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グリム童話を読む配信。『三枚の羽根』❹

ドイツ語の復習のために、グリム童話を原文で読んで配信する試みをしています。まずは『三枚の羽根』のお話を8回に分けて読んでいます。その4回目です。

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Brüder Grimm „Kinder - und Hausmärchen“

さて、我らが末っ子、とんまくん!笑。地下への階段を降りて、目の前にした扉の向こうにあったのは、大きく太ったのが1匹。小さいのが無数にいるヒキガエルの巣窟でした。というのが、前回の配信です。詳しくは、ひとつ前の記事にて。

4回目の配信で読んだ部分を引用します。その下にある日本語は拙訳です。

◇ グリム兄弟の童話集Die drei Federn(4/8)

Die junge Kröte holte die Schachtel, und die dicke Kröte machte sie auf und gab dem Dummling einen Teppich draus, so schön und so fein, wie oben auf der Erde keiner gewebt werden konnte. Da dankte er und stieg wieder hinauf.
Die beiden andern hatten aber ihren jüngsten Bruder für so albern gehalten, daß sie glaubten, er würde gar nichts finden und bringen. >>Was sollen wir uns mit dem Suchen große Mühe geben<<, sprachen sie, nahmen dem erstbesten Schäferweib, das ihnen begegnete, die groben Tücher vom Leib und trugen sie dem König heim.

Brüder Grimm „Kinder - und Hausmärchen“

太ったヒキガエルはその大きな箱を開け、一枚の絨毯を取り出しました。それはそれは美しく見事なもので、地上の世界ではなんびとも織ることのできないほどでした。末っ子のとんまは礼を言うと、それを持って地上へ戻りました。
一方、そんな末の弟のことを、何も見つけられないし、何も持って帰れないはずだと見くびっていた二人の兄は、「自分たちは骨を折ってまで探す必要はない」と言い、ちょうど出くわした羊飼いの女から、纏っていた粗末な布を剥ぎ取ると、父である王様の待つ城へそれを持ち帰るのでした。

QULICO|意訳

どうでもよいことですが、末っ子とんまの兄たち。羽根を追って東へ西へ分かれて行った(?)はずなのに、いつのまにやら合流していますね。類は同胞を呼ぶ。

そして、太っちょヒキガエルは、末っ子とんまのドラえもんみたいですが、望みの品をあっさりくれちゃったりして、後から高くつかなければよいけれど。笑。

さて、このヒキガエル。前の記事で確認しましたが、さらに掘り下げます。

die Kröte|女性名詞
        
① ヒキガエル、ガマガエル
        ② ずうずうしい小娘、おてんば、横着なちびっ子(がき)
        ③ はした金、銭|複数形

『独和大辞典 第2版』小学館

Kröte(クローテ)という言葉は、複数形になると、まとまったお金、という意味が出てくるようです。そういえば、3回目の配信で読んだ部分にこのような文章がありました。改めて引用します。

Die Tür tat sich auf, und er sah eine große, dicke Kröte sitzen und rings um sie eine Menge kleiner Kröten.

扉はひとりでに開き、奥のほうに、でっぷりとした大きなヒキガエルがいるのが見えました。そしてその周りには、小さなヒキガエルがたくさん取り囲んでいるのでした。(QULICO 意訳)

『独和大辞典 第2版』小学館

はて。複数形のはずなのに不定冠詞(eine)があるのはなぜか。それは、Menge(メンゲ)のほうに添加されるからみたいです。さすがドイツ語。ややこしい!笑。それでは、この単語の意味をみていきます。

die Menge ① 量 ② 多数の人、群衆 ③ 集合|女性名詞

『独和大辞典 第2版』小学館

ということで、何が言いたいのか、まとめますと、eine Menge Kröten、という表現には、まとまった(量の)お金、というニュアンスがあるようですから……

地下+とんでもなくいるヒキガエル(eine Menge Kröten)= 埋蔵金(?)

『独和大辞典 第2版』小学館

みたいなイメージになるのかもしれない、と考えた次第です。

つまり、地下にうごめくヒキガエルという要素は、物語におどろおどろしい雰囲気を与え、読み手の子どもたちをはらはらさせる効果がある一方で、のび太くんならぬ、うすのろな主人公が上等な絨毯をたやすく手に入れられたことを、矛盾に思わないで受け入れられる素地にもなっているのではないかと思うのです。

もしそうであるなら、ここはやはり、ヒキガエル(die Kröte)なのでしょうね。カエル(der Frosch)ではなく。ただ仮にそうだとしても、例のドイツ語文法的な性の違いの謎解きにはならないけれど(前の記事の疑問をまだ引っぱる・笑)。

*参考*
アプリ版『独和大辞典 第2版』(小学館)
池田香代子訳『完訳クラシック グリム童話』(講談社)

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