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【あしかが大藤まつり号 乗車記】都心を通り抜け花の楽園へ[2022.4 足利]

神奈川県鎌倉市に位置している東海道本線大船駅。本日は、ここを始発駅とする臨時特急列車「あしかが大藤まつり3号」に乗車する予定である。
この列車は、4月から5月にかけての大型連休に合わせて、各地から足利・桐生方面へとダイレクトでアクセスできるように企画されたものだ。乗客の目的地は「あしかがフラワーパーク」で、ちょうどこの時期は大藤の大群が私たちの目を輝かせてくれる。最近、その施設の前に駅が開業したから、さらに鉄道を使って訪ねる人は増えているはずだ。

定期で運転されている 特急を始めとした優等列車は、本来なら発車時間まで余裕を持った形でホームへ入ってくるが、臨時列車となると訳が違う。他の定期列車に触れないようにしなければならないため、そういったことが難しくなるケースが多い。今回もそのケースに当てはまる。
「あしかが大藤まつり3号」は9時30分の出発予定になっているが、その4分前に定期列車が出発をした。その結果、1分前の9時29分にようやく到着し、のちにドアが開く。しかし、開いた途端に発車メロディーが流れ始めて、乗客は驚きながら急いで車内へ入っていく。キャリーケースを持っている人はなおさらである。

結局、時間通りに発車できずに1分遅れとなったが、次の横浜までには確実に定刻に戻せるはずで、実際にそのようになる。
大船から乗ってきたのはごくわずかで、どちらかというと、行楽客よりかは列車に乗りに来たマニア層が多く見られる。中には誤乗してしまった客もおり、巡回しに来た車掌に出くわし、諦めの表情で特急料金を払っていた。

横浜に着くと、静かだった車内が一気に賑わいに変わり、座席は8割方は埋まっているようである。
ようやく行楽期の臨時列車にふさわしい車内環境になったところで、列車は多摩川を渡って東京都へ。都内は品川・東京・上野・赤羽と停まり、上野までの3駅から乗ってきた乗客をもって、満席となった模様だ。賑やかな車内とは裏腹に、窓の外を眺めると、雨が落ちてきているようだ。乗客の話題も次第にその話をあちらこちらでするようになっていく。

赤羽を出て、新河岸川と荒川を跨いで埼玉県に突入する。そのあたりで、横浜赤羽間から乗車してきた人に対しての検札が行われていた。車掌が所持する端末で着座している人の購入区間が分かるようになってからは、そのようなことは基本的に無くなったわけだが、今回はどのような事情でそれをするに至ったのだろうか。

県内に入ると、大宮までは駅間距離が長くなり、普通列車も高速で運転ができる。この列車はさいたま新都心を通過するのみだから、同じ足取りで走っている。100km/hは確実に出ており、ようやく特急らしいところを魅せてくれているうちに、あっという間に大宮に滑り込む。

大宮の次にドアが開くのは、乗車している客が目的地としているであろうあしかがフラワーパークだ。通過駅が続くため、定期旅客列車を刺激しないように、速度を抑えている。このほうが車窓をしっかりと咀嚼できるから、私は良いのではないかと思う。外を見ているうちに、降りしきっていた雨は上がり、周りからは安堵の声が上がっている。

1時間もしないうちに小山に着く。ここで東北本線(宇都宮線)とはお別れで、両毛線へと入る。じっくりと走っていくさなかに、あしかがフラワーパークに着くという放送が入り、広げていた弁当やカンを片したり、荷物をまとめたりし始めた。
そして、駅に到着。テーマパークの駐車場は、一面クルマだらけだ。一方の鉄道はというと、人はいるとは言えども、やはりクルマ組には叶わない。群馬を中心とした北関東の車社会は物凄いものであると改めて感じた。

大船横浜間と同じような車内の雰囲気になったら、終着の桐生まではすぐである。山前と小俣で行き違いをそれぞれ済ませて、12時38分に桐生着。

3時間の長旅に別れを告げて、ホームへ降りると、一眼レフを持った鉄道愛好家の姿が目に入る。それもそのはず、現在は既に引退した485系のジョイフルトレイン「華」を筆頭に、駅に停まっている列車全てが臨時列車で構成されているから、あまり鉄道に対する愛情が深くない私にとっても、記念に一枚撮っておこうと思える構図だ。

写真を撮り終えて、桐生の街に出てみようと考えたが、また雨が降り出してきてしまい、その考えは水に流すことに。後続の高崎行きの普通列車に乗って、そのまま次の目的地に向かったのだった。

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