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【会計天国】安さ勝負の全商品値下げから適正価格へのUターンって、結構な高難易度では?【感想】

本書の主人公は、経営コンサルタントの北条。娘のウェディングドレスの試着につきあうために呼び出され、その途中で事故死。現世に復活するため、天使から指定された人生崖っぷちの5人を経営のノウハウを使って幸せにすることに……。

【第2章 価格競争に陥ったら、会社がやるべきことがひとつある】

登場人物
【田上隼人】
社長室で「機動戦士ガンダム」の地球連邦軍の制服を着て「マチルダさーん!」と叫ぶファースト派の45歳。社長室の100インチ液晶TVもこのために購入したようなもの。なお自費ではなく経費。クローゼットの中に並ぶフィギュアも経費。恥を知れ、俗物!

【現状】
フィギュアを中心としたアニメグッズを販売する年商30億円の上場企業で、上場前はアニメやマンガのキャラクターの版権を安く買い取って商品化するビジネスモデルだったが、今回、創業初の赤字となる。ちなみに株価は昨年の5分の1という怒濤の下落。さらに競合会社との競争が激化する過程で全商品を値下げしたため利益率も低下。にもかかわらず、経費でフィギュアを買い、同じく経費で買った100インチTVで就業中にガンダムを視聴。おのれこの俗物がっ!!

【大コケの原因】
・上場で資金が集まったので人気キャラクターの版権を高値で買い取り、政令地方都市を中心に全国でアニメグッズの専門店(直営)を30件オープン。

・アニメグッズの在庫管理の部分だけで業務がパンクしたため、在庫の一元管理ができるシステムを開発するも大幅に予算オーバー。

・商品開発のために大量のデザイナーを採用。コミケでカリスマと呼ばれる漫画家も正社員として採用。営業マンも大量採用。とにかく人件費につぎ込んだ。

・フィギュアを自社製造できるように工場を借りる。
トドメの自社ビル購入。なお、自社ビルの購入に関しては
「当時は黒字だったし上場企業だから社長室もそこそこ立派じゃなきゃ、かっこ悪いでしょ……」
などと供述しており、市中引き回しの刑が妥当と思われる。

【損益計算書】
売上高30億に対して売上原価24億。
販売費及び一般管理費8億。
営業利益 ▲2億
営業外費用 1億
経常利益 ▲3億。
特別損失 2億。
当期純利益 ▲5億

とりあえず、天を仰いで「神よ!?」と一回叫ぼうか。

田上の言い分としては、昨年突然赤字に転落し、原因不明のまま今年も赤字になったらしい。特別損失の2億円は、赤字がひどくて閉めた店舗の違約金・取り壊し費用だった。

箇条書きにできる程度には大コケの理由があり、何より「競合会社との競争が激化する過程で全商品を値下し利益率が下がった」という純然たる事実があるのに、原因不明で突然赤字と言われてどこの誰が納得するのか、と。しかも軌道修正のために値上げが必要だと説けば、「新規顧客を失う」の連呼。ついでに値上げをしたら風評被害がひどかったから無理と泣き出す始末。

新規獲得に走る前にまず既存の顧客———特に優良顧客との良好な関係維持に尽力しろや。携帯キャリアを見ろ。一昔前、新規顧客争奪戦で既存ユーザーをないがしろにして信用を失い、最悪解約されてたろうが。長期的な意味でクリティカルなのはこっちなんだぞ!
実際、同じ理由でSoftBankからauに切り替えた一般ユーザーがこちらデス。
値上げの件に関してはもう身から出た錆としかいいようがない。

ひとまず今後展開するアニメグッズ専門店はフランチャイズ形式をとるということで方針を固めるが、今度はフランチャイズで100店舗を目指すとほざく45歳。もうブレーキかけるよりブレーキを投げろ。おやじにもぶたれたことないらしいから、この機会に全力でぶん殴れ。
そして自社ビル売却と社長室のクローゼットに並ぶ経費で購入したフィギュアの売却が確定したところでタイムリミット。

未来が見える「未来TV」でその後を確認すれば、5年後には無事V字回復したことが判明。一安心というところだが、100インチTVとフィギュアの復活が不安と言えば不安である。買うなら自腹で買え。そして社長室に並べるなら数を絞れ。

【感想一覧】
No.1
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