試練【J1第2節】浦和レッズvsガンバ大阪
ミッドウィークにレッズは9節のヴィッセル神戸との試合が前倒しであり、ガンバもルヴァンカップでセレッソ大阪との試合があったことで両チーム中2日での試合をとなりました。
ガンバは片野坂監督が今シーズンから指揮をとり新たなスタイルの構築に取り組んでいます。一方でリカルド体制2シーズン目となるレッズはチーム内でクラスターが発生した影響で欠場している選手が多く、Jリーグでは1分1敗と苦しい状況です。
マッチレポート
スタメン
ホームのレッズは明本が神戸戦の退場により欠場。小泉、宮本が今シーズン初スタメン。岩尾がスタメンに復帰。レッズは4-2-3-1(4-4-2)の0トップシステムで挑んだ。
アウェイのガンバも前節の鹿島戦でパトリックが退場したのでこの試合は欠場。三浦が今季Jリーグ初先発となり、レアンドロペレイラが3トップのセンターに入った。3-4-3のシステムを採用。
試合内容
試合開始直後の1分、早くもレッズに決定機が訪れる。左サイドの関根のクロスにペナルティエリア内に走り込んだ右SHの松崎が右足でボレーシュートを放つもゴールを捉えられない。4分、ガンバはペナルティエリアやや手前から宇佐美がミドルシュートを放つが枠の上に外れる。8分、レッズに再び決定機が訪れる。左サイドから江坂がグラウンダーのクロスに松崎がシュート、ガンバのGK石川が弾いたボールを小泉がシュートを放つがゴール左に外れる。19分にはレッズの右CKから江坂が頭で合わせるもゴール左に外れる。22分には江坂のクロスに関根がシュートを放つものガンバDFにブロックされ得点は奪えず。33分には関根がミドルシュートを放つがGK石川に阻まれる。39分にガンバはクリアボールを宇佐美が拾い、ドリブルで持ち上がると最後はレアンドロペレイラがシュートを打つもゴール右に外れる。レッズが多くの決定機を作ったが結局得点は生まれずに前半を折り返す。
後半からレッズは大畑を下げて、馬渡を投入。一方のガンバもレアンドロペレイラと柳澤を下げて山見と石毛を投入しました。後半もレッズがボールを握るがなかなかガンバの5-4-1のブロックを前に前進することができない展開が続く。64分にペナルティエリア付近で関根が倒されて獲得したFKを馬渡が直接狙うが、石川がセーブしゴールにはならず。76分にレッズはガンバのプレスを上手く掻い潜ると最後は馬渡のクロスに江坂がボレーシュートを放つが枠を捉えられない。78分にガンバは右サイドから石毛が鋭いクロスを上げるがショルツが頭でクリア。80分に岩尾がレイトタックルでこの日2枚目のイエローカードを貰い退場となりレッズは10人での戦いとなる。すると直後のFKからガンバがボールを繋ぎ、最後は途中出場の福田のシュートが岩波にディフレクトしてゴールネットを揺らしガンバが先制。更に84分にガンバは黒川がシュートを放つも岩波がブロック、こぼれ球を山見がループシュートを狙うが西川がキャッチし追加点を許さない。87分には関根の横パスをカットした黒川がシュートを放つが西川がセーブ。88分に途中出場の犬飼が小野瀬に倒されてレッズがPKを獲得したがVARでペナルティエリアの外でのファウルという判定となり、馬渡がFKを蹴るも味方に当たり失敗に。試合はこのまま終了しアウェイのガンバが勝点3を手に入れた。
試合結果
明治安田生命J1リーグ 第2節
2022年2月26日(土) 15:01キックオフ・埼玉スタジアム
浦和レッズ 0-1(前半0-0) ガンバ大阪
得点者 83分 福田湧矢(G大阪)
入場者数 16,121人
・試合ハイライト動画
・試合スタッツ
マッチレビュー
一定のクオリティー
まずこの試合のポイントはガンバが3-4-3のシステムでレッズのビルドアップに対してハイプレスをかけてきたところでした。しかし、ガンバのハイプレスは統率が取れてない部分が多く、下の図のように3トップの背後に大きなスペースが生まれていました。更にレアンドロペレイラのパスコースの限定もあまり上手くいっていなかったので岩尾や岩波から3トップの背後にいる伊藤へパスを通すことは難しくなかったと思います。16:42のシーンでは1stディフェンダーであるレアンドロペレイラが岩波から伊藤へのパスコースを消せていなかったので、レッズは簡単に1列目のラインを越えて前進、そこから江坂、小泉を経由して左サイドの大畑まで展開することができました。
