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好循環【Jリーグ】浦和レッズvsセレッソ大阪

前節、横浜FCに勝利し4試合連続でクリーンシートと好調を維持しているレッズはセレッソ大阪と対戦しました。

レッズは久し振りの埼玉スタジアムでの試合で、前回対戦でセレッソに負けているのでリベンジしたい一戦でした。

アウェイのセレッソ大阪はクルピ監督が退任し小菊監督が指揮を執っています。セレッソはミッドウィークにACLの浦項戦があったのでコンディション的にはレッズの方が有利な状況でした。


スタメン

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ホームのレッズは前節の横浜FC戦からメンバーを1人変更。伊藤がベンチスタートとなり平野が先発に復帰しました。

セレッソは直近のACL浦項戦からメンバーを4人変更。この夏にセレッソに加入した乾は先発で起用してきました。


試合内容

前半10分に早くも試合が動く。関根のスルーパスを小泉がスルーして走り込んできた江坂がGKとの1vs1を冷静に沈めてレッズが先制する。12分にはレッズが高い位置でボールを奪い小泉のクロスから江坂が頭で合わせるもセレッソの守護神キムスンギュがセーブ。24分には汰木の折り返しを平野がシュートするもGK正面。26分にセレッソはFKのこぼれ球を藤田がボレーシュートを放つもボールは枠の上に外れる。43分にショルツがドリブルで持ち上がりPA内に侵入しクロスを上げるも、飛び込む選手がおらずボールは流れる。前半は1-0でレッズのリードで折り返す。

HTにメンバー交代はなく両チーム同じ布陣で後半戦へ。後半開始直後の46分にキムスンギュの横パスを関根がカットし無人のゴールへシュートを放つも枠を捉えられない。48分に平野がパスカットからミドルシュートを放つもゴールの上に外れる。59分に岩波からのロングパスに反応し背後に抜け出した汰木が足を伸ばしてGKより先にボールに触り、そのボールはゴールへ吸い込まれてレッズに追加点が生まれる。66分にセレッソは瀬古がロングシュートを狙うが西川がしっかりキャッチ。81分に途中出場の伊藤のスルーパスに途中出場の田中が抜け出してシュートを放つも、キムスンギュがファインセーブで凌ぐ。86分にはFKのこぼれ球をショルツがクロス、伊藤が頭で合わせるがキムスンギュに阻まれる。92分には酒井のクロスにユンカーがシュート、松田がスライディングでブロックして追加点には至らず。そして試合は終了し、ホームのレッズが2-0で完勝した。

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・試合ハイライト動画


・試合スタッツ

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ピッチ上での表現

・レッズの狙い
この試合ではレッズが狙いとしたことが明確にピッチ上で表現されるシーンが多かったです。下の図のようにセレッソが4-4-2から左SHの乾を前に出す左肩上がりのプレスを行ってきました。乾を前に出すことで、レッズが3-2-5の布陣でビルドアップした時に3バックに圧力をかける狙いがあったと思います。レッズはそれを利用して乾が前に出た時に空く背後のスペース(ハーフスペース)から前進を狙っていました。

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多分ですが、事前のスカウティングでレッズから見て右のハーフスペースが空くことは分かっていたと思うので、試合開始直後の0:11で平野が早速振り向きざまにハーフスペースにいる関根へパスを出す場面がありました。

そして、江坂の得点の場面では下の図のように関根がハーフスペースで平野からの縦パスを受けて、背後へランニングした江坂へ針の穴を通すようなパスを決めてゴールが生まれました。この得点のシーンではレッズが左サイドでボール保持していたところから右サイドにボールを展開しましたが、左から右にボールを運んだことでセレッソのボランチがスライドでスペースを埋めきれない状況を作り、乾がプレスに行くためにやや前に立ち位置を取った背後のスペースを利用することができました。

