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パンテーンのLGBTQ+就活CMは、当事者として不快だった件【思慮不足】

(この記事では、便宜上LGBTという単語を筆者が渋々使用しています)

私はあのCMを見て、「滑稽だな」と思った。

P&Gが、というのは勿論。
そして、結果的にそう思わせている社会の流れに対しても。

なぜあのCMが滑稽で不快なのか。
理由は簡潔にいうと

  • LGBTQ+当事者について、しっかり把握できていない

  • 結果的にLGBTQ+就活の根本的な部分とは関係なく、広告としてイメージアップに利用され、枠にはめられた感じが否めない

  • LGBTQ+について扱っているということだけで社会問題に目を向けている企業・ブランドであると見なす人々が多すぎる

この3点の比率が大きい。


そもそも、LGBT関連の話を公で行うことは危険を伴う。
なぜかというと、LGBTについて皆が知っている訳ではないからだ。
最近の世代はわからないが、少なくとも私の世代は学校で「LGBT」という単語は出てくることはあれど、細かい中身について語られたことは一度もない。
(恐らく、これにはLGBTを細かく説明しないことによって学生に自分がマイノリティであることを気付かせないという戦略があるのかもしれない)

それに、私は高校生の頃からトランスジェンダーを学校内で公言していて、大学生になってホルモン治療を始めたのだが、そのことを友人に報告したらもうすでに「性転換を完了した」という風に受け取られた。
トランスジェンダーというものについて細かく知らないが故に、ヒトは「男性の体」と「女性の体」のどちらかでしか存在しないという風に思われている。

実際、ホルモン治療を始めたからといって、女性が男性の体になる訳ではない。
寧ろ、女性が完全な男性の体になることなんて今の医学では不可能だというのに、「性転換」という自分の慣れない言葉で一度衝撃を受けているからなのか、それが可能であるという思考になってしまっている。

そのくらい人々は当事者でない限りLGBTについて無知なのに、急にそのLGBTについてのCMを地上波で放映したらどうなるだろう?
例えば、トランスジェンダーではあるがはっきりと家族に自分の性別について伝えるのが憚られているような子が、家族でテレビを見ている時にこのCMが流れたら?

まだまだ受け入れられていないLGBTを、「CM」という大衆メディアで取り扱うには、早すぎた。
このCMのせいで居心地が悪くなった当事者は少なからずいるだろう。
私がその一人であることは言うまでもない。

そして、忘れてはならない問題は、所謂「性的マイノリティ」の人々を「LGBTQ+」という枠に入れてしまったことである。
本来、性自認や性的指向は人それぞれでグラデーションがあり、全く同じだという人を探す方が難しい。
LGBTが性的マイノリティなのではなく、「皆違う」のだ。
このプロジェクトには「ヘテロ」で「シスジェンダー」の人は参加していない。
この時点で、LGBTを「マイノリティ」として扱ってしまっている。

こういったあたりが特に思慮不足であることは、「よく考える力のあるヒト」であれば瞬時にわかると思うのだが、なぜ見直されずに公開されたのだろうか?
LGBTについて詳しい人が一人も製作側に携わっていないのだろうか?

まあ、私はこの件を受けて、パンテーンは生きてる間一度も買わないと決めたし、今後このような考えの浅いCMが出てこないことだけを願っている。

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