そして中盤では伊藤、江坂、小泉vsチュセジョン、倉田という3対2の構造になっていてレッズが優位にボール保持することができました。
・レッズの擬似カウンター
また相手を喰いつかせてから空いているスペースを利用する部分も上手くいっていました。40:13のシーンでは下の図のようにガンバの選手を前に喰いつかせてからロングフィードでひっくり返すような展開を見せて一気に擬似カウンターのような状況を作ることができました。
擬似カウンターについては昨シーズンに比べて精度が上がっている印象でどこにスペースが生まれて、どこに(または誰に)ボールを送り、誰がセカンドボールを拾うのかというところまで設計されているように思います。
出場できる選手が限られている中でビルドアップや擬似カウンターの部分である程度のクオリティーは見せていたと思います。しかし、後半のガンバがチームとして連動し始めた時にそれを掻いくぐるだけのクオリティーには到達していないのかなというのが率直な感想です。ポジショニングに関しても大枠は形になってますが微調整が利かないのが現実的なところです。
制限された攻撃オプション
前半の途中から3-4-3が機能しないのでガンバは5-4-1で構えてきましたが、試合開始時点では3-4-3でのハイプレスと自陣での5-4-1のブロックをプランしていたと思います。ですので、5-4-1のミドルブロックはプランBだったと思うので、ハーフタイムまでは連動性に欠ける場面もありました。ガンバは後半に入り山見と石毛を投入し前線を活性化してきました。またレッズがボールを保持している際の5-4-1での守備が非常に整理されたのでレッズはミドルゾーンから前進することに苦戦する結果となりました。
タイムラインとポゼッションのデータを見てもガンバが5-4-1のブロックに変更した前半の途中からレッズのシュート数は減り、後半はなかなかアタッキングサードに侵入することができませんでした。
・ガンバのミドルブロック
ガンバのミドルブロックには奪いにいく部分が明確にされていました。まずは山見、石毛、宇佐美で岩尾と伊藤へのパスコースを消しながらレッズの最終ラインへのボールホルダーへプレスをかけます。レッズのSBへパスを誘導しSBにボールが入った時点でガンバのWBが前に飛び出し奪うというのが第一の奪いどころでした。ですので、下の図のように宮本や馬渡の所でハマってしまう場面がいくつかありました。
後半は岩尾と伊藤の2人が1列目の背後えボールを受けて前を向けた場面が少なく、ガンバの前線が活性化されたことでボランチが背後で受けることが難しくなり、レッズの攻撃が停滞してしまいました。
第二のポイントは小泉のところです。小泉はこの試合で中央のレーンを主戦場としてプレイしました。前半はガンバの1列目(3トップ)を超えてからダブルボランチが縦パスを通す場面が多かったのに対し、後半は1列目を超えてボランチが前を向いてボールを持つシーンがほとんどありませんでした。その結果、ダブルボランチ→小泉への縦パスから岩波→小泉の縦パスに変わったので縦パスの距離が増える(相手ディフェンダーが寄せる時間が増える)こととなり、三浦や昌子が小泉に対して強くチャレンジすることができるようになりました。
76:02のような小泉に縦パスが入った瞬間にボールを落とすことができる近さに周りの選手がサポートする形や小泉を囮にして小泉の背後のスペースを使うなど、小泉+αで攻略する形を確立させられると小泉へのプレスが分散するのかなと思いました。
・関根と松崎のポジションチェンジ
後半から関根と松崎のポジションを入れ替えたレッズですが、個人的には理由が2つあったのかなと思います。
①馬渡の投入
