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現実と理想【J1第10節】川崎フロンターレvs浦和レッズ

ガンバ大阪に敗れリーグ戦3試合未勝利と苦しい状況のレッズはアウェイで川崎フロンターレと対戦しました。

川崎はリーグ戦3試合で2勝1敗とまずまずのスタート。富士スーパーカップでレッズに敗れているだけにリベンジに燃える。一方のレッズは2試合連続で退場者を出し、試合の流れを手放してしまっています。シーズン序盤ながら下位に沈んでいるので勝点3が欲しい試合です。

マッチレポート

スタメン

川崎: 4-1-2-3
浦和: 4-4-2

川崎は鹿島戦からメンバーを3人変更。登里、遠野、レアンドロダミアンが先発出場。鹿島戦で得点を上げた知念と佐々木はベンチ外、スタメンだった小林はベンチスタートとなりました。

レッズは前回のガンバ戦からメンバーを4人変更。酒井、馬渡、柴戸、明本が先発となりました。

試合内容

前半4分にレッズは高い位置でボールを奪うと明本が左足を振り抜きミドルシュートを放つが惜しくもポストに当たり枠の外へ。7分にレッズに決定機が訪れる。左からのCKに岩波がニアでボールを擦らして中央でフリーになっていた江坂が合わせるもシュートはゴールの上に外れる。17分に川崎は右サイドから山根がクロス、遠野が折り返したボールを家長がボレーシュートを狙うが枠の外へ。20分にレッズは川崎のプレスを掻い潜ると右サイドの酒井へ展開、酒井がクロスを上げ最後は馬渡がシュートを放つも山村がブロック。33分にレッズは右サイドからのFKを獲得。馬渡が蹴ったボールを岩波がヘディングでゴールに流し込みレッズが先制。38分に川崎は脇坂が狙いすましたシュートを放つも僅かにゴール右に外れる。前半はレッズの1点リードで折り返す。

後半最初のチャンスは川崎。46分にカウンターから遠野クロスにダミアンが飛び込むが合わせられず。51分にレッズに決定機が訪れる。右サイド深い位置から関根がグラウンダーのクロス、明本がスライディングシュートを放つも川崎の守護神チョンソンリョンがビッグセーブで凌ぐ。57分に川崎はダミアンの落としたボールを脇坂がシュート、ショルツがブロックしこぼれたところを山根が狙うが西川が冷静にキャッチ。62分に川崎はこの試合初めてのCKを獲得。脇坂が蹴ったボールを家長が頭で合わせてネットを揺らし、川崎が同点に追いつく。64分に脇坂がゴール前までドリブルで持ち込み粘りながら山根へパス、山根の左足のシュートがゴール左隅に決まり川崎があっという間に逆転に成功する。85分にレッズはペナルティエリア前でFKを獲得。馬渡が直接狙うもチョンソンリョンがセーブ。逆転された後にはユンカーや松崎、大久保を投入して反撃を試みたが結局得点を奪えず、2-1でホームの川崎が勝利した。

試合結果

明治安田生命J1リーグ 第10節
2022年3月2日(水) 19:03キックオフ・等々力陸上競技場
川崎フロンターレ 2-1(前半0-1) 浦和レッズ
得点者 33分 岩波拓也、62分 家長昭博(川崎)、64分 山根視来(川崎)
入場者数 14,696人

・試合ハイライト動画

・試合スタッツ


マッチレビュー

近づいた理想

・狙いを持ったビルドアップ
前半のレッズのビルドアップは狙いを持ってボールを保持し理想的な前進をすることができた場面がありました。下の図のように川崎の両WGが外切りをしながらCBに圧力をかけてくるプレスに対し、川崎の2列目の背後で浮いてる小泉を使って前進する意図がありました。そのために川崎の2列目を中盤で喰いつかせる必要がありましたが、レッズは右サイドのところで酒井もしくは伊藤が岩波の右に下りてくることでチャナティップを引き出すことに成功しました。

33:42のレッズのビルドアップ

特にレッズはボールサイドと逆サイドにいるSBを意識しながらボール回しをしていて20:00では左サイドから右サイドへ展開して、最後は馬渡のシュートまで持っていくことができました。川崎のハイプレスに対して1列目の背後(3トップの背後)と2列目の背後を使いながら前進するイメージが全体で共有されていたと思います。狙いを持ったボール保持からシュートまで運べるようになったという意味では理想的なポゼッションだったと思います。1試合を通して狙いを持ったボール保持が多くなるとよりレッズの攻撃に恐さが出てくると感じました。

・エネルギッシュな前線のプレス
そしてレッズが川崎相手に前半上手く戦えていた点として前線のプレスが上手くハマったことが大きいと思います。明本、江坂、小泉、関根の前線は連動したプレスと精力的なプレスバックで川崎の中盤(橘田、脇坂、チャナティップ)を経由したビルドアップを上手く封じ込むことができていました。下の図のように前線で中央から外側へ追い出していき徐々に川崎のプレイを制限していきました。この時に特に良かった点が中盤へのパスコースを消す意識です。プレスに出ていった後もプレスバックやスクリーンしながら川崎の中盤を消すことができていました。

レッズのプレス

レッズのプレスはかなり効果的でしたが、やはり90分間同じ強度でプレイすることが出来ずに、55分過ぎたあたりから強度が落ちていきました。過密日程やコロナでコンディションが整っていないこと、同じメンバーで戦ってきていること、川崎のパス回しのテンポが後半に入り上がったことなども影響があったと思います。

