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死語の世界

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2022年4月の記事一覧

【死語の世界】 第二十話 『重役』

【死語の世界】 第二十話 『重役』

ちょっと昔の映画やドラマで描かれる会社のおえらいさんは、社長と重役だった。たいてい社長は人徳はあるがお調子者の思いつきの人で、始終まわりを振り回し、それでいて女にはゆるくて浮気の画策ばかりしている。それに対し、重役は四角四面のきっちりした男で、それらの粗相をすべて処理し、会社の業績にも貢献するまじめ男と描かれるのが常であった。

1950年代から70年代にかけてシリーズ30作以上を数える『社長シリ

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【死語の世界】 第十四話 『そらみたことか』

【死語の世界】 第十四話 『そらみたことか』

これを言われて育ったといって過言でない。
ちょっと丁寧な家系だと「それみたことか」になり、「言わんこっちゃない」なども同じ意味合いで使われる。

けっこうな昔、野田秀樹に『空、見た子とか』っていう彼にしては珍しい長編小説があって、読みかけにしてしまったけどタイトルにはしびれた記憶がある。

この言葉をよくかんがえてみると、それをやったらダメよと口酸っぱく言われているのにやっちゃう、やっちゃって痛い

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【死語の世界】 第十三話 『ペンは剣よりも強し』

【死語の世界】 第十三話 『ペンは剣よりも強し』

言わない。見ない。今となっては信じてもらえないかもしれないが、私が若いころは始終見かけたものだった。メディアが自らの鼓舞のために言っていたのだろうし、読むほうもそれを信じていた。

いま、ペン側のていたらくではなくて、まあそれもあるかもしれないけど、どちらかというと剣がステルスになったことが大きいように思う。いったいぜんたいだれ(のチーム)が最高権力を持ってるんだかまるで見えない。言論を揮ってもち

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【死語の世界】 第二十二話  『道楽』

【死語の世界】 第二十二話  『道楽』

「下手の横好き」は「好きこそものの上手なれ」と対をなす、可愛げのあるいい言葉だとおもっていたが、昨今あまり聞かなくなった。下手のままずっと続ける根気が足りなくなっていることもあるだろうが、どちらかというとみんなそれなりに上手くなってしまうから、という理由のほうが大きいようにおもう。走ったり歌ったり、楽器の演奏も釣りも山もゴルフも、上手い人が多い。ブロガーの文章なども、プロの評論家や学者の論文には比

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【 死語の世界 】 第二十三話  『カマトト』

【 死語の世界 】 第二十三話  『カマトト』

いつだったか、気のおけない仲間と飲んでるときに、私より10歳近くも若い女友達がだれだかのことを指して「カマトトぶってるだけじゃんね」と言い出した。一同は数秒固まった。彼女の顔を見ると、自分にツッコミ入れそうな素振りはなく平然としている。「それ、あんまり聞かないよね」と素朴に返されたところで、彼女も気づいた。死語だなと。やっちゃったなと。
つまり、死語をいうときは、それは死語だと、あるいは危篤だと瀕

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【死語の世界】 第十話 『チャーミング』

【死語の世界】 第十話 『チャーミング』

ビデオレンタルのGEOが春休みのキャンペーンだとかで、旧作50円の大盤振る舞いをしてるものだから、大学2年になる上の娘が1日5本も狂ったようにDVDを見ている。このあいだは『ダイハード』を4本連続で見て、だんだんおふざけになるけど嫌いじゃないなとかいいつつ、ブルースかわいいと娘がつぶやくのを私は聞き逃さなかった。
「だれがかわいいって?」
と聞くと、
「ブルース・ウィリス」。
「かわいい?」
「か

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