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【直営カフェの新たな戦略】人気No1メニューをなくしてみた結果

昨年末から今年の3月頃までの間、短期間ではありますが、長野市にある自社直営カフェ(以下、tonecafe)のマネジメントを任されました。個人的な事情もあって期間限定だったのですが、収益が大幅に改善されてきたので今日はその当時行なったことを赤裸々に書いていきたいと思います。

課題解決は圧倒的な理解からはじまる

自社直営のカフェとはいえ、現在僕は東京在住のため、長野市で運営されているカフェの状況をあまり把握していませんでした。
ただ毎日上がってくる数字は目を通すようにしていて、ある程度ここが課題なのかな?という仮説は立てていたのですが、数字はあくまでもリサーチを手助けしてくれる補助にすぎない。やっぱり気になったのが現場の方々の声。実際に現場で何が起こっていて、どんなオペレーションで回していて、
毎月の企画はどのようにして作られていて、顧客はどの時間帯に何を求めてきているのか。
当たり前になってしまっているところにボトルネックはあります。改善策を練り上げるうえで、現場を通じて知っておきたい情報は山積みでしたが、ある程度期間を決めてその間に最低限知っておかなければいけないことを、仮説を立てながらしらみ潰しにリサーチしていきました。

たとえば、情報収集するために実際に行った内容としては、
●仕事をしながら一日中店舗に滞在してその様子を一日中観察。
●運営担当者や店長にしつこいくらいのヒアリング。
●キッチンに入ってオペレーションを確認。
●周辺環境を知るためにGoogleマップ片手に近隣を散歩。
●提供されている商品を実際に商品を買ってみて食べてみる。
(社割とかを使ってしまうと価値と価格のバランス感覚が狂うため全て自腹で)
●違和感と数字を照らし合わせて何度も分析を繰り返す。

あれこれを正確に理解するためにやったことは数え切れません。

優先順位をたて、今やるべきことに焦点を当てる

何も包み隠さずお話ししてしまうと、当時あった問題点や課題は数えきれないほどでした。問題や課題があることは挑戦している証でもあるので全く悪いことではないのですが、正直どこから手をつけたら良いのか迷っていました。ただ、徹底的にリサーチを行ったおかげで解決すべき課題の優先順位が明確になり、結果としてこの数ヶ月間でやらねばならないことに集中することができました。今振り返っても、この期間内で最も重要なフェーズがここだったと思っています。
”いま”取り組むべき課題があやふやでは何をやってもうまくいきません。「理想と現実の差分を洗い出し、中期目標から逆算して今やるべきことを決める。」言葉では簡単に言えますが、これを実際行うとなるとかなりの労力がかかりますし、課題の選定が的外れになると資源を無駄にしてしまいます。

実際に行った改善行動を列挙

そうして今自分がやるべきことを実行していきました。もちろん、実際にお店に立つのは自分ではなく、あくまで自分は期間限定のマネージャーだったので、周りの協力がなければ改善なんてできるわけがありません。(実際にあれこれ一緒に考えて実行に移してくれた関係者の方々には本当に感謝です。)

たった4、5ヶ月間でやったことを一言で言うと、「利益を最大化させるための”基盤づくり”」です。あれこれキャンペーンを打つのは後に引き継いでいただいた方に託すことを決め、とにかく基盤づくりに注力しました。
チームメンバー全員で実際に取り組んだことを箇条書きにすると、
●定番メニューの見直し
●メニュー表変更
●目玉商品の見直し、再選定
●提供時間見直し
●仕入れの見直し
●価格改定
●インスタグラムの見せ方変更
●シフト調整
●営業日変更
などです。

思い切って業態転換を決断

「優先順位どころか、全部やん!」と思われてしまうかもしれないですが、実はそうではなく、それもこれも一つの大きな課題を突破するための改善行動です。その課題は何かというと、「業態転換」です。
当時tonecafeでは、カレーランチがダントツ人気で、それを求めて来店されるお客様も多くいました。ただ、店舗の立地、敷地面積、駐車場台数、席数、スタッフの人数やモチベーションなど、あらゆることを考慮すると、「ランチが美味しいお店」という認知のされ方や、そう認知させてしまう見せ方がtonecafeには合っていないことが分かり、メンバー同士でかなり議論した上で「業態転換」する決断にいたりました。
「カフェ」というカテゴリー自体は変わらないのですが、「ゆっくりランチできる」というイメージを払拭するためコーヒースタンドに近い仕組みに全てを寄せていきました。
もちろんtonecafeには店内席やテラス席、隣にネイルサロンやトリミングサロンもあるため、「くつろげる場所」という価値を捨てたわけではありません。なので完全にスタンド化したわけではなく、「敷居を下げた」といったニュアンスになると思います。

