美容室「適正賃料」「敷金の妥当性」「原状回復適正価格」を知る事は経営責任
一般社団法人RCAA協会理事の萩原です。
先日、美容室を3店舗経営されている女性経営者から相談を受けました。内容は3店舗の賃貸更新条件の見直しです。
敷金保証金「デポジット」の法理と適正な預託金について
更新及び定期建物賃貸借再契約条件の借主より提示のため、家賃管理費の適正価格の算出
原状回復の適正価格(査定)と敷金返還は、いついくら返還されるのか?
上記1、2、3の協議が決裂した際に閉店の選択肢として、速やかに原状回復義務履行のうえ敷金返還請求を実施する。
どれも明日の経営の骨幹を左右する切実な重要事項です。
結果として、銀座・新宿の美容室は継続することになり、更新条件を協議しました。協議のすえ、家賃の増額を阻止、保証金を「敷金」とし、更新料をゼロにすることができました!
残りの1店舗は閉鎖することに。原状回復義務履行から敷金返還です。
この類似ケースの実例を動画で解説しています。
更新条件の協議の法理について、これからシンプルに解説します。
法理ですので硬くなりますが…すみません。1000文字程度です。
今少しお付き合い下さい。
読みやすくするため、動画でも解説しています。
観ていただければ、借地借家法の知見力UPは保証します!
敷金保証金(デポジット)法理と預託金について
敷金は名古屋より以北、保証金は名古屋より以南です。
「敷金」という呼び方は関東圏、東北圏、北海道圏でよく使われており、「保証金」という呼び方は関西圏、中国四国圏、九州圏が多く見受けられます。しかし名古屋圏は、「敷金」も「保証金」も混在しています。
全国に支店のある大手不動産会社は、「敷金」で統一されています。
「敷金」には、更新料も敷金の償却もありません。
「保証金」には更新料、償却費が記されているケースがありますが、減少傾向です。
賃貸借契約に更新料、保証金の償却が記されていたら、更新及び再契約時に削除依頼のうえ預託金(敷金)として下さい。
敷金は米、英連邦、EU圏では「デポジット(deposit)」といいます。
日本の場合、敷金の目的は借主の債務不履行を担保にすることが目的です。法理でも敷金の位置付けは同じです。
海外では家賃の10カ月、12カ月の預託金を預ける習慣はありません。家賃の債務不履行の保全としては、L/C(Letter of Credit:信用状)を活用します。IFRS(国際会計基準)では、敷金は現金預金として会計処理します。
日本の場合、敷金は原状回復義務履行をもって敷金返還請求が可能となり、賃貸中は使えない現金預金となります。
賃料、管理費と共益費の適正価格とは?
賃料には、適正価格はありません。
査定のキモは3つあります。
借主からみたら賃料も管理費も共益費も実質賃料です。
更新、再契約の際、すべて含めた「賃料」と記すようにして下さい。
貸主、管理会社、[1]AM、[2]PM、[3]BMが渋りましたら、「合計賃料として詳細内訳を記して下さい」といえば承諾します。
[1] AM…アセットマネジメント(資産管理業務)
[2] PM…プロパティマネジメント(運営・管理業務)
[3] BM…ビルマネジメント(物件自体の管理業務)
賃料適正査定の根拠として、何を基準として適正価格にするのかをご説明します。
根拠①
「近隣芒種と比べて高いのか、安いのか?」
貸主からしたら、貸したくない業種はあります。たとえば、「使用目的」が風俗、高利貸しなど、また不特定多数の人が出入りする損耗毀損が激しい業種も嫌われる傾向にあります。このような業種は、貸主承諾条件も敷金も家賃も高くなります。
次は、建物のグレードと立地です。プレミアムクラス、ABCクラスなどと呼ばれており、また大規模ビル、大型ビル、中型ビル、小型ビルにより違います。大規模型、大型ビルは建物自体に集客力があり立地、雰囲気などでプレミアムがついています。同じ建物、同じ立地は2つとなく、市場価値が基準となります。
根拠②
課税評価額
課税評価額とは、国及び都道府県が土地、建物の価値を算出し、毎年発表します。それを根拠として固定資産税、都市計画税、賦課税を決定する基準値です。この他に国土交通省の発表する路線価も参考にして下さい。
根拠③
「共用部の充実」
清掃が行き届き安全を含めた管理体制の充実です。この金額が管理費、共益費となり、グレードの高いビルほど高くなります。貸主が借主に「安全安心快適」提供していると言えます。
上記の根拠①②③の総合的に算出した価格が「賃料適正査定」となります。
普通賃貸借契約では更新賃料を争うことはよくあります。貸主借主とも借地借家法32条3賃料増減額交渉権がありますので、「賃料適正査定」が法的根拠となります。万が一紛争になった場合、実質賃料で調停にて協議となります。([1]「調停前置主義」)
[1] 調停前置主義…裁判や訴訟を提起する前に調停を経なければならいとする制度・主義をいう
原状回復適正査定と敷金返還について
日本の賃貸借契約では、明け渡し条件として「原状回復義務は指定する業者で原状回復工事を行う」と記されているのが一般的です。事業用不動産の原状回復には、「住宅:原状回復ガイドライン」は適用外です。
適正査定のためには、
賃貸借契約書
原状回復特約:入居工事(原状変更図書)仕上表、工事区分、原状確定図書
ビル運営のルール、内装工事指針書
この契約書がないと、どんな専門家も原状回復見積は作成不可能です。
上記1、2で原状が確定され、どんな建築資材でどこまで復旧するかを明確化します。図書により工事面積も正しく積算できます。
3は、原状回復工事の施工体制と施工条件が確定されます。仮囲い、養生、搬出搬入通路、荷物用エレベーターの制限、作業時間の制約、管理体制の制約などで労務費の価格も大幅に違います。
この開示資料により原状回復工事内容を可視化します。
次に、貸主の指定する業者から原状回復見積の作成依頼をします。その内容をすべてチェックのうえ、借主の適正査定書を提出し擦り合わせを実施します。発注して、初めて敷金返還額がいつ・いくら返還されるかが確定されます。
RCAA 協会及び会員は、今までの査定実績、合意金額、訴訟の解決秘話などを基に原状回復適正査定を無料で実施しております。
現地調査、図書修正、チェックは業務受託後となります。
事前にクライアントの「原状回復はいくらなの?」「敷金はいつ幾ら返還されるの?」の質問にお答えできるのが、当協会の強みです。なぜなら、過去のデータから予測できるからです。
是非、原状回復・B工事無料適正査定、資産除去債務までお気軽にご相談ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
店舗で働く皆さま、店舗経営されている皆さまの参考にしていただければ、幸いです。
皆さまのご多幸を祈願いたします。
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