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モヤモヤの原因【Jリーグ】ベガルタ仙台vs浦和レッズ

前節ホームで福岡に勝利したレッズはアウェイでベガルタ仙台と対戦しました。

仙台は下位に沈んでいるものの開幕当初の停滞感はなく徐々に立て直してきています。レッズは相性の良い仙台を相手に勝利して3連勝といきたいところでした。


スタメン

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仙台は前節の清水戦からメンバーを5人変更。古巣対戦となる関口は先発、マルティノスはベンチ外となりました。今節は4-4-2のシステムを採用してきました。

対するレッズは前節の福岡戦からメンバーを2人変更。右CBに岩波に代わってデンが入り、左SHは大久保に代わって汰木が先発となりました。


試合内容

前半から仙台が4-4-2のブロックを作りレッズの攻撃に構える展開に。前半5分に西のクロスからユンカーが頭で合わせるがシュートはGK正面で得点にはならず。11分にはユンカーのループパスから汰木がシュートを放つも仙台GKのスウォビィクに阻まれる。24分には田中のクロスに再びユンカーが頭で合わせるがこれもGKにキャッチされ得点には至らず。レッズは仙台のブロックをサイドから攻略を試みるも得点には繋がらず0-0で前半を折り返す。

後半開始直後にレッズに決定機が訪れる。高い位置で小泉がボール奪取からシュート、スウォビィクが弾いたボールをユンカーがシュートするも再びスウォビィクの好セーブに阻まれる。すると徐々に流れは仙台に傾く。46分に松下のシュート、51分には加藤にシュートを受けるも今度は西川が好セーブを連発し得点を許さない。流れを変えたいレッズは67分にデンと田中を下げて岩波と興梠を投入。その後再びレッズペースとなり仙台陣地に押し込む形に。88分に途中出場の関根とのワンツーから興梠がシュートを打つもGK真正面。92分には途中出場の山中のCKに岩波がヘディングシュートを放つもミートせず。結局両チーム最後までゴールを許さずにスコアレスドローで試合は終了した。

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・試合スタッツ

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・試合ハイライト動画


手倉森監督の対応策

この試合の仙台はレッズ対策を講じて見事にレッズの攻撃を抑え込んだと思います。見ていた方はわかると思いますが、レッズがボールを保持して敵陣に押し込めているのに何故が上手くいっていないモヤモヤがあったと思います。このモヤモヤはレッズの武器を使わせてもらえなかったからだと感じました。

・小泉、ユンカー潰し
まず印象的だったのが仙台の小泉とユンカー潰しです。小泉に対しては仙台のダブルボランチがスライドしてマーク、ユンカーに対してはCBsがスライドしてマークしてきました。これによってボールが右サイドにあろうが、左サイドにあろうがこの2人のマークが外れることはありません。

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実際にこの試合のユンカーがフリーでターンできたシーンはほとんどなく、シュートした場面はピンポイントクロスにヘディングシュート、もしくはこぼれ球を拾ってのシュートでした。

また小泉も自由にプレーさせてもらえずに後半の途中から右サイドに移ってからようやく小泉が高い位置でボールに絡めるようになりました。


・守備的2トップ
レッズの後ろからのビルドアップも仙台によって操作された印象を受けました。と言うのも仙台の2トップがCBsまでプレスをかけずにボランチをケアし、自然とSBへとボールが渡るように誘導してきたからです。

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これまで対戦した多くのチームはトップの選手がレッズのCBに対してプレスをかけてきました。レッズが相手のプレスをどういなせるか、どうやって回避して前進するかという勝負でした。しかし、仙台は無闇にプレスはかけずにレッズにボールを持たせて中央への縦パスを通させないような守備をしてきました。その結果、SBを経由した攻撃が多くなりなかなか中央で起点を作ることができませんでした。


・SHの牽制
またSHの牽制も仙台は上手でした。レッズのボランチが最終ラインに下りて3CB+1ボランチの形で前進するのはレッズ得意の型です。特に4-4-2で守ってくる相手に対してはこの形で攻略してきました。しかし、仙台は奪いにいく時はSHが前に出て人数を同数にして圧力をかけてきました。また2トップの一角がボランチをケアし、両SHを3バックの右左CBに噛み合わせてくる守り方と併用してきました。

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その結果、レッズのSBにボールが入った時には仙台のSBが縦にスライドする形で対応され、なかなかSBが余裕を持ってプレーする機会が少なく、バックパスになるようなシーンが目立ちました。

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結果的にレッズが無得点で終わったのを考えると手倉森監督のレッズ対策がハマり、最後まで仙台の守備をこじ開けられなかったことになると思います。

プラン通り?

