見出し画像

「深夜喫茶の獲物」・・・あっという間に読めるちょっとだけ怖い話かも・・・

超ショートショート。
その向こうに隠れている情念は・・・なぜ彼女はそんなことをしているのだろうか、過去に一体何が・・・


『深夜喫茶の獲物』

あたしは、終電間際の深夜喫茶が好きだ。

「彼氏ができたルームシェアの友達に気を使わせないよう
○○カフェで過ごすのも疲れて来たな。
せめて朝まで一緒にいてくれる人でもいれば良いのに」

こんな風にSNSに書き込むと、
獲物を求める男がすぐにやってくる。

そして、一人で携帯を見つめている女の子を見つけるなり、
優しい言葉で話しかける。

女の子は当然困惑するが、放っておくと席を立って逃げてしまうか、男を受け入れてしまう。

そうなっては元も子もない。
ギリギリ、女の子が決断する直前、あたしは杖を突きながら、女の子と男の間に割って入る。

「カオリちゃん。遅くなってゴメンね。
お祖母ちゃん、大急ぎで走って来たんだけど、
途中で息が切れそうになってね。
親友のマサコさんが急に入院することになっちゃってね。
その手続きが長引いちゃったのよ。
あら? こちらの方は?」

男は、あたしの皺だらけの顔を見るなり、
チッと舌打ちをして去っていく。

「ありがとうございます」

女の子は、深々と頭を下げて、感謝の言葉を述べた。

あたしは、いつものように、礼を言う必要は無い、と伝えた。

「これは、余命幾ばくもない年寄りの趣味なんだから!」

そう。あたしは、自信たっぷりの男が敗北感にまみれて苛立つ瞬間が大好きなのさ。

行き場の無い欲情をむき出しにする表情なんて
歳を取ったら中々見られないのよ・・・
その瞬間、何とも言えない優越感を感じるし、
少しだけ若返ったような気がするわ。

さあ。別の深夜喫茶で、次の獲物を探さなければ・・・

「あんたも、いつまでもこんなところにいると、ひねくれ者の年寄りになっちまうよ」

                     おわり

#朗読 #怪談 #伝説 #恐怖 #深夜喫茶 #不思議 #小説 #可愛い女の子 #ショートショート #秘密 #老女 #コミックス #ナンパ #獲物 #狩り #SNS #ルームシェアの友達 #スキしてみて #習慣にしている事

この記事が参加している募集

#スキしてみて

527,285件

ありがとうございます。はげみになります。そしてサポートして頂いたお金は、新作の取材のサポートなどに使わせていただきます。新作をお楽しみにしていてください。よろしくお願いします。