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本の備忘録

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16年前くらいから、読んだ本の備忘録として、それから未読の積読本も相当溜まっていたので重複して購入しないようにと、書評というには拙い内容をとつとつとブログで綴っていました。 6…
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2021年5月の記事一覧

別人生を体験できる小説の醍醐味がここに

2007年2月9日に投稿したブログより。 あっという間の2時間でした。 この間、現実とは全く別の世界へと意識は飛んでいっていました。 森シリーズとでも呼べばいいのでしょうか。マタギ三部作のうちの二作目であり、前代未聞の直木賞と山本周五郎賞のダブル受賞作品がこれ。 自然を畏れ、自然から命を分けてもらい、自然に感謝するマタギの世界を鮮明に描き出す大作です。 冒険談としても面白いですし、恋愛小説としても素晴らしく、また一人の男の濃縮された一生を克明に綴った物語でもあります

人情物の傑作です!!

2007年2月12日に投稿したブログより。 やはり間違っていなかった! 前作に引き続き、今回も大正解。 奇抜な設定にも関わらず、結構グッとくるエピソードが散りばめられているのも、悪い展開なんて何一つないのも、娯楽作品に徹しているのも、期待どおりでした。 今回の設定は、元力士による警備会社。前作の水商売のための商業学校よりは設定に無理もない上に、元力士以外の脇役も結構しっかりしています。 単なるシチュエーションコメディーにせず、脇役をもキラリと光らせることによって、よ

多感な時期の女の子小説

2007年2月17日に投稿したブログより。 前述したボク悪の直後に読んだこともあって、女の子からの視点の方が、結構大人の部分が多いかもしれないなぁー、なんて読み比べてみました。 人生に背を向けている元不良で格好良かった兄。緩慢な動きで周囲から奇異な目で見られている同級生。 これらの要素が絡まって、最近のこの人の作品にただようフンワリとした温かさとは、ちょっと違った感じの、やや冷ややかな主人公の目線から物語は描かれています。 最近の作品ももちろん好きですが、こういうタッ

オススメ青春小説

2007年2月13日に投稿したブログより。 もっと大きな賞を獲って注目されてもいいのに、と気になっている作家の読みたかった作品。 私生児兄弟の、良く出来た兄の視点から観た日常生活が描かれています。 あんまりここで述べすぎても興が殺がれるといけないのですが、とにかく母親といい、親友やその彼女の強烈なキャラといい、先の展開がついつい気になり、楽しく読むことができます。 まあ、最近の高校生は本当にませてるよなぁ~、と改めて感じることのできる作品でもあります。 時間を忘れて

はじめてのKindle本のセルフ出版

コロナ禍の状況で、これまでのように思うように訪問営業ができなくなってきたため、関係機関へ向けてメールマガジンを配信することとなりました。 そこに、社長として何かコラムを書いてくれないかと依頼をされて始まったのが、ここnote上においても「仕事の心構え」のマガジンで取りまとめているものになります。 一定の量が溜まり、通常入力しているwordのファイルを見ると140ページ分くらいになっていたものですから、もうこれは1冊の本くらいの分量になったなと思ったと同時に、「そうしたら本

かっこいい男たちの西部劇

2007年2月17日に投稿したブログより。 なんだろう。アンタッチャブルとかの悪党版とでも言えばいいのだろうか。 殺し屋になるべくしてなった男の生き様を描いた活劇。決していい者ではないはずなのですが、とにかく仲間も含めてかっちょいいです。善良な人を傷つけてないという部分では真の悪党ではないのかもしれませんが。 原題は「under the skin」というのですが、邦題の荒ぶる血というのも上手い訳し方だなぁと思います。 果たして生まれた時から銃の申し子であった男の運命は

関西の笑いと人情ここにあり

2007年2月19日に投稿したブログより。 なんでしょう。今まで落語をネタにした話で、はずれたことがありません。 「しゃべれどもしゃべれども」しかり、「粗忽拳銃」しかり、どれも佳作ぞろいです。 で、今回もご多分に漏れず、楽しめる作品になっています。 作者はSFやら、パロディ小説とかを書いている人なのですが、何分奇抜なものが多そうで、今まで読むのを控えておりました。 ようやく食指が動くようなテーマが重なり、手を出した次第です。 同じ落語がネタでも、これは舞台は大阪。

