なスペースばっかりで
 ごめんよぉぉ!!)。

そこは古くからある商店街。
行き交う人々の年齢層は少し高め。
お世辞にも都会とは言えない通りを、店先で買った手作りのカレー弁当を頬張り歩いていると、ふとある疑問が湧いた。

「東北はおろか東京からも遠く離れた関西の気候に合わせた服装でいる私が、気温以上に寒さを感じていないのは何故だろう?」 

日が傾き、店じまいが始まる頃、私は銭湯にいた。
体を洗いながら(さすがにパンツは洗わない)、まだその理由を考えていた。

湯船につかりながら、時代に逆行して予想外に混んでいる洗い場を眺めている時、私はやっとその訳が理解できた。
人々の「活気」である。
その活気が私に寒さを感じさせなかったのだ。

皮肉にも新ビル賑やかな東京は、その人口の多さから、その正反対に位置する「古き良き商店街」の存続をも可能にしていたのである。

都会のくせして田舎の側面も持つとは許せん!
郊外型の店舗に押されて、既存の商店街が窮地に立たされている東北とはえらい違いではないか!
商店街に院を構える私としても負けられんぞ!

などと一人ジャグジーで興奮していると、何やら妙な気配が…。

見ると、ダンディーなオヤジさんが何やら「活気溢れる」視線でこちらを見つめている。

すぐさま銭湯を飛び出した私に吹きつける風は、やはり季節通りの冷たさを湛えていたのだった…。


☆筆者のプロフィールは、コチラ!!

☆連載エッセイの
 「まとめページ(マガジン)」は、コチラ!!

※「姿勢調整の技術や理論を学んでみたい」
  もしくは
 「姿勢の講演を依頼したい」という方は
  コチラまで
  お気軽にお問合せください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?