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サポーターが求める姿【Jリーグ】浦和レッズvsアビスパ福岡

前回の対戦では福岡の力強い攻守に完敗したレッズ。ホーム埼玉スタジアムで前回のリベンジしたい一戦でした。

福岡はリーグ戦2連敗中と苦しい状況で何としてでも3連敗は回避したいところでした。レッズはミッドウィークに行われた柏戦で久しぶりの勝利を手にし、この試合に勝利して連勝としたい状況でした。


スタメン

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レッズは前節のターンオーバーをした柏戦からメンバーを7人変更。西川、岩波、ダブルボランチは固定し両SB、両SH、前線は入れ替えとなった。

一方の福岡は前節の神戸戦からメンバーを4人変更。宮、湯澤、金森、ジョンマリが先発起用となった。



試合内容

レッズがボールを握り、福岡が4-4-2のブロックで構える展開で試合は進む。前半11分に西からパスを受けた小泉が前のスライディングをかわして左足一閃、ゴール右隅にミドルシュートを決めてレッズが先制する。20分に福岡はジョンマリのキープから前がミドルシュートを放つもボールは枠外へ。27分には明本のクロスをユンカーがスルーして走り込んだ小泉がシュートを打つもGKに止められる。42分にはショートカウンターから柴戸のスルーパスに反応したユンカーが切り返しからシュートを放つもGK村上に止められて追加点とはならず。レッズが試合を支配するもなかなか追加点を奪えずに前半を1-0で折り返す。

後半からお互いにロングボールが増えボールが落ち着かない展開でスタートする。53分にクリアボールを拾ったクルークスがシュートを打つが西川落ち着いてセーブする。74分に小泉のスルーパスに途中出場の汰木が反応しシュートを放つが、ボールはDFに当たりCKに。そのCKから汰木のキックに明本がニアに飛び込み頭で合わせて待望の追加点を獲得する。81分には汰木がユンカーとのワンツーでPAに侵入、サロモンソンに倒されてPKを獲得する。このPKをユンカーが蹴るも福岡GKの村上に止められてしまい追加点には繋がらない。それでも安定した試合運びで試合を終了させ、2-0でレッズが勝利した。

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・試合スタッツ

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・試合ハイライト動画


強いチームの証拠

・ハードワーク
この試合で沢山レッズの良い部分がありましたが、個人的に1番取り上げたい点としては選手達の『ハードワーク』です。強いチームには必ず選手のハードワークがあります。

もちろん華麗なプレーや卓越したテクニックも素晴らしいのですが、レッズサポーターが心を動かされるのは選手が懸命に守備に戻る姿であったりカウンター時に全速力で駆け上がる姿だと思います。

この試合で印象的だったのが38:56のシーンでした。レッズの左からのCKから西がサイドゴール前にクロスを入れますが福岡にクリアされボールがクルークスに渡ります。この瞬間にクルークスには明本と槙野がいち早く反応してプレスをかけます。そして逆サイドでは福岡の選手がカウンターに出ようと素早く上がりますが大久保と伊藤が懸命に守備に戻っています。

その結果、福岡は速攻をすることは出来ずにGKまでボールを下げざるを得ない状況に追い込まれ、最終的にGKの村上に蹴らせることができました。

このハードワークがなかったらカウンターから失点していた可能性もありとても重要なプレーだったと思います。選手たちの守備に戻る意識はこの試合で徹底されていました。

また、77:25のシーンもとても素晴らしかったと思います。福岡のCKでユンカーが重廣の空振ったところでボールをかっさらってカウンターが発動しました。この時に汰木と関根が猛スピードで上がっていき最終的に3vs2の局面を作りました。レッズはCKのディフェンス時には全員が守備に戻ります。ですので3vs2の局面を作るには長い距離を相手の選手よりも素早く上がる必要があります。残念ながら関根のシュートは枠外になってしまいましたが、途中出場の選手が全速力で駆け上がる姿勢は見ていて感動しました。

強いチームは地味ですがこういった部分が徹底されていますし、こういったハードワークできる選手たちが揃っているチームはチーム一丸となって戦えるので結果もついてくる傾向にあると思います。レッズの選手たちはこの試合でレッズサポーターが求めている姿を表現してくれたのではないでしょうか。

・両SHのプレスバック
この試合での両SHのプレスバックは無失点で終われた1つの要因だと思います。福岡はサイドからのクロスにゴール前で待ち構えているジョンマリや山岸、ブルーノメンデスといったパワフルな選手たちが合わせるのを得意としています。前回の対戦でもサイドからのクロスからレッズは失点しています。

