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グリム童話を読む配信。『いばら姫』〈1〉

ドイツ語の復習のために、グリム童話を原文で読み配信する試みをしています。

さて、前の物語『三枚の羽根』は無事に読み終わりました。今回からディズニー映画『眠れる森の美女』で知られる『いばら姫』を13回に分けて読んでいきます。

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『いばら姫』1回目の配信で読んだ部分を引用。その下にある日本語は拙訳です。

◇ グリム兄弟の童話集|Dornröschen(1/13)

Vorzeiten lebten ein König und eine Königin, die sprachen jeden Tag: >>Ach, wenn wir doch ein Kind hätten! << und kriegten immer keins. Da geschah es, als Königin einmal im Bade saß, daß ein Frosch aus dem Wasser ans Land kroch und zu ihr sprach: >>Dein Wunsch wird erfüllt werden; ehe ein Jahr vergeht, wirst du eine Tochter haben.<<
昔々、王様と王妃様がおりました。二人は毎日のように、「ああ、何としても子どもが欲しい!」とこぼすのですが、ついぞ授かりません。ところがある日、王妃様が湯浴みをしていたら、1匹のカエルが水から這い出してきて、彼女に話しかけたのです。「おまえの願いは叶えられるだろう。一年もしないうちに娘をもうけるはずだ」。(意訳)

それでは、気になる単語を見ていきます。まずは物語の題名から。

das Dornröschen|中性名詞  いばら姫

題名の単語は、Dorn(いばら)と、röschen(Rose=ばらの縮小形)から成っています。それぞれの意味を見ていきます。

der Dorn|男性名詞
① (植物の)とげ、針、苦痛(苦難)を与えるもの
② いばら(の茂み)
die Rose|女性名詞
① ばら(の花)
② ばらの花の形をしたもの
③ ばらの花の色をしたもの

男性名詞と女性名詞が組み合わさると中性名詞になる、というわけではなくて、縮小形にされた単語は中性になります。そして、初めて知った単語がこちら。

...daß ein Frosch aus dem Wasser ans Land kroch(kriechenの過去形)

kriechen|動詞
①(昆虫や爬虫類などが)這う、這って進む。(人や動物が)這うようにして進む
② ゆっくり(のろのろ)動く、忍び寄る
③ へつらう、はいつくばる

◇ ◇ ◇

ところで、今回読んだ箇所で重要だと思われるのが、上の引用の太字の部分です。ここに再掲します。

...die sprachen jeden Tag: >>Ach, wenn wir doch ein Kind hätten! << und kriegten immer keins.

二人は毎日のように、「ああ、何としても子どもが欲しい!」とこぼすのですが、ついぞ授かりません。(意訳)
>>Ach, wenn wir doch ein Kind hätten(habenの過去形)! <<

haben|助動詞として
① 〜した、〜してしまう、〜しおわった状態にある
②(受動表現→bokommen)〜して欲しい、〜してもらいたい

引用を再掲した太字の部分。読み始めたばかりですが、ここが、この物語のカルマを生み出している箇所ではないかと考えます。というのは、子どものいない夫婦の自然な願いではありますが、非常に強い感情が込められているからです。

太字の部分。何なら、Wenn wir ein Kind hätten(子どもを持つことができたら)でも成り立つのですが、ここに doch(ドッホ)という単語が入ると、下に記したくらいに、欲する感情が強調されると言えます。

(私たちには子どもがいない。子を授かるのが難しい状態にある。そのことは理解している。しかし例えそうだとしても何が何でも)私たちは子どもが欲しい!!

幸いなことに、お二人の願いは叶えられるようですが、さてどうなるでしょう……。

*参考*
アプリ版『独和大辞典 第2版』(小学館)
池田香代子訳『完訳クラシック グリム童話』(講談社)

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