権力に圧しない庶民の意地

2007年2月22日に投稿したブログより。 この作家は、こういうの書かせるとめちゃくちゃ上手いですねー。 裏店長屋の庶民たちが、権力を笠に着て傍若無人の振る舞いをする豪商や悪党どもに、ギャフンと一泡ふかせる話。 誰もが傷を背負っているからこそ、互いに寄り添って逞しく生きる長屋の住民たちの人情にほだされます。 別に何かに秀でたヒーローやヒロインがいるわけでもなく、ただただ、地道に生きる人間の力に感服します。 地味ながらも、スッと読みやすい人情物の佳作です。

働く男の矜持

2007年2月25日に投稿したブログより。 広告業界を舞台にした、ビジネス・ハードボイルドの決定版。 若くなくても、いくつになっても仕事に本気で取り組む人間の姿はカッチョイイです。 過去に受けた傷や思い出で血を流すことがあっても、今現在の試練に対しては決して感情を表に出すことなく、ただただ結果を出すために、上司も部下もひたすら前に前に突き進む姿勢は感動です。 ヘタなビジネス本を読むよりも、よっぽどタメになるかも。 出てくる主人公サイドの人間たちが皆、男も女も、上司も

働きマン

2007年3月1日に投稿したブログより。 さて、本日読み終わった本。 表紙も中身も結構いい感じです。 主人公は日本にある外資系の会社で働く台湾人女性。 男女格差や文化の違いに揉まれながらも、地団駄踏みつつ真っ直ぐに前進していく姿がとても愛らしいです。 真っ当なコミカルタッチのビジネス小説。 この間読んだ小説同様、広告会社が舞台ということもあり、話の中身の濃厚さでは負けますが、異様なキャラクター造形の魅力では、こちらも負けていません。 いやー、いいです部長が。

明るいトーンで重いテーマの青春小説

2007年3月7日に投稿したブログより。 今日は遠出だったので、この本を選択。 前から気になりつつ、本棚に置きっぱなしだった作家の本。 青春小説です。で、謎解きものです。ただ、ミステリーとはいえ、安っぽい推理ものみたいに死者がでるとか、そういうのとはちょっと違います。北村薫っぽいって言えば分かる人もいるのかしら。自分としては、こういうヤツを読むのは結構珍しい方です。 日本で行き場を失った異国の少女との出会いが、平凡な高校生の日常を変えていくというお話。 少女の目を通

ウブな少年のかっこよい成長物語

2007年3月6日に投稿したブログより。 久々に読みました。萬月。 芥川賞受賞前後から、どんどん理屈っぽくなってきて、一時期敬遠していたのですが、本作は青春小説の佳作です。 主人公の思考をくどくど述べたり、ちょっと読みにくい漢字が文章にはさまっていたりといった部分はありますが、それでもとにかくシチュエーションがシチュエーションなので、その描写にも結構な筆を割いてくれている分、いつもよりも非常に読みやすい小説になっています。 で、舞台は雄琴。滋賀県は琵琶湖の畔の寂れた町

このまま続いて欲しいシリーズです。

2007年3月15日に投稿したブログより。 はい。で、早速続編読み終わりました。 今回は主人公たちも歳を重ね、音楽も鼓笛隊からロックバンドへと変化していきます。 留学中の天才少年とは比較にならないも、周囲からは注目を浴びるドラマーとして成長を続ける主人公。 今回は前作ほどのお涙頂戴はありませんが(泣いちゃいましたけど)、一気に読ませる面白さは失われていません。 それにしても、どんな本を読んでても、フィクションとはいえ腹が立つのが大人の、特に教師たちの理不尽さ。こうい

もっとヒットしていい佳作!!

2007年3月14日に投稿したブログより。 めちゃめちゃ素晴らしい青春小説です。 たんなる青春小説に留まらず、素晴らしい音楽賛歌の小説です。 続編のあとがきでも誰かが書いていましたが、音楽をただ単に青春小説のネタとして使っているのではなく、先ず音楽ありきで、きちんと音楽が物語の中心に位置付いている点に注目。 小説ではあまりないコテコテの関西弁による一人称ですが、読んでて苦にはなりません。真っ直ぐな主人公の感じ方が、素直に読み手の胸に入ってきます。 音楽が主人公と友人