見出し画像

「さかあがり」 けっち

画像1

Photo by Ian Flores on Unsplash

「逆上り」と漢字で書いてみたところ、これが「さかあがり」ではなく「ぎゃくじょう・り」と読めてしまいました。SNSを開けばあちこちで誰かが誰かにたいして怒っている場面に出くわすことが多くなり、私自身の心も少しギスギスしているのかもしれません。さかあがりを「ぎゃくじょう・り」と読んでしまう自分自身にびっくりしています。

さて、その「さかあがり」ですが、小学生のころ、さかあがりができる人間とできない人間のあいだに大きな隔たりを感じたものです。僕は小学校4年までさかあがりができませんでした。なぜできないのか自分でもわからず、体育の時間でも「できない人グループ」にふりわけられたまま、ずっと鉄棒に触りつづけるわけですが、鉄棒のもつ鉄くさい臭いがなかなかとれなかったことを昨日のことのように覚えています。

小学校5年のときに大阪から神戸の田舎町へ引っ越したのですが、それ以降、山遊びがメインになって一気に健康になった話については以前書いた記憶がありますが、ある日さかあがりに挑戦したところ、なんのためらいもなくクルンと逆にまわりました。その瞬間、ものすごく喜んで、「おれ、さかあがりできるよ!」と周りにアピールしたところ、その場にいた数人も当たり前のようにさかあがりをしてみせて、僕だけが喜びつづけていました。

「おれ、さかあがりできるよ!」といったときのことを思い出しながら、そういえば、「おれ」と自分のことをはじめていったのも引越ししてからでした。大阪のときは幼稚園のころから「ぼく」と言い続けていて、周りのだれもが「おれ」と言いはじめるなかで、さっきまで「ぼく」だった子がある瞬間、はじめて「おれ」を使ったのを目撃したとき、それがなんだかすごく恥ずかしい行為のような気がして、僕は「ぼく」を小学4年生まで通していたのですが、引越したとき、「今ならだれも僕のことをしらない」と、勇み足で初めて出会う転校先の同級生に「おれ」といってみたのでした。

おれ、といったらさかあがりができるのでしょうか? もちろん、そんなことはありません。多分、神戸に引っ越して以降、いつも外で遊ぶようになったり、周りの子が腹筋したり腕立てしたりしていた影響で自分も筋トレをするようになって、力がつきました。さかあがりはグッと鉄棒を胸に引き寄せたまま、腹筋背筋をつかって棒をお腹につけたまま宙にむかって蹴りあげる行為なので、筋肉さえついたらあとはタイミングだけなのでしょう。

小学校の4年間「さかあがりできない組」にいたころ、タイミングだけは身につけていたのかもしれません。そのころは学校を風邪で1ヶ月休むくらい軟弱だったわけです。今では想像もつかないほど弱くて、さかあがりもずっとできなかった自分のことを、過ぎてみれば懐かしく思い出されてきます。今日もありがとうございます。

この記事が参加している募集

noteのつづけ方

私のイチオシ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?