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NO.2の育て方⑱智名もなく、勇功もなし。優秀な人材から辞めていく理由。

NO.2人材が腐りやすい理由のひとつに承認欲求が満たされないというものがあります。

仕事で成果を出したなら、程度はともかく賞賛を浴びたいというのが人情でしょう。

けれどもNO.2は縁の下の力持ちの裏方の立場ですから自らにスポットライトが当たることはありません。

無能な経営者に仕えていればその傾向はさらに強まります。手柄は全て経営者のものとなり、無能だからこそ自分を大きく見せたい気持ちも強く、手柄を我が物顔で必要以上に自ら吹聴します。

事情を知らない外部の人間には表面的なことしかわかり得ませんので、無能な経営者も有能に見えてしまう訳です。

優秀なNO.2であればあれほど、人知れず成果を出し続けるものです。だから人によってはどこかで自分に対する賞賛を求める気持ちに抗えなくなって、腐ってしまうことがあるのです。

孫子の兵法にこんな言葉があります。

「古えの所、謂ゆる善よく戦う者は、
 勝ち易きに勝つ者なり。
 故に善よく戦う者の勝つや、
 智名も無く、勇功も無し。」

戦上手は目立つような勝ち方はしないから、知恵のある者であるとか勇敢な者であるといった賞賛もないものだ。(孫子の兵法 形篇)

勝負に強い人間というのは勝ちやすい態勢で確実に勝ちます。その様子を凡人が見たところで何か特別な能力があってのこととは気が付かないので目立つことはなく、賞賛もないということです。

会社の中にも、取り立てて存在感がある訳でもなく、目立つこともあまりないのに、間違いなく大きな仕事を静かに成し遂げてしまうといった人がいます。

けれどもそのような優れた人が賞賛されることも多くはないのが現実です。

邪な気持ちを持った上司に手柄を横取りされたり、周囲がその優秀さに全く気付かないことが多いので、感謝も賞賛もされません。

特にNO.2がそのような人物であるなら経営者はそのNO.2を本来は絶対に手放してはいけないものですが、無能だからこそあらゆる成果は自分が作ってきたものと思い違いをして、簡単に手放してしまうこともあります。

無能というのは能力の多寡だけではなく、精神の卑しさや貧困さも含んでいるので、そんな人間の元で報われることがないのであれば、能力の高い人間はその組織から離れてしまっても仕方がありません。

優秀な人材から辞めていく会社というのはまさにこういう状況で、耳にタコができるほど改めることを指摘されても変われない経営者、組織が残念ながら世の中にたくさん存在します。

大企業ではもうすでに夏の賞与支給を終えており、中小企業はようやく経営者が鉛筆をなめ始めたところでしょうか。

評価をする立場の人間は、なぜ成果が出たのか、誰のどんな能力や努力によるものなのかをしっかり見極めないと会社を陰で支えてくれている人間から三下り半を突き付けられてしまいます。

目立つことはないが、成果を出す人材を見落とさないことは経営者の重要な仕事のひとつです。


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