人気No1メニューもなくす決断

上記に記載した「業態転換」に伴い、売上ダントツ1位のカレーランチをなくす決断をしました。正直のこの決断に至るまでに何度も議論したし、店長には色々無理を言っていたと思います。けれど、「カレーランチを無くさない」という選択肢は既に無く、「無くした上でどうするか?」ということしか頭にありませんでした。
カレーランチを食べにきてくれていたお客様のことや、これまでカレーランチを育ててきてくれたスタッフのこと、じゃあランチを無くして何で利益を確保していくのか?など、とにかく思考は次へ向いていました。
店長や運営スタッフの試行錯誤もあって現在は、カレーは別の形として残しつつ、別の目玉商品(みんな大好きクラシックプランです)を際立たせています。

自家製クラシックプリン


八方美人をやめる

ちなみに、もう一つ強く意識していた点として、幕の内弁当ではなく、牛カルビ弁当作るようなイメージで、基盤づくりを行なっていきました。「なんでもある。」もしくは「無難に平均点」ではなく、強烈に満足していただける方もいれば、一方で全然物足りないと感じられる方もいるお店です。
さまざまなニーズに応えて、多くを揃えてしまうと、リソースがいくら合っても足りないですし、大手競合のサービスや価格の安さには敵いません。
何でもかんでもお客様の声にお応えして全部取り入れてしまうのは、一見優しいですが、実は優しくないのです。
なので一人の人の心を圧倒的に満たすサービス提供を行い、今後もその人に向けてサービスの改良を行う。塩梅は難しいですが、そんな活動を続けていけば、少しずつ波紋のように特定の口コミでその噂が広がっていき、別の誰かにも、“ニーズに応じて”選んでいただけるようになります。

いつも顧客の立場だとなんとなく見ているメニュー表は、ビジネスモデルそのものが反映されています。今回削った商品やそれに伴って改善したオペレーションを振り返ると、「やらないことを決めてそれを徹底し、理由を共有する」がこのプロジェクトにおいての僕の仕事だったと思います。

役割分担し、各々が目的を視野に入れながら全力で動いてくれた

この決断に至ってからは早かったです。「ここからはとにかく行動!」という合言葉のもと、それぞれの役割で今やるべきことを全うしていきました。
一人は、営業日変更に伴い必要なオペレーション改善や戦略に沿ったメニュー表の変更。一人は、イメージ改善、テイクアウト需要獲得のためのコンテンツ企画、情報発信。一人は、現場スタッフへの説明や仕入れ先の再選定、レシピの改良。など…
tone cafeに来店されたお客様がより満足いただけるように、より来やすいように。今後も長くtone cafeというお店を続けていけるように。スタッフ全員にまた違ったやりがいを届けられるように。と…先を見据えながら今できることに全力を注いでくれました。
正直、「こんな変更ばかりで大丈夫なの?」という不安な気持ちや僕の説明不足で少しばかり気が進まないこともあったと思います。それでもどうにか自分なりに面白みを見つけながら、やるべきことをやっていただいていたと思います。
同じタスクに一緒に取り組むというのも時には必要ですが、時間も限られていたため、一つの目的に対して各々で考え行動してくれたことが今回良い成果が出せた大きな一つの要因だと思っています。
結果的に買上点数、回転率、客数など改善され、3ヶ月前に比べ売上100%増となりました。
(本当にありがとうございます。)

最後に

僕自身、今はブランディング支援チームに戻ってきたので、現在はtonecafeの運営には深く関わっていません。まだまだやりたかったことはたくさんあるのですが、これから一つずつ実行されていくことと思います。
しんどいこともたくさんありましたし、決断するということは何かを捨てるということでそれに対するプレッシャーもありましたが、今回のプロジェクトに対してやって良かったなと改めて思うのは、ブランディングやマーケティングは「現場が9割」ということを体感し再認識できたこと。
普段はあまり話さないポテンシャルが高いスタッフさんと同じ目線で仕事ができたこと。お客様が喜んでいる姿を何度も目の当たりにして仕事の楽しさを実感できたこと。

それらがあって、「やって良かった」の一言に尽きます。また、今のtonecafeにおいては「業態転換」という課題が、優先度も重要度も高かったわけですが、これは企業や事業毎、またはタイミング等によって浮かび上がる課題もその優先度もさまざまです。
今何を問題として捉えて、何を課題とするかでプロジェクトの成果は大きく変わります。何かに行き詰まった時はもう一度そこから問い直してみてはいかがでしょうか。

このプロジェクトを通して得られた新しい気づきは他にも多くありますし、
今日書いたこと以外にも行ったことは色々あるので、またどこかのタイミングで書き残したいと思います。今後もtonecafeというブランドはどんどん進化していくと思いますし、まだまだ発展途上なので定期的に見にいっていただけると嬉しいです。

▼tonecafeを含む施設全体のホームページ

※東京と長野の行ったり来たりを共にしてくれた家族にも感謝です。


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