前半のレッズのプレスは「同じ強度で90分間プレイを続けることができれば…」という理想が垣間見えた瞬間でもありました。


10分間のジャブ

この試合で川崎の恐さ、強さを象徴していた時間帯が53:40から2失点目までの63分までの10分間です。レッズはこの10分間はほとんど川崎にボールを握られ自陣で守備をする時間が続きました。レッズは自陣に押し込まれると下の図のように4-4-2のコンパクトなブロックを敷いて対応しました。

富士スーパーカップでは押し込まれると2トップのどちらかが左SHのポジションに入って4-5-1で守っていましたが、この試合では4-4-1-1のような形で対応することがほとんどでした。中央に人数はかけられますが逆サイドに振られると脆くなるのでレッズとしてはなるべく同サイドで川崎にプレイさせる意図があったと思います。

前半は川崎のIHがあまりペナルティエリアのポケットに走り込んでこなかった(走ってもパスの精度が低かった)のでレッズとしては対応しやすく危ないシーンはほとんどありませんでした。しかし、後半は50分過ぎたあたりからチャナティップや脇坂が積極的に飛び出すようになり、レッズのブロックの陣形が崩れる場面がありました。ブロックの陣形が崩れると選手たちの距離間がアンバランスになりセカンドボールが拾えづらくなります。その結果、レッズがボールを奪ったとしてもパスコースが少なく、クリアや1人剥がさないといけない状況に追い込まれました。

この10分間の間に5回ほどレッズがボールを奪う場面がありましたが、パスミスや川崎の素早いネガティヴトランジション(攻→守の切り替え)によって直ぐに川崎にボールを渡す形となりレッズの選手たちが呼吸を整える時間を作ることができませんでした。特にこの10分間で大きく2回の試合展開を左右した場面がありました。

①55:22のカウンター
ダミアンへの縦パスをショルツと馬渡で上手くボールを奪い、馬渡が明本へ縦パスを狙った場面がありました。しかし、谷口が素晴らしい予測とカバーリングで蓋をして再び川崎ボールとなりました。個人的に馬渡がカウンターを狙った判断については悪くなかったと思います。実際に富士スーパーカップでの2点目はカウンターからでしたし、明本と谷口の1対1の状況だったので十分にチャンスになる可能性があったと思います。ですが、すぐに回収される形となったのはレッズにとっては痛手でした。

②56:39のミス
レッズがようやくボールを奪い、岩波がショルツへパスをしましたが、ショルツのコントロールミスによって川崎ボールとなりました。あの場面ではレッズがようやく落ち着いてボール保持ができる状況でしたが、ショルツがロストしたことによって再びレッズは守備に回ることとなります。あのままショルツがボールコントロールが上手くいき左サイドにいた馬渡までボールを回せていると、川崎の前線のプレスを剥がせていたと思うのでレッズが川崎陣内まで入っていける状況だったと思います。

川崎の速いテンポのパス回しに選手たちも喰らい付いてチャレンジ&カバーを繰り返していましたが、10分間のジャブをくらったレッズの選手たちは体力の消耗が激しく次第にプレイの強度や精度を失っていきました。ポゼッション率はそれまで川崎が52%、レッズが48%とほぼ五分五分でしたが、2失点目の時点で川崎が59%、レッズが41%と大きく差が開く状況でした。


勝利への飢餓感

レッズの2022シーズンのテーマの1つとして『勝利への飢餓感』があります。そしてこの試合に限って言えば勝利への飢餓感は川崎の方が強かったのかなと思いました。レッズの選手たちが勝ちたいと思っていない訳ではなく、プレイでも意欲的なプレイを見せていました。しかし、川崎は昨年の王者という振舞いではなく、”富士スーパーカップのリベンジ”、”ホーム等々力”という様々な要素を含めて、レッズには絶対に勝つという気概を見せていた気がします。

川崎がリードしている展開での79分には小林が身体を投げ出してハンドしてでもボールを止める、82分には山村が松崎に抜かれたところをファウルで止めるなど「このまま行かれたらヤバいな」というところでことごとくファウルをしてでも潰してきました。もちろんファウルをすることは褒められたものではありませんが、勝つためにプロフェッショナルな仕事をしたという見方もできると思います。

レッズの2失点目を見てみると柴戸が脇坂に喰いついたところを入れ替わられてしまいましたが、柴戸があそこでファウルをしてでも止めていれば2失点目は防げたかもしれません。最近の試合では警告、退場が多くなっているので繊細になっているのかもしれませんが、ここ数試合はそういった些細な部分で試合の勝敗を分けているのが事実としてあると思います。


最後に

前半は良い流れで試合を進めることができましたが、後半は運動量の低下と共に徐々にプレイの質や強度が落ちて逆転される結果となりました。まだ、90分間同じサッカーを続けることができないという点で、現実と理想の狭間でレッズは苦しんでいるのかなという印象を受けます。やっているサッカー、目指しているスタイル、試合の内容は悪くないだけに結果がついて来ていないことが歯痒い思いです。

選手たちもリーグ戦で勝ててないというプレッシャーを感じていると思いますし、「攻めているのに点が取れない」、「そこまで崩されていないのに失点してしまう」などもったいない展開が続いているのでチームがぐらつき始めてもおかしくありません。1つ勝てるとこういう苦しい状況は改善されると思うので何よりも次の試合の勝利が重要になってきます。次節はホーム湘南戦、熱いサポートで選手を鼓舞し、ホームでリーグ戦初勝利をもぎ取りましょう。


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