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NO.2の育て方㉑部下の成長を願うマネジメント~重職心得箇条から学ぶ~

優秀な人に陥りがちなのが、自分で考えたことは常に正しく、それを部下にやらせれば必ず成果が出ると信じ込むこと。

組織である以上、成果にこだわる必要もありますし、成果が出やすいという面では良いことかもしれませんし、部下の方もその過程で学びを得て成長する可能性もあります。

けれども、いつも他人にお膳立てされ、作業として取り組んでみても部下は思うようには成長しないのが現実です。部下は主体的に取り組んでいないので、深く考えることも試行錯誤することもないから学びの効果としては薄いからです。

今回はそんなマネジメントあるあるを前提に重職心得箇条からヒントを得たいと思います。

■部下には考えさせて、自ら行動させることの大切さ

第2条
大臣の心得は、先づ諸有司の了簡を尽さしめて、是を公平に裁決する所其職なるべし。もし有司の了簡より一層能き了簡有りとも、さして害無き事は、有司の議を用いるにしかず。有司を引立て、気乗り能き様に駆使する事、要務にて候。
又些少の過失に目つきて、人を容れ用る事ならねば、取るべき人は一人も無之様になるべし。功を以て過を補はしむる事可也。又賢才と云う程のものは無くても、其藩だけの相応のものは有るべし。
人々に択り嫌いなく、愛憎の私心を去て、用ゆべし。自分流儀のものを取計るは、水へ水をさす類にて、塩梅を調和するに非ず。平生嫌いな人を能く用ると云う事こそ手際なり、此工夫あるべし。

重職心得箇条

簡単に訳をつけると次のようになります。

大臣の心得は、先ず部下に考え尽くさせて、これを公平に取り扱うところにある。自分に部下よりも良い考えがあっても、さほど問題がなければ部下の考えを用いた方がいい。部下を引き立て、その気にさせることの方が重要だ。

重箱の隅をつつくようにダメ出しばかりし、意見を取り上げないようでは誰も意見を述べようともしなくなる。成果を出させて少々のミスは取り返せばいい。特別優れていなくても、組織内で活躍するだけの能力は誰にもある。

部下を選り好みすることなく、私心に惑わされずに人材を活用しなければならない。自分のやり方、考え方に合う部下ばかり重用するようでは組織が停滞する。自分の苦手な部下や嫌いな部下も活用できるのが大臣の能力であるから、よくよく考えよ。

整理してみると、こんな感じです。

・部下に考えさせる
・出てきた意見を公平に扱う
・部下の意見や考えを優先する
・ダメ出しばかりして、やる気を削がない
・部下が活躍できる機会を考え、与える
・自分とは異なる視点の意見こそ尊重する

逆に、これらができない幹部は仕事を自分で抱え込んでしまったり、自分の周りをイエスマンで固めたいタイプに多いのだと思います。

けれども、こうした状況が続いてしまうと、多くの部下は自発性や主体性もない作業員に留まってしまいますし、せっかく熱意も能力があっても取り上げてもらえないのであれば腐ってしまいます。

変えるのは自分ではなく、所属先という気持ちになっても仕方ないですね

第2条に書かれていることは組織運営の示唆に溢れています。

部下の意見や考えに関心を持たない、取り上げないのは、幹部自身が部下の成長よりも自分の実績を重要視していること、それゆえに失敗があってはならないし、自分の成功体験が全ての判断基準であるから。

出てきた意見にダメ出しばかりするのは自分の成功体験からは受け入れがたいし、失敗することが目に見えていることにGOサインを出せば責任を取らされるし、無駄とわかっているから。

そして、自分が嫌いな部下を活用しないのは、部下を従わせようという気持ちが強く、イエスマンを集めておく方が気持ちがいいからです。

優秀な人材は成果にこだわります。それはもちろん結構なことなのですが、組織は人の集合体です。ある特定の人材だけが飛びぬけて優れていても、組織として動いた時に思うような成果が出ない事の方が多いです。やる気を失い、嫌々やっていることにスピード感があったり、質が上がることなどないですから常に山のような課題を抱えることになります。

業績は良いはずなのに、人は育たない。表面的には成功しているように見えても内部は崩壊寸前。

そんな会社がごまんとあるのは経営者、幹部、管理職が目先の業績ばかりにこだわり過ぎて、全社的、長期的に人を育てる気持ちが薄いからに他なりません。

NO.2の立場にいる人は、部下を成長させる機会を奪ってないか今一度振り返ってみて欲しいものです。

自分だけが待遇が良くて、自分の意見は通りやすくて、毎日気持ちいい。もしそういう状態であれば、結局は自分だけがいつまでも忙しく、部下も成長せず、本来の役割を全うしていないことに数年後気がつくことになります。


最後までお読みいただきありがとうございます。