ドイツ語の復習のために、グリム童話を原文で読んで配信する試みをしています。まずは『三枚の羽根』のお話を8回に分けて読んでいます。その7回目です。
王位継承者を決める新しい条件として、美しい指輪を探してくることを命じられた三兄弟。言われた通りの指輪を持ち帰ったものの、兄二人の反発により、今度は美しい女性を連れてくるよう言われる末っ子とんま(と兄たち)。さてどうする?というところまでが、前回の配信の内容です。詳しくは、ひとつ前の記事にて。
7回目の配信で読んだ部分を引用します。その下にある日本語は拙訳です。
◇ グリム兄弟の童話集|Die drei Federn(7/8)
上にある引用した原文の太字部分と、そこに対応する拙訳のそれは、今回の配信で読んだ文章のなかで印象的だったところです(苦労した箇所とも言えます。笑)。
というのも、ニンジンが黄色い馬車に変わり、ネズミたちが馬車馬に変わる、という魔法のようなくだりは、ディズニー映画の『シンデレラ』を観て、そこに出てくる馬車が実はかぼちゃであることを知る現代の私たちにとっては、たやすく想像できる描写ですが、19世紀半ばの子ども達はどうだったのかと。
つまり、あのくだりを読んだ(あるいは読み聞かせてもらった)当時の子ども達の脳裏に、映像の恩恵に浴した我々と同じようなイメージが浮かぶよう狙った言い回しになっていると、訳しながら感じたわけです。
そう感じた文章(太字部分)を5つに分け、それぞれ直訳してみます。
❷の描写があることで、小さなヒキガエルが、穴のくり抜かれたニンジンが、6匹のネズミが、それぞれ瞬時に、美しい娘へ、黄色い馬車へ、6頭の馬車馬へと姿を変える様子を、映像の力を借りることなく、子ども達の想像力だけで、彼らの脳内に映し出されるのを願う表現になっていると思いますが、どうでしょうか……。
*参考*
アプリ版『独和大辞典 第2版』(小学館)
池田香代子訳『完訳クラシック グリム童話』(講談社)
◆ stand.fm グリム童話を読んでみるラジオ
◆ Instagram QULICO|寓天堂 guten.doo