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ぐん税ニュースレター -お客様訪問- バックナンバー 2020年1月号

お客様との対談 ~株式会社加藤建材~

この記事は2020年1月に発行されたニュースレターvol.13から「お客様訪問」の記事を再編集したものです。最新情報ではなく、掲載当時の内容に基づいておりますので予めご承知おきください。

事業承継のエピソード

小林浩一:こんにちは。まず皆が興味津々の話題だと思うので、ズバリ聞きます。御社は中小企業では圧倒的に多い親族承継ではなく、従業員である小渕社長が承継することになりました。規模的には珍しい親族外承継ですが、小渕社長が社長に就任するに至った経緯を教えて頂けませんか?
小渕仁社長:加藤会長と私の父親が知り合いでして、私が以前勤めていた設備業の会社をある理由で退社することを加藤会長に話したところ、それなら加藤建材に来ないかと誘われて入社しました。その後、何年か経ち、ある日加藤会長から呼ばれまして、「小渕君、会社継げや。」と打診されました。その当時は、私は現場管理したり、営業をしたり、一応タイトルは取締役工事部長でしたが、もしかしたらという予感もしないこともなかったのですが。
小林:それで、すぐにお引き受けになったのですか。
小渕社長:いいえ。そんな畏れ多くて。工事のことはともかく、経営のことなんか何も勉強してませんから。まずは他に親族等で継げる方がいないかをお聞きしました。しかし、私が社長を継ぐか廃業するかのどちらかだからと言われましてね。そんな、自分の仕事がなくなるのも困るし、従業員や協力業者の方々も沢山いるのに、そんなこと言われてもね。それでは、少し考えさせていただく時間をくださいと言って、それから1~2週間後に再度、加藤会長から呼ばれまして、先日の件はどうなったと聞かれ、お引き受けするつもりで準備しますと回答しました。
小林:それで、すぐに社長交代となったのですか?いろいろ社長業としての準備も時間がかかったのではないでしょうか?
小渕社長:打診いただいたのが夏前で、最初は弊社は9月決算ですので10月から社長交代と言われましたが、手続き的にも難しくそこまでには実現はできませんでした。社長交代の際に、私から加藤会長にお願いしたことは、5年間は一緒に2人で代表をやっていただくことでしたが、意見の食い違いなども全くなく、1年半程度で加藤会長が代表権を自分で外すことになりました。
小林:多くの中小企業が事業承継で問題を抱える中、御社は非常にスムーズに交代することができたのですね。これから事業承継を控える経営者や若い後継者に対して成功のアドバイスを頂けませんか。
小渕社長:事業承継が成功した一番の理由は、加藤会長から私に全て任せていただいたことだと思います。加藤会長からは何も指示みたいなことは言われなかったため、むしろ私の方から加藤会長に相談して、アドバイスを求めるという形になり、円滑なコミュニケーションを取ることができました。事業を譲る側には、譲ると決めたら全てを任せる覚悟と後継者を育てる気持ちがとても重要だと思います。
小林:まさしく、そこは親族承継の場合でも問題となる重要な点ですね。親子でお互いをよく知っていても、世代も経験も教育も違う2人の意見が一致することはありません。事業を譲る側には譲る覚悟がないと、親子で大げんかして、周囲に迷惑をかけたり、会社を潰したりする結果となります。星野リゾートの星野代表も事業承継がうまくいくかどうかを握っているのは「継がせる側の覚悟」だと言っています(弊社ニュースレター平成30年4月号参照)。社長の経験のない人が継ぐのだから、いろいろ見てられないところもあるでしょうが、それを頭ごなしに否定したり、命令したりしては、育てるどころか反発を招くことになり、経営者としてのヤル気を無くしてしまいます。事業承継の失敗例を見ると継がせる側の責任が90%と言ってもいいと思います。10%は継ぐ側の責任ということになりますが。
小渕社長:もう一つ、親族外承継の場合に特に重要なのは財務の整理ですね。私も社長交代を打診された際、負債が自分に来ることを一番心配しました。
小林:それで、社長を交代するということを聞いて周りの社員の反応はどうでしたか。
小渕社長:私より社歴の浅く年齢の若い社員が多かったので、特に反対とかはなかったと思います。私の耳には少なくとも届いてきませんでした。また、職人さんも私が現場でー緒に働いていた方が多かったので支障はなかったです。

小渕仁社長

高い品質を保つ秘訣

小林:御社が良好な経営成績を保っている理由は何だと思いますか。
小渕社長:弊社の売りは品質です。施工した後、お客様から頼んで良かったと言われる仕事をしています。お客様から評判が良ければ、仕入先も弊社を紹介して頂けるし、それが仕入先の売上実績につながります。
小林:そのような高い品質を保つための秘訣を教えてください。
小渕社長:現在、社員数は9名で、配送、事務、営業、現場管理を担っており、施工は40~50人いる協力業者の職人さんが全て担っています。そこで、協力業者の職人さんを管理している社員に法律改正や、新工法などの勉強会に参加してもらい、身に付けた知識をもとに職人さんの教育指導を行っています。職人さんの質が高いことが、弊社の一番の強みです。特に、弊社は耐震天井の技術力に秀でており、施工実績は県内No.1です。すると、ゼネコンさんから工法などを問い合せされた材料メーカーが、弊社に施工を依頼するようゼネコンさんに売り込んでくれます。また、弊社はゼネコンさんの専門工事業者であり、スーパーゼネコンとも取引が有るので、工場や商業用ビル、マンションなどの大型や、特殊の物件を施工する事も有り、それらの経験や実績も強みです。

小渕仁社長(左)と小林浩一

今後の展望

小林:今後、2代目社長として御社をどのような会社にしたいですか。
小渕社長:これまでは家業というかアットホームな会社でしたが、今後は企業体制を整え、業界の中での知名度をさらに高めて、従業員やその子供たちが自慢できるような会社にしたいと願っています。具体的には、社内の組織の整備とまた売上高が常に10億円を超えて、東京商工リサーチ等の業界別リストに毎年掲載されるようになりたいです。そのためには、職人さんを増やして生産力を上げ、管理する社員数も増やす必要があります。
小林:現在、建設業界は人手不足だと聞いておりますが、職人の確保はどのようにお考えですか。
小