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NO.2の育て方 vol.62 部下から意見が上がってこない3つの原因

部下から意見が上がってこないというのは、社長にとって悩ましい問題です。しかし、その原因は部下だけでなく、社長自身にあることも少なくありません。部下から意見が上がってこないと嘆く社長にはどんな原因が見られるのでしょうか。

■部下から意見が上がってこない3つの原因

まず、社長が部下の意見を聞かないということです。社長は自分の考えや方針が正しいと思い込んでいる場合が多く、部下の意見に耳を傾けません。

部下は社長に反対すると怒られたり、無視されたりすることを恐れて、自分の考えを言い出せなくなります。社長は部下の意見を聞かないことで、部下のモチベーションや信頼を失ってしまうのです。

二つ目は、社長が部下の意見を否定するということです。社長は部下の意見を聞いたとしても、それをすぐに否定したり、批判したりします。それはやはり自分の考えが正しいという思い込みから来ます。

部下は社長に認められたいと思っていますが、その逆に否定されると、自信を失ってしまいます。社長は部下の意見を否定することで、部下の能力や成果を低く評価してしまうのです。

三つ目が、社長が部下の意見を活かさないということです。社長は部下の意見を聞いたり、受け入れたりしても、それを実行に移さなかったり、変更したりします。

部下は社長に貢献したいと思っていますが、その逆に無駄にされると、やる気を失ってしまいます。社長は部下の意見を活かさないことで、部下の創造性や責任感を奪ってしまうのです。

以上のように、部下から意見が上がってこないのは社長が部下の意見を聞かない、否定する、活かさないという3つの点に集約されます。

これらの態度は、部下から尊敬されるリーダーではなく、恐れられる支配者になってしまうことを意味します。

意見を聞く考えがないのであれば、必要な情報も上がって来なくなりますし、社長の判断が常に正しいとは限りませんので、組織のリスクが高まる可能性があります。

ここで、歴史を紐解いて、伊達政宗に仕えた片倉小十郎と徳川家康に仕えた酒井忠次のエピソードをご紹介したいと思います。

■豊臣秀吉による小田原征伐への参戦

伊達政宗には片倉小十郎(景綱)という補佐役がいました。政宗の幼少時代から仕え、長きにわたる忠臣です。

天正17年、秀吉が北条氏政、氏直の小田原征伐を決定しますが、政宗自身は北条氏とともに秀吉に抵抗しようと考えていました。この時点で秀吉の天下統一はまだ決まっていない状況でもあり、政宗は秀吉に干渉されない奥州独立国も視野に入れていたのが抵抗の理由と言われています。

政宗は、豊臣軍は長距離の遠征で疲弊しているだろうから撃退することは可能と考えていたので、伊達家の家老も秀吉との対決姿勢を強めていく空気ができていましたが、片倉小十郎だけが反対していました。

すでに豊臣軍の実状を情報収集し、万に一つも勝ち目がないと片倉小十郎は判断していたのです。

政宗は豊臣軍がどれだけ大軍で来ようとも、長距離で長期にわたる遠征で兵は疲弊し、農繫期になれば兵を引いて退却せざるを得ないと考えていました。

当時の兵団の多くは農民が武装した程度のものであり、大軍であっても恐れるに足らないと政宗は想定していましたが、片倉小十郎は豊臣軍は兵農分離し鍛え上げられた軍団であることを事前に把握していたので、秀吉と戦っても勝ち目はないと判断し、政宗に秀吉に降伏することを説得します。

もし、片倉小十郎の意見を聞かずに政宗が小田原征伐で豊臣軍と対決していたら伊達家は滅亡していたかもしれません。

■今川に残るか、織田信長に寝返るか、家康の逡巡

同様のエピソードをもう一つ紹介したいと思います。徳川家康に仕えた酒井忠次の進言です。

徳川家康がまだ松平元康と称し今川家の家臣であった時、今川軍総大将の今川義元が桶狭間の戦いで織田信長に敗北してしまいます。

家康はそれでも信長に勝てると考えており、今川義元の子、氏真に弔い合戦を催促し、家康の重臣たちも同様に考えていました。

この情勢の中で、酒井忠次は今川家と手を切り、信長についた方がいいと主張しました。もちろん家康の家臣団は猛反対です。

酒井忠次は、今川義元の後継である氏真とその重臣たちの能力についての情報を集め、分析した結果、このまま今川家についていれば共倒れになると判断したのです。

松平一派で評定の結果、最終的に家康は信長と手を結ぶことを決断しましたが、もし今川家と一緒に信長に対して徹底抗戦をしていたのであれば、松平家は滅亡、徳川家康として江戸幕府の誕生もなかったでしょう。

■部下の情報収集結果や意見を軽んじない

伊達政宗、徳川家康の話を聞いて、どう感じられたでしょうか。戦国時代ではトップの判断ミスが滅亡に繋がるという極端な結果になってしまいますが、程度の差はあれ現代の企業経営でも同様のことは十分に起きる可能性はあります。

情報というのはそれを得る者にとって都合のよい解釈が行われやすいこと、同じ情報を見ても異なる意見があること、こうしたことを踏まえると部下の意見にも耳を傾けてみようかと思われるのではないでしょうか。

もちろん、最終判断はトップが行うことではありますが、客観的な情報を集め、多くの意見を聞いたうえで冷静に判断することは非常に大事なことです。

私も会社員時代にナンバー2として従事していた頃、社長にとって耳障りな情報を上げ、自分の意見も述べていました。

話し始めるとみるみるうちに嫌悪感をあらわにする社長、真摯に聞く姿勢になる社長、人により反応はさまざまでした。

その姿で正直、社長としての器が知れてしまうものです。求心力に影響が及んでしまいます。

社長は自分自身を振り返り、部下の意見に対してオープンでポジティブな姿勢を取ることで、誤った判断をしないで済むメリットに価値を見出した方が良いのかと思います。


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