レッズは仙台の4-4-2のブロックに対して3-1-5-1で前進する形を取りました。このシステムに関してはレッズがよくやる形です。各選手の役割がハッキリしていたのが特徴的でした。

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この試合では各ポジションの役割や立ち位置がいつも以上にハッキリしていて、SBがワイド、SHが中央でボールを引き出す役目を徹底していました。あらかじめ仙台と対戦する上で用意してきた形だと思いますが、あまり機能しなかった印象を受けました。

・SBの幅取り
まずは両SBの幅を取る役割です。SHを内側に絞らせて、西と明本はほとんどの時間を大外のレーンでプレーしていました。SHが絞ることでSBはフリーにすることができます。レッズは後方からのサイドチェンジでフリーのSBに繋ぎ、SBからクロスという攻撃を得意としています。

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この試合でも5:05や24:12のユンカーのヘディングシュートなど左から右へのサイドチェンジで西に繋いだところからチャンスを作りました。

このSBがフリーになることを活かした攻撃をすること自体はレッズが取り組んでいることで1つの武器だと思います。ただこの攻撃をメインにするのであれば考えなければいけないことがあると思います。

①フィニッシャー
この試合ではユンカーが右サイドからのクロスに頭で合わせるシーンが2回ありましたが、ユンカーはヘディングは得意ではない選手です。

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リーグ戦でのここまでのデュエルのデータを見てみると、地上戦での勝率は50%(30回中15回勝利)という結果に対し、空中戦での勝率は24%(37回中9回勝利)という結果になっています。

空中戦の強さはユンカーが改善しなければいけない課題かもしれませんが、ユンカーが苦手な空中戦が多くなるようなクロス攻撃は果たして有効なのかどうなのかということを考えなければいけません。

②ゴール前の人数
サイドからのクロス攻撃をするのであればクロスを上げた時にゴール前に人数をかける必要があります。しかし、このシステムの場合だとどうしても枚数不足が発生します。

SBにボールが入った時にはSHがサポートに入り、小泉が展開役としてボールサイドによった時にゴール前に飛び込んでこれる可能性があるのはユンカー、汰木、明本の3人です。必ずしも逆サイドの選手が間に合うわけではないことを考慮するとどうしてもゴール前の迫力にはかけるかなという印象を受けます。

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前半の西がユンカーに上げたようなピンポイントクロスでない限り、簡単に跳ね返されてしまうと感じました。


・2列目のリンクマン
レッズは2列目の選手たちをリンクマンとして引き出させる役割をさせました。SHが内側に絞ってハーフスペースを取り、小泉がユンカーの1列後ろに立ち位置を取ります。しかし、仙台のスライドが的確でSHが捕まるような場面が多くなかなかハーフスペースで受けてターンするような場面を作れませんでした。

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また個人的には田中をリンクマンとして使うのはどうなのかなというのが正直な感想です。田中は狭いスペースで後ろ向きの状態でボールを受けることよりも、サイドに張って相手と対面した状態でのドリブルの仕掛けやSBの背後に飛び出していく動きなどが武器だと思います。この試合でも田中が仕掛けるような場面は多くなかったですし、右SHをリンクマンとして使うのであれば関根の方が適していたと思いますし、田中と西の立ち位置を入れ替えても良かったのではないかなと感じました。

また両SHにリンクマンの役割を与えて絞らせたことで、小泉が使うことができるスペースが狭まってしまったことも仙台のディフェンスに捕まるシーンが増えた原因だと思います。ハーフスペースにはSHが配置されているので自然と小泉が使えるスペースは中央のレーンだけで縦の動きのみとなってしまいます。SHと小泉が入れ替わったり、ローテーションするようなダイナミックな動きができれば良かったのですが、特に右サイドでは田中が常にハーフスペースにいて小泉が顔を出せない状況が続きました。

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ボランチが前向きにボールを持てればこのような配置でも上手くいったかもしれませんが、仙台が2トップでボランチを消してきたのでボランチから小泉に縦パスが入るような場面も少なく、小泉のトップ下が自然と消える(小泉があまりプレーに絡めない)ような展開になってしまいました。