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この得点には他にも様々な要素が絡んでいます。レッズはショルツ、岩波、酒井の3バックでビルドアップ時の最終ラインを形成することが多かったですがこの場面では平野が最終ラインに加わり、酒井がワイドの高い位置を撮りました。これによってセレッソの左SBの丸橋が関根と酒井の2人をケアすることとなりどちらにもタイトにマークすることができず、結果的に関根が浮く形となりました。また、関根のスルーパスに対してゴール方向に江坂と小泉が反応して、江坂がボールを受ける前に小泉がスルーしたことで関根のパスが江坂まで通りました。小泉のスルーがなければまた違った状況になっていたと思います。この江坂の得点は様々な要素が絡んだレッズが狙いとするゴールになりました。

・偽9番
ここ数試合のレッズが採用している江坂の偽9番の利点がこの試合でも遺憾なく発揮されてました。先程のハーフスペースを使った前進は偽9番のシステムを採用する前からレッズが狙いとして取り組んできたものですが、江坂の偽9番のシステムではハーフスペースに加えて中央から前進することができます。

下の図のようにボランチがボールを受けた時に江坂がライン間に下りてくることでボールを引き出して前進します。この時に小泉や汰木がDFラインの背後を取りに行くのでCBはなかなか江坂まで捕まえることができません。また、レッズがハーフスペースを使った攻撃を何度か見せることで、セレッソのボランチはハーフスペースを警戒する意識が高まり、中央(ボランチ間)の意識が低くなります。

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33:48のシーンでは偽9番の良さが表現された瞬間で、江坂がライン間で柴戸からボールを受けると小泉が背後へランニングをして、江坂から小泉にスルーパスが出ました。惜しくも繋がりませんでしたが狙いとしていたことが上手く表現された瞬間でした。


盤石な守備

レッズはこの試合で前線のプレスが上手くいき46:16では関根がキムジンヒョンのパスをカットして決定機を迎えるなど良い圧力をかけることができていました。

前半のセレッソは丸橋を高い位置に上げた左肩上がりの3-2-5でビルドアップ。それに対してレッズは下の図のように2トップの1人が片方のサイドを遮断しながら誘導し、もう1人の2トップがボランチを背中で消しながらプレスで圧力をかけました。しっかりとボランチを前に出してダブルボランチをケアできていたことも良かったと思います。その結果、セレッソは浮き球のパスでプレスを回避するか、ブロック外でボールを回す時間帯が増えました。

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後半に入るとビハインドのセレッソは両SBを上げて前半よりも攻撃的な布陣に変更してきました。レッズとしてはこの布陣の方が前半よりも誰がどこにプレスにいくのかが明確なので、守りやすくなったのではないかなと思います。セレッソは後ろから繋ぐシーンよりも浮き球のパスで2列目にダイレクトに届けるような場面が増えました。

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前からのプレスを剥がされて押し込まれても4-4-2のブロックを即座に作って、どっしりと構えてセレッソの攻撃に対応していました。80:06のシーンのようにセレッソの左サイドから丸橋の鋭いクロスが上がる場面が何度かありましたが、岩波やショルツを中心に跳ね返しシュートを打たせませんでした。

データを見てもPA内でシュートを打たれたのは2回だけでした。

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押し込まれても4-4-2の陣形が崩れる場面が少なく、動じずに守れていたと思います。本当にここ数試合は盤石な守備で得点を与えていませんし、レッズの結果にも結びついています。後ろが安定していると前線も安心してプレスにいくことができますし、前線のプレスで上手く制限をかけることができているのでディフェンス陣もボールを回収できています。チーム全体で盤石な守備を体現できていると言えると思います。


バランス感覚

・ハーフスペース対策
前半は有効にハーフスペースから前進しチャンスを作れていたレッズに対して、セレッソは後半からハーフスペースを徹底的に管理してきました。

下の図のように4-2-4気味でボール非保持は構えて2トップとSHの間を狭くすることでハーフスペースへのパスコースを消してきました。それによってレッズはなかなか上手く中盤を経由できずにサイドからの攻撃もしくは1発で背後を狙うような攻撃が増えました。

