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詩など

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記事一覧

妹の話

わたしにはギャルの妹がいてさー
ギャルって言うのは違うよ、
イマジナリーのおまじないギャルじゃない
そういうの、分かるけど好きじゃないよ

本物の ギャル ああこれは残酷だぜ

爪は長くて、髪の毛は、意外とサラサラ
頭の回転が早くて、足し算と割り算は速い
多分、昔そろばんを習っていたから

ギャルの妹はさあ
これ意味ねーって笑って甘い炭酸のお酒とか飲む
煙草も吸ってたの、見たけどまあまあ似合うね

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天国に行けなかった

ばん

爆発 暴発 崩壊の始まり、お祭りの始まりと終わり

狂ってるよ、でも全部だから、大丈夫

キーーーーーと言う音がだんだん大きくなって、

いつも2人で一緒だった僕の片割れは形を失って3人、5人、8人と増えていった。何千個の目と耳が脳に全部の情報をおくってくるものだから、おれは壊れてしまったあ
こわ!れてしまった。溶解する原子炉のように、決壊するダムのように、蓄積、崩壊。再生以外の全ての星を

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今日子

さて、何から手放せばいいと思う?
悔しかったんだよな
彼はなんでも自分でやりたがったし、彼女はなんにでも手を出そうとした
それなのに1人じゃ出来ないなんて言うんだな

まっとうな、まっとうって言葉が好きだったから、まっとうな経験をしたかった
みんなはまっとうで自分はそうじゃないと思い込んで楽になるのはよそうぜ

そんなことをしなくても優しくなれるよ
優しい方の自分に名前をつけてたんだ
厳しい方にも

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パヤ寝

パヤ寝

「奇を衒う」の「衒う」部分はもう既に奇を衒っている。それで"てらう"って読むんだ〜珍しいね〜待ちか?

いいえ。

…ッス

ノリで買ったサボテンに水を上げてないし日に当ててないけど全然元気だしデカくも小さくもならなければ喋りだしたりもしないんだ。おいおいおい
笑ってるのか?笑ってんだ?いいぜ。ダンスとかも、いいぜ。

色んな紙と本が机を占領していてちょっとちょっとちょっと〜目のやりどころに困るな

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マザーグースの罰

くだらないから息をとめてしまいそう
僕以外の全部に意味があって素晴らしいって
そういう歌が流れていてお祝いみたいだ
僕だけが何も知らない

外に出ると輪郭が暴かれてしまいそう
崩れるみたいに眠ってしまって
もう二度と目を覚まさない?
僕は本当は

本本本本本の部屋で
静かにしていたい
文字を目で追って満足したい
街に出て脳がちゃんと動いていることを確認したい

僕だけのプレイリストを
知ってる全部

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耳目鼻

耳目鼻

「この砂浜でいちばん綺麗な貝殻見つけるまで帰らないから」
湿った砂粒がサンダルの裏に張り付いてシャリシャリと鳴く、しゃり しゃり しゃり
「聞いてんの?あんたも手伝ってよ」
しゃり しゃり

俺は煙草のまだ赤い部分をサンダルのへりで潰して、はい、これがこの砂浜でいちばん綺麗ですよ、と彼女へ差し出した
彼女は俺の顔を見ずに、俺の手の中を睨みつけた
もうだめだよ、こんな暗いのに貝殻なんて見つかるわ

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ブルーオータム

ブルーオータム

大衆的なものを嫌う神経はアイデンティティの危機に瀕した時にピリピリと震えるらしい。
俺は金木犀が好きだ、好きだった、そうにこやかに話した隣を歩くお前はもう冬まで生きられないよ。あの匂いは、思い出せそうで思い出せない(そんな感覚もいくらかの人間の脳で共有されている)、それから頭に三本足のプラグを刺す。
ピリピリ ヒリヒリ ジューーン

どこから匂いがするのか探るのを辞めた。一瞬尾を掴んだ金色の霧、を

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淡々譚

淡々譚

広さも温度もない、明度と鮮度の一切を切り取られたふわふわした空気の中を進んでいるみたいだった。宇宙は今も拡大し続けているらしい。巨大な空間がさらに巨大な空間の中で大きくなり続けていることにはなんの意味もない。宇宙と、それ以外の境界線、それがあるとするならば私の想像が及ぶ中で最も巨大で、進むことしかしらない本物の最前線。フロンティア・オブ・ユニバース。君には前進とか開拓とかよりも似合う言葉があるよ。

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黒

自分のことを王で、武士で、姫で、紳士で、お嬢さんで、強くて品があって知性があって美しいと思っている、そうありたい、そうありたいと願っている、虫けらで、カスで、クソだと思っている。
意味がわかりませんね、気さくで根暗で阿呆です。

毎日暑くて青くて赤くてすごいな、毎日暑くて青くて赤くてすげーということはみんな言ってるよ。夏がね、あー夏だね、ってこと。ほらそこ、あんまり夏を象徴的にしない、宗教にしない

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x

2X歳 会社員

彼は蕎麦がそこそこ有名な、本当に電柱3本毎に蕎麦屋があるような町に住んでいるのに、どこにでもあるチェーンの安い蕎麦屋を好む。
毎週土曜、決まってそのチェーン店に行って、それはもう本当に幸せそうに蕎麦を食べる。そんなに美味しいの?と聞くと、幸せ、と返ってくる。
「美味しい」とかではなく、「幸せ」
僕は、この辺には他に美味しい店が山ほどあるし、こんなどこにでもある店で食べる蕎麦よりも

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神様

人生の意味のなさについて、人生がどうでもいいと思ってるなら意味の有無は全くどうでもいい。考えることも意味がないなら脳みそは要らなくて、脳みそがないならあんまり生きている必要が無い。必要に迫られて生きているわけではないとしても、考えることだけが正しいと思ってしまうのは、それだけが自分にあるものだから?「それしかない」ということを「それに長けている」と勘違いしてしまうのも脳に物事を屈折させて考える部分

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生きそこない

雨を憎んで迷い込んだ羽虫を殺す夜に
雨はそのうち止むよ、と言った声が優しく
隠し持っていた健気さは
錆びたナイフの方が痛いことを知っている
触らずに殺すことの、
雨粒が容易に脳を壊していくことの、

雨漏りが火種を腐らせている

電車の窓から入った水が風が
街の解像度をどんどん下げていく

全ての人間はただの光の容器であった
飽和するのを待っている
直線を描くばかりなのはそれしか出来ないから
光が

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空に向かって投げつけた種が大気圏を突破して燃えながら咲いたらしい
肩甲骨が天使だった頃の名残だった頃の
殺された子供たちの血がまだ乾く前の
海の髪の毛の一筋が光って見えた
地面から足が生えてみんな連れていかれてしまった
見ると死にたくなる魚がいるなら見ると生きたくなる虫もいるはずだ
と言った彼も手足の数が8倍になって岩の隙間で死んでしまったみたい
生きるために生きることには限界があり、それは死ぬ前

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ボトルメール

理由付けが得意な君と僕ではもう何を言い合っても平行線だ。摩擦のないテーブルにカップを滑らせているみたいだね、ずっと遠くで床に落ちたカップの破片が積もっていく。その割れた陶器の山を見て誰かが笑う。

分かっていることの確認と分かり合えないことの確認。自由の狭さ脆さ。諸々のどうだっていい会話はそのどうでもよさに価値があった。どうしようもない話はいくら話してもどうしようもないという点であんなに楽しかった

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