気になるのはレッズが仙台を想定して挑んだこの戦い方がプラン通りだったのかどうかというところです。プラン通りだったが決めるところを決めきれなかったのか、ゴールに迫るプロセスのところで不具合があったのか、もしくは仙台が想定していた以上のパフォーマンスを見せてきたのかでこのゲームの印象が大きく変わるなというふうに感じました。結局のところは立ち上がりの決定機で決めてればという結果になりましたが、こうした引いてくる相手に対してこれから同じようなプランでいくのかどうか考える必要があると感じました。


リカルド監督の一手

後半立ち上がりにレッズに決定機が来ますが、それを逃して以降仙台が徐々に持ち直すような時間帯になりました。前半はほぼピンチがありませんでしたが、51分には仙台に崩されて決定機を作られました。何とか加藤のシュートを西川のファインセーブでしのぎますが嫌な流れになっていました。

タイムラインを見ても前半はほとんど仙台にシュートを打たせませんでしたが、後半の頭15分間だけで4本のシュートを浴びました。

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この嫌な展開を断ち切るべく、リカルド監督が動きました。


・2トップと小泉のSH
なかなかチャンスを作れずに流れが仙台に傾きつつあった67分にレッズはデンと田中を下げて岩波と興梠を投入し再びレッズペースに流れを持ち込みました。この交代で興梠とユンカーの2トップ、小泉をSHにコンバートして4-4-2にシステムを変更しました。この変更によって3つの効果的なポイントがありました。

1つ目は2トップにしたことでゴール前の人数が増えたこと、そして興梠とユンカーの背後への動きで仙台のディフェンスラインを下げさせることができました。

2つ目は小泉がSHに移ったことでハーフスペースで上手くボールを引き出して攻撃に起点になることができたことです。仙台のディフェンスはなかなかSHからライン間に移動しながらボールを受ける小泉を捕まえて激しく寄せることができなくなりました。2トップに変更したことで小泉が使えるライン間のスペースが増えたことも良い影響を与えました

3つ目は投入された岩波から展開を変えるようなパスが入るようになったことです。デンもビルドアップでは安定したプレーを見せていましたが縦パスの質やパスの出し手としては岩波の方が上手いので、岩波からのサイドチェンジや縦パスでレッズの攻撃にリズムが出てきた印象を受けました。

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74:35や75:42では興梠の背後への動きで攻撃に『深さ』を作ることができました。興梠が入るまではなかなか深さを作ることができずに、仙台のディフェンスラインも高くコンパクトな状態でした。興梠が入ってから押し込むことができるようになったのは、この背後への動きで仙台のディフェンスラインが下がったからだと感じました。

また73:58では小泉が西からハーフスペースで受けて良い形を作りました。残念ながら小泉のラストパスがズレてしまいましたが、小泉がターンをした瞬間にはユンカーがニア、興梠がファー、汰木がバイタルエリアにいてゴール前での人数不足も解消することができていました

興梠と岩波の投入後レッズが再び押し込めるようになりました。そして90+2分に山中を投入しますが、個人的にはもう少し速く山中を見たかったなという感想です。押し込めるようになったのでSBの守備の負担はかなり減りましたし、特にボールを保持している時にSBは比較的プレスを受けなくなっていたので山中がフリーでクロスやシュートを狙える展開だったと思います。興梠が入ってゴール前にも人数を集められるようになったので危険な攻撃を仕掛けることができたのではないのかなと感じました。



最後に

選手たちも心理的にストレスを感じた試合だったと思います。チャンスがありながらも決めきれない、上手くいっているはずなのに点が取れないという展開にモヤモヤする試合となりました。ACLを見据えるのであれば今日のような試合で勝点を落としてはいけない試合でした。

決めるべきところで決めてればという結果にはなりましたが、レッズとしては「引いてくる相手に対してどうやって攻略するか」という課題を再認識する試合だったと思います。ユンカーが加入して以降、ユンカーの決定力や個人の力で得点をして勝ってきた試合があったので、この課題が改善されたようにも思えましたが根本的なところで「どうやってゴールを奪うのか」ということを見つめ直す良い機会になったと思います。

特にユンカーや小泉のところは徹底的に潰してくるチームが今後増えると思うので、後半途中から行った興梠との2トップや小泉のSHなど新たなシステムを試せたことはポジティブだと思います。とりあえず連戦になるので疲労をなるべく減らして試合に備えて欲しいと思います。

次節は大分戦、レッズが苦手とする5バックで対応してくることが予想されます。この試合で出た課題をどうやって改善していくのか方向性を確認する絶好の相手になると思います。勝利してオリンピックの中断期間に入ってほしいです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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