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ハーフスペースが消されてセレッソのブロックの中を使って攻めることが難しくなりましたが、岩波の『タッチダウンパス』から良い時間帯に追加点を取ることができました。岩波のパスは見事でセレッソのDFラインの隙を突くハイクオリティーなパスでしたし、汰木のコントロールからの粘りのシュートも良かったと思います。

・平野の交代
63分に平野が下がり伊藤が入りましたがそこからレッズは上手くボール保持することができない時間帯に突入します。平野は非常にバランス感覚に優れている選手で状況を認知する能力に長けているので、CBが圧力をかかっているなと感じれば、すかさず最終ラインに下りてビルドアップのサポートをしますし、スペースを見つけると上手く立ち位置を取ってトップの背後で受けることができます。平野が下がった後の約15分間はレッズがビルドアップ時にCBsが圧力を受けやすい陣形でボール保持する時間が増えてなかなか良い攻撃を組み立てることができませんでした。

下の図のように伊藤と柴戸は2トップの背後でボールを引き出す場面が多く、CBにボールが入った時にCBはセレッソの2トップにプレスを直線的に受ける状況が多くなりました。これまではこういった場面で平野が下りてサポートしたり、2トップに背中で消されない立ち位置を取ってパスを受けていましたが、平野が下がりなかなか上手く前進できませんでした。

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データを見ても61分から75分はポゼッション率も下がり、セレッソにシュートをあびる時間帯となっています。

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平野が下がったことでネガティブな側面もありますが、伊藤が入ったことでトランジションのスピードや守備の強度という面で良い影響が出ていたので試合を終わらせるという意味ではとても良い交代だったと思います。ここで強調したいのは平野がいたことでビルドアップがスムーズにいき上手く前進することができたという点です。

田中、大久保、ユンカーを投入してからはカウンター中心の攻撃へのシフトチェンジ。81:22では伊藤から田中へスルーパスが渡り、決定機を迎えました。オープンな展開にならないように柴戸と伊藤でしっかりスペースを管理して、試合を危なげなくクローズさせたことは非常に評価できると思います。状況やコンディションによってボランチの組み合わせを変えながら戦えることは今のレッズの強みだと思います。


最後に

リーグ戦5試合連続クリーンシート、公式戦9試合負けなしと確実にレッズが成長していることを表す結果が出ています。安定した守備は確固たるものにしている感じがありますし、攻撃面では徐々に狙いとして取り組んでいるものが表現される回数が増えてきています。チームに好循環が出来つつあるのも非常にポジティブな要素だと思います。

心配な点としてはユンカーの元気のなさです。ユンカーは相手DFとの駆け引きが上手く、タイミングよくスピードでDFを振り切りフィニッシュまで持っていくことが特長の選手だと思います。しかし、レッズが偽9番を採用していることでユンカーの出場時間が減り、これまでユンカーを中心に構築されていた攻撃が色々な所から攻める多様性への攻撃へと変化しているのでユンカー自身に迷いがあるのかなと感じました。これまではユンカーの動き出しに合わせて周りの選手がパスを出していたので、ユンカーが自分のタイミングでアクションを起こしていましたが、今ではユンカーが周りの状況に合わせて動き出すのでユンカーからの動き出しも減り、いつ動き出せば良いのかユンカー自身も迷っているのではないかなと思います。チームが偽9番のシステムで結果が出ているだけにユンカーにとっては難しい状況だとは思いますが、もう1度自信を取り戻して再び躍動する姿を見たいところです。

これからリーグ戦も残りは9試合となりACL圏争いは大混戦の状況です。勝点が詰まっているだけに1つも落とせる試合がないのでユンカー含め全員の活躍が求められると思います。次節はアウェイでFC東京戦。FC東京もACLを狙える位置にいるだけに大事な一戦になります。レッズの選手達が味スタで躍動する姿に期待しましょう。


出典:


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