この試合のレッズは福岡がサイドでボールを持っている時にボールホルダーに対して数的優位を作って守ることが徹底されていたと思います。13:38のシーンでは田中が全速力でプレスバックし西をサポート。最終的に湯澤のクロスを田中がブロックしマイボールにしました。

他にも田中は6:52などでプレスバックを見せていましたし、大久保も4:45などで素晴らしい守備を見せていました。この試合で福岡のサイドの選手に良い状態でクロスを上げさせなかったことは無失点に繋がったと思います。


得意の型

この試合のレッズのビルドアップはいつにも増して安定していたと思います。福岡は4-4-2で基本的に構えてきました。ここ最近のレッズは特に4-4-2で守ってくる相手に対して前進することが得意になってきた印象があります。ですのでこの試合でもスムーズに前進することができるようになりました。

レッズは4-4-2で守る福岡に対して3-1-1-5(3-1-5-1)を作りビルドアップしていきました。2トップに対してはボランチが下りて最終ラインを3枚にして数的優位を作ります。もう1人のボランチ(下の図では伊藤)が2トップの間、福岡の1列目と2列目の間に立ち位置を取りパスコースを確保します。

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この配置であれば2トップの脇からドリブルで持ち上がることもできますし、ボランチが間で受けてターンすることもできます。特に最近は岩波がドリブルで持ち運べるようになり右からのビルドアップが安定してきましたし、3列目でボールを受けるダブルボランチ(柴戸と伊藤)のターンの意識も向上してきました。ですので4-4-2の相手に対するビルドアップがとてもスムーズにいくようなっています。


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前半の飲水タイムで福岡はレッズの3列目のボランチをケアしにきました。重廣が前に出てきたり、クルークスが1つ前に出て牽制し2トップの1人がボランチをケアするような形に修正してきました。

しかし、槙野も岩波も2トップの脇からドリブルで運ぶことができるのでレッズとしては特に問題なく前進することができました。

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下の図のようにクルークスが牽制してきても4vs3の状況で数的優位が作れているので逆サイドにボールを持っていきフリー方から持ち上がるなど、レッズのビルドアップに大きな成長が見られました。

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体現

2列目の選手の動きも徐々にですが整理されてリカルドサッカーを体現できるようになってきたと感じました。「相手から離れて引き出す動き」、「裏を取る動き」、「内側に絞って大外にスペースを作る動き」などができるようになってきました。まだまだ上手くいかないこともありますが成長を見せている部分だと思います。

・動きが噛み合わなかった場面
9:03〜のシーンでは右サイドの西と田中の動きが噛み合わずに福岡にハメられてしまいました。明本から岩波がボールを受けて岩波は西にパスを出しました。

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この時に田中もボールを引き出そうと下りてきたために西と田中が2人とも足下でパスを要求する形となり福岡に寄せられてしまいます。最終的に西のキープ力で何とかファウルをもらい助かりましたが選手の連動が噛み合わない場面でした。

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・連動が上手くいった場面
一方で直後に小泉の得点が決まった場面では選手の連動が噛み合った素晴らしい得点になりました。

槙野からパスを受けた岩波はハーフスペース(前の脇のスペース)に下りてきた田中にパスを出します。この時に西は背後へ抜ける動きを見せているので金森は西をケアするために田中には寄せることができませんでした。

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そして田中が柴戸に落とします。この瞬間に大久保が外から内側へ斜めの動きを見せて大外にスペースを作り、そのスペースに明本が上がってきました。パスは出ませんでしたがサイドチェンジをしてもチャンスに繋がったかもしれません。

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そして柴戸は田中が再び抜ける動きを見せたタイミングで田中を囮にして西にパスを出します。田中がディフェンスの注意を惹きつけた分、西には余裕が生まれました。

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西はチェックの動きをしてフリーになった小泉へパス。小泉はプレスをかけてきた前から遠い方の左足で冷静にかわして、最後は強烈なミドルシュートを決めました。

当然小泉の個人技はこのゴールには欠かせませんが、小泉にボールが渡るまでに2列目の選手が様々なアクションを起こしてボールを動かそうとしていることがわかります。複数の選手たちの動きに連動性があったことで小泉まだボールを繋げることができました。

このゴール以外にも特に前線の選手は相手を動かして他の選手をフリーにする、スペースを作る、相手のマークを剥がすなどの工夫が見られました。まさにリカルドサッカーを体現するような攻撃を仕掛けられたのではないかなと感じました。


完璧への道のり

レッズの理想の試合展開は攻撃で圧倒し続け、試合を終了させて勝利することだと思います。徐々にボールを保持できるようになって、試合を支配する時間を増やしているレッズですが、90分を通じて試合を支配することはまだできていないように感じます。


