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雨の日に念願のビスコッティを焼く

四月の雨に身動きの取れない日曜日、重い腰を上げてビスコッティを焼いた。

ビスコッティは焼き菓子の一種。粗く刻んだナッツやレーズン、チョコなどを練り込んだスティック状で、二度焼く。
ものによってはかなり固い食感だ。

初めて出合ったのはあるコーヒー店だっただろうか。
コーヒーチェーン店よりごみごみしておらず、丁寧な店員さんが揃ったお気に入りの店だ。

そのお店は焼き菓子が豊富で、たまたま頼んでみたビスコッティの硬派な噛み応えが気に入り、コーヒーだけでは口寂しいとき何度か注文したことがある。

作ってみようと思い始めたのは、NHKの「きょうの料理」がきっかけだった。
料理研究家のなかしましほさんのレシピを知り、家でビスコッティを焼いてコーヒーと一緒に食べるシチュエーションを繰り返し描いた。

しかし、「ビスコッティを作りたい」は数年にわたり手帳のウィッシュリストに取り残されたままだった。

理由は大きく分けてふたつある。
ひとつは、なかしましほさんのレシピ内にある「太白ごま油」がなかなか入手できなかったこと。
昨年、近所のドラッグストアが取り扱いを始めてようやく買えた。

もうひとつは、やはり二度オーブンで焼くことだろう。
一度焼いてから冷まし、棒状に切ってからさらに三十分以上焼く。さらに冷めてから、ようやく食べられる。
ざっと見積もっても半日かかる。

ここ数年は休日といえば出かけたり、ゲームをしたり、運営しているWebマガジンの作業をしたり、ほかに優先してやりたいことが沢山あった。

ビスコッティを作りたいと再度思わせてくれたのは、「vlog」と呼ばれる暮らしの動画で、ビスコッティ作りを目にしたからだろう。
書籍化までされているvloggerの方で、動画内で作っていたビスコッティもきちんと本に載っていた。

suzuさんの「ボケット喫茶室」の手作りお菓子をしみじみと味わったのも大きい。
あんなに工夫を凝らしたきれいなものは作れないけれど、お菓子作りは好きだ。

いよいよビスコッティ作りに踏み切ったのは、どんよりした窓の外のせいだけではなさそうだ。

実際に作ってみると、時間がかかるだけで工程は難しくなかった。

焼く前に平らに伸ばす。
黒いのはレーズンでなくチョコレート。
見た目で損しない。
一度焼いた後切り分けたもの。
若干割れたけど気にしない。
二度目に焼いた直後のもの。
すかさず破片を味見する。

ビスコッティは切り分ける際、斜めに切ると割れづらいらしい。

一応斜めに切ったものの、いくつかは割れてしまった。
今回は「おいしければ多少不格好でもいい」と割り切っているので、気にしない。

10時くらいから作り始めて、食べられる頃合いになったのは14時だった。

息子が取りに来た

私と夫は市販のドリップコーヒーを淹れて、いざ実食。

レシピのきび砂糖をてん菜糖に置き換えたためか、甘さは控えめ。
太白ごま油のおかげで固さも程よい。
息子がぼろぼろ破片をこぼすのはちょっと困ったけれど、食べたことのない家族にも好評だった。

最初は自分が作りたくて作ったビスコッティ。だけど、「お母さんこれからお菓子作るわ」と言うと息子が真っ先に夫に知らせに行った。

風邪気味で部屋にこもっていた夫がバタバタ台所へやってきて「お菓子作るんだって⁉︎」と弾んだ調子で聞いてくるものだから、何年も渋っていたのがおかしなくらい張り切ってしまった。

自分用もこっそり確保して冷凍したけれど、結局はみんなで食べたくて、私は思い出したようにお菓子作りをするのかもしれない。

この日ばかりは、雨で良かった。


※ヘッダー画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。ありがとうございます。

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