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「適合」・・・暑い中、少しでも涼しくしたい。


さて、暑いですね。
何をしていても頭がぼおっとします。

エアコンの使用で来月の電気代が怖い!

いくらかでも寒くなれば、と
昨日ラジオで読まれたちょっとゾクゾクの作品を紹介します。

SKYWAVEFM の『清原愛のGoing愛Way 』

朗読作品は、「適合」。
短いですが、MCの清原愛さんの読みのおかげでゾクっと来ました。

では、「適合」。放送分に一部加筆しました。

・・・・・・・・・・・

「適合」   作 夢乃玉堂

「残念ですが、あなたも奥様も不適合でした」

四つになったばかりの娘、由美が百万人にひとりという難病、
後発性プルートウ症候群に
罹っていることが分かったのは半年ほど前だった。

この病気には、有効な治療法が無く
娘を助けるには、近い遺伝子の肉親から臓器を移植する以外にはない。
私たち夫婦は勿論、可能性がある親戚にも頼み込んで
検査してもらった。

しかし、移植可能な者はいなかった。
最後の希望が消えた、と妻に伝えるのは辛かった。

妻は一言、『そう』と言っただけで電話を切った。

その夜、俺は誘われた飲み会を断り真っ直ぐ家に帰った。

「パパ。お帰りなさい」

何も知らない由美は、普段通りに笑いながら出迎えてくれる。
その笑顔が今の私には辛い。

「ねえパパ。お隣の光男君のパパがねぇ、
もうすぐガイジンさんになるんだって」

俺は涙を堪えながら答えた。

「外人さんに? 光男君のパパは、
れっきとした日本人だろう? どうして外人になるの?」

「あのね、名前が変わるの。え~とね、何だったかなぁ。
タナーさんかな。ダナーさんかな。そんな名前よ。え~とえ~と・・・」

俺は外れてくれと思いながら、思いついた事を口にした。

「ドナー・・・かな」

「そう! それ。ドナーさんになるんだって、
さっき電話でね、ママが話してたのよ。
『なれるのは、あなただけなの』って」

数か月後。
営業先に向かうタクシーの中で、俺は妻からの電話を受けた。

「あなた。奇跡よ。病院で探して貰ったら適合する人が見つかったのよ」

妻は少し呼吸が荒かった。

「病院で探して貰ったということは、
ドナーの名前は分からないんだろう?」

「ええ。そうね。そんな事はどうでもいいじゃないの。由美が助かるのよ」

移植手術の場合、移植を受けた側の家族には
ドナーの情報は教えてもらえない。
それでいいと思おう。知る必要はない。
妻の言う通り、そんなことはどうでも良いのだ。
由美のあの明るい笑顔がこれからも見られるのだから。

良かったなと返事をして、俺は電話を切った。


            おわり

いかがでしたか?

来週8月24日の16時からも
SKYWAVEFM の『清原愛のGoing愛Way 』で、短編が朗読されます。

お時間のある方は是非。

番組はリアルタイム聴取のみですので、ご注意を。


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