・レッズが目指す戦い方
この試合でも後半は福岡がロングボールを使った攻撃とプレスの強度を高めてきたことでボールを蹴りあう展開となり、そうなると空中戦では福岡の方が部があったのでレッズは次第に自陣に押し込まれるような展開になりました。ボールを握れずに押し込まれる展開は本来のレッズが目指す戦い方ではありません。

データを見てもレッズは前半は60%以上のポゼッション率で福岡を圧倒していましたが、後半は福岡にポゼッション率を上回れる時間帯がありました。またヒートマップを見ても前半に比べて後半はレッズの重心が後ろになっていることがわかります。

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リカルド監督も試合後のインタビューで後半の戦いぶりについてコメントしていました。

後半は相手が放り込んで来るのに対して少し影響した部分があって、こちらもそのような展開になってしまいました。少しボールが行ったり来たりするような展開になってしまったと思います。チャンスもボールを奪った後の速い縦への展開などが少し多くなりました。ただ、ボールをしっかり持てていたときはいいプレーができていたと思うので、そこを長い時間やれるようにしていくことが大事だと思います。

引用:リカルド ロドリゲス監督 福岡戦試合後会見(浦和レッズオフィシャル)

相手が放り込みをしてきた時にそれに付き合う形で蹴り返すのではなく繋がるようになるとレッズがまた一回り成長するのかなと感じました。まだまだ試合の全ての時間帯でボールを保持して圧倒することは出来ていませんが、それでもこの試合ではこれまでに比べるとかなり安定した戦いぶりを見せてくれました。

サッカーでは湘南戦のような圧倒していても数少ないシュートで負けてしまうこともあります。選手たちはそれをしっかりと理解して臨んでいるように感じました。試合を決定付けるという意味でも明本のゴールはレッズを楽にしましたし、その後も攻める姿勢を見せたことはレッズが完璧な試合運びを目指していることが伝わってきました。


・ピンチはチャンス
完璧な試合運びではなかったですが、全ての試合でボールを握り、試合を支配することができるわけではありません。そんな中で今のレッズの強みはボールを握れずに押し込まれた状況でもカウンターで得点を取る力があることだと思います。この試合でもカウンターから多くのチャンスを作りましたし、押し込まれてピンチの状況で逆にチャンスを作る力があるということを証明した思います。

ユンカーは1人で状況を打開でき、相手と並列な状態であればスピードで抜け出して得点する力があります。また56:55のような一瞬の動き出しでシュートまで持ち込むことができます。小泉とユンカーのホットラインはレッズのカウンターの武器になっています。

そしてユンカー以外にもレッズの選手たちはカウンター時にスプリントして前に飛び出す選手が増えたように思えます。77:25ではユンカー、関根、汰木でシュートまでいきましたし、90:06では明本がボールを奪い、汰木と小泉がワンツーをして汰木がシュートを放ちました。どちらも得点には繋がりませんでしたが、押し込まれた状態やピンチの状況からでもチャンスを作ることができたのはレッズがまた1つ成長した部分だと思います。特に上位と対戦する場合には押し込まれる時間帯が増えると思うので鋭いカウンターは欠かせないものになると感じました。


最後に

前回の福岡との対戦では歯が立たずに完敗でしたが、この試合では内容も充実した完勝だったと思います。各選手やチームの成長を随所で見られた嬉しい試合となりました。

得点を決めた小泉はミドルシュートを決められるようになるとますます怖い選手になると思います。また大久保、田中、汰木、関根の成長ぶりも見事でした。プレスバックの意識やハーフスペースでのボール引き出す動き、大外に張るだけではなく、内側に絞ってSBが上がるスペースを作る動きなどレッズの攻撃のアクセントになっていました。また柴戸と伊藤のダブルボランチの攻守に渡る存在感は圧倒的でしたし、CBのビルドアップ時の判断とフリーの選手を認知する視野の広さも向上していると感じました。SBの西や明本は安定して各々の持ち味を発揮していましたし、西川は前回対戦時の悔しい結果から見事に無失点で終えリベンジを果たしました。

まさにチーム全員が一体となって戦えているので、素晴らしい結果が付いてきたのかなと感じました。ミッドウィークの柏戦でも出場機会の少ない選手達の奮闘が目立ちましたし、チームの中で健全な競争が起こっているから各選手達がスキルアップしていくのかなと思います。

この好調を維持して勝点を積み上げていってほしいです。次節はアウェイで仙台戦。更なるレッズの飛躍に期待しましょう。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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