土を喰う日々
すごく好きだと思う、この先何度も読み返したい本に出会ったので記録に…
「土を喰う日々」水上勉
“土を喰う”とは
その季節に土の元で顔を出し、
息づくものを食べること。
すなわち旬を頂く事。
ここに流れている心は、 季節を過ぎた時 少し前まで土の元にいたもの達を懐かしむこと、そして次の季節に現れるもの達を待ちわびること。
これはきっと
もう会えない人を懐かしむことでもあり、
また明日を待ち望むことでもあるんだと思った。
そして
一瞬一瞬に向き合う事。
今では季節問わず何でも手に入るので、その瞬間にしか出会えないものとの繋がりや、物語をつくるのが簡単ではないから
食材はただ食材としてそこにあるんだけど
そうではなかったのなら、
思い出や一つの人生のひとときに自分のそばに 寄り添ってくれた命だと気づく事が出来るのかな。
どの時代にもそれぞれの価値観で肌に伝わる温度は違うから 何が良いか悪いかは一つとして分からないけれど もし、こんなふうに目を凝らすことができたら 自分とそれを取り巻くもの、人生がより詳細に見えてくる様な気がした。
そういえばこの本の中で 水上さんは一度も、食べたものたちを「食べ物」「食材」だとは呼ばなかった。
母は子供の頃、夏の間だけ滞在した山の民家で食べた、トマトの味と色をまだ覚えている。
そこで出会った懐かしい人達のことも。
なんだかすごく胸が一杯になる。
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