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「偉大なる夢枕」・・・改めて怪かしの世界の心地よさを知った。


『朗読劇 陰陽師』 声物園 於:オメガ東京 16日まで

『陰陽師の朗読劇』と聞いてまず思うのが、あの有名すぎる夢枕獏さんの原作を、どのように料理するのだろうか、ということだろう。

今回も、上演前の客席の雑談を聞いていると、そこに関心が集まっているのが分かった。そんな期待とも先入観とも言える気持ちを引っ提げて開演時間を迎えたのだが、公演が進むにつ入れて、そんな下らない感覚はうち捨てて、純粋にステージを楽しもう、という気持ちになった。

まず、語りを担当した方々が良い。

最初に登場した渡辺克己さんの声が実に魅力的だ。
これを生で聞けるだけでも入場料の何割かの値打ちはある。

2本目は、清原愛さんの力強い声で引っ張っていってくれる。
固めの文章、緊迫感のある場面を独特の硬軟織り交ぜた語りで表現するのが、彼女の特色であり強みでもあるのだが、今回はそれがいかんなく発揮されていた。(これは内緒にしているのだが、実は彼女の語りは5年ほど前から聞いている。ここ数年の技術力・表現力の向上は目を見張るものがある。)

後半に入り、「鬼小町」の語りは澤谷香織さん。
サスペンスフルな内容、歴史上の人物の微妙な心情に、
寄り添うような語り口は、聞いていて心地よい。
特にこの後半パートは、「語りのある演劇」の形になっていて、芝居の他に舞踊やダンスなども加わって来る盛りだくさんの構成だから、その多い要素をしっかりと掴んでまとめ上げている。

こんな場合、ややもすると語りが主張しすぎて芝居が添え物になりかねないのだが、そこのところをうまくバランスを意識して語られているのが好印象だった。

バランスという所では、背後のスクリーンに映し出される映像も
主張しすぎず、作品世界を壊さない内容の映像であった。
全体に舞台に乗せる要素の配分を良く心得ている人の演出であると思った。


その他、個人的には、琵琶と篠笛の音が、心に沁みた。
その音色は、悠久の時の狭間にすっぽりと落とし込んでくれるのだ。
様々な朗読劇・朗読公演の形があるが、朗読・芝居はもちろん、
琵琶や笛スチールパンまで使った生演奏と映像。
新しく制作された平安時代の衣装を来た役者たちの所作、(惜しむらくは酔いどれの蘆屋道満の衣装が少し糊が効きすぎている感じがしたが、それもすぐに気にならなくなっていった)等など、小さなステージながら、見どころの多い公演であった。

公演は16日まででほとんどの回が売り切れだが、
まだ一部に空席があるらしいので、興味のある方、あやかしの世界が好きな方は是非、声物園に問い合わせて頂きたい。

           おわり


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