前半は大畑と宮本が幅を取る機会が多く、関根がトップの位置で松崎はハーフスペースでプレスすることが多かったです。後半から馬渡が投入されましたが、馬渡と大畑の違いは大畑は始めから高い位置(2列目と同列)で幅を取るのに対し、馬渡はやや低い位置(2.5列目)で幅を取りタイミングよく上がってきました。馬渡がやや低い立ち位置を取ることで大外の高い位置にスペースが生まれるので、53:19のような松崎がインサイドから大外に流れるような場面が後半は増えました。1つ狙いとしてインサイドから流れるという意図があったのかもしれません。また、リカルド監督は右利きと左利きの選手をサイドのコンビとして組ませることが好きな監督なのでその辺も考慮していたかもしれません。
②松崎と小泉の立ち位置
個人的には松崎と小泉の立ち位置が被る場面が前半にいくつかあったことが気になりました。ハ中央でボールを受けられない小泉が右のハーフスペースに流れてボールを引き出そうとする場面がありましたが、松崎もハーフスペースにいるので2人が被ってしまうことがありました。そのため岩波やボランチからの縦パスや宮本からの斜めのパスに対して2人が被り窮屈なプレイになってしまう部分がありました。あくまで推測なので本当にそういった改善する意図があったかはわかりません。
紙一重の瞬間
81分に岩尾が退場したことでレッズは10人で戦うこととなりました。しかし、岩尾の退場直後のFKから失点してしまいました。この失点はレッズが10人にも関わらず11人で行っていたプレスのかけ方でボールを奪いに行ってしまったからだと思います。
下の図は72:23の失点に似たような場面です。まだこの時はレッズは11人でプレイしていました。レッズはサイドにボールが入るとサイドを圧縮する形でプレスをかけます。この時にダブルボランチの1人はボールハントやカバーに加わり、もう1人はバイタルエリアのスペースを埋めることご原則です。後半のガンバの攻撃は石毛や山見がレッズの左サイドの深い位置に流れるケースが多く、ショルツがサイドに引き出されることが多かったので、岩尾はショルツのカバーや左サイドに流れた選手を対応していました。
一方で10人になって直後のFKからのガンバの攻撃に対するレッズの守備を見てみると、伊藤がボールハントするために出ていったために、バイタルエリアにスペースができます。そして松崎がそれを察知し慌てて絞ってスペースを埋めますが、この時点でレッズのディフェンスは後手を踏んでいます。そして結果的に松崎が絞ったことで空いていたハーフレーンで福田がシュートし失点する形となりました。
試合内容的に勝ちたいゲームだったことと10人になりながらも積極的な姿勢を見せるために、ブロックを作るのでは無く、チーム全体としてガンバのボールを奪いに行ったレッズ。結果としてガンバにスペースを与えて失点することとなりました。ボールを奪えていれば良い守備と称賛され、失点すれば「プレスに行くべきではなかった」と言われるような紙一重のプレイだったと思います。
最後に
リーグ戦3試合を終えて1分2敗の勝点1と厳しいスタートとなったレッズ。コロナや怪我で出場できる選手が限られていて早くも総力戦となっているレッズですが、試合内容的には神戸戦もガンバ戦もポジティブなものでした。しかし、退場者を出して試合を難しくしてしまったり、多くのチャンスを作りながらも決めきれなかったりと勿体ない試合が続いています。この試合では犬飼が倒された場面でPKがFKに変わったりと運にも見放されていたような気がします。
結果が付いてきてない状況でチームの台所事情が厳しく、シーズン序盤ながら「試練」を迎えているレッズ。幸い、今シーズンのJ1は混戦模様なのであまりトップと勝点が離れていません。次節は王者川崎との一戦です。富士スーパーカップでレッズが勝利しているので、強い気持ちで川崎は望んでくると思います。苦しい状況だからこそチーム一丸となって逆境を跳ね返して行きましょう。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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