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「囁き」・・・ホテルで起こった事は。超ショート怪談。


「囁き」


大学の学食で、男同士で話をしている時、自動車好きで、海外のロードレースにまで出かけていくという三崎が、最近の出来事と言って話し始めた。

「よくある話だと思うんだけど」

三崎は、やや上を見ながら話し始めた。自慢話をする時の仕草だ。
俺は少し辟易したが、とりあえず聞いた。

「俺さ。この間、引っ掛けた女と、ホテルに入ったのさ」

三崎は、海外の有名な「マン島のレース」のある日、
たまたま繁華街で凄い美人と出会い、思わずナンパしたらしい。

一戦終えた三崎は、まったりタイムを過ごしていたんだが、
やはりレースが気になって来たので、テレビをつけて中継を見始めた。

「また、車なんか見てるの? そんな事より楽しいことしようよ」

女が後ろから抱きついてきて、手で目を隠すので
三崎は手を少し乱暴に払って言った。

「うるさいなぁ。放せよ」

途端に。

「何が?」

と、シャワールームから顔を出した女が答えた。

『え? 今俺の背中に乗っている冷たい肌は誰だ・・・』

そんな思いが伝わったのか、背中から囁きが聞こえた。

「三崎君。アタシならいつもそばにいるわよ」

三崎は上体を起こしてみたが、ベッドの上には何も無かった。

「な、良くある話だろう?」

そう笑いながら話す三崎に、

「お前の肩に、悲しいそうな女が五人、しがみ付いてるぞ」

とは、とても伝える事が出来なかった。

          おわり


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