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「夜のお寺で怪談会」・・・怪談家が、寺の本堂で語るとキレがある件。



「やはり少人数が良い」
「いや。大人数も楽しい」

その夜私は、二つの相反する気持ちが心の中で葛藤していた。


「山形怪談夕会」
山形県山形市の向谷寺で行われた怪談イベントである。

怪談家として確固たる地位を確立している、ありがとうぁみ氏
同じく怪談家で怪談会のプロデュースも行っているDJ響氏が揃って、お寺の本堂で怪談を語るという初のイベントだった。


会場となった向谷寺は、山形にある浄土宗の寺院で、地元でもよく知られている至極真面目なお寺である。
その本堂でご本尊を前にして階段を語るというのだから、見逃せない。

私は当日新幹線に乗って山形に向かった。

会場は将棋の町天童の郊外にある静かな場所。
駐車場に車を止めると、本堂までは墓地の中を歩いていく

ポツリポツリと間を開けて置かれているランタンのかすかな光が
否応なく雰囲気を盛り上げてくれる。

厳かな伽藍の中に入ると、ご本尊の静かな佇まいに
背筋を正される気分である。

「本当にこのような場所で、怪談会を行ってよいのだろうか・・・
もしも、『罰当たりめ!』とご本尊が怒り出したら、何か奇怪な現象や、さわりが起こるのではないだろうか」

そんな恐れとも期待とも言えないような気持ちが
頭を支配していた。


そして・・・日がとっぷりと暮れた17時30分。
二人の怪談家が入堂。
初めての会が幕を開けた

実は、このお二人の出演する怪談会を見に行ったのは、
初めてではない。

渋谷で毎年行われている怪談会などに通い詰めて
5年目になる。

1000人以上入る大きなライブハウスで行われるその怪談会は
十数名の語り手が参加し、若手芸人のギャグやトークなども交えて、バラエティに富んだ内容になっている。

しかし今回は、出演者は二人だけ。
それでも、いやそれ以上に、お二人の話のクオリティは高かった。

それまでの大会場より出演者と観客が近いということもあるが。
それぞれの話にキレがあった

声の強弱の使い分け、擬音の入れ方などで見事に観客を引っ張っていく。

そこで冒頭の葛藤である。

やはり少人数の怪談会が良い、のか。
いや。大人数でバラエティに富んだ会も楽しいしな・・・

切なさに似た葛藤を抱くのである。

話は心底恐怖に震えるものから、
不思議な後味のもの、
ラストにほっとした救いを感じさせるものなど、
(各人4話ずつ、だったと思う)
いずれも聞きごたえのあるものだった。

お寺の本堂という場所や、観客との距離が近いことが、ぁみ、響、両氏の気持ちにも影響したのだろうか。
語りに、普段以上の熱がこもっていたように思えた。

幸いなことに(残念なことに?)、奇怪な現象も起こらず、
本堂を出る頃には、夜空に丸い月が輝いていた

ただ、少ない人数だから単なる勘違いかもしれないが、
始まる前に本堂に入っていった人数より、出てきた人数の方が
多いような気がしたのは、気のせいだったのであろうか・・・。

終演後、
夜の墓地を通り抜けるで駐車場に戻る途中、
真っ黒な墓石に映る自分の影に、ギクリっと
過敏に反応してしまった。

今後、さらに山形で怪談会を企画しているという、
この先の会でも数を数えてみようかと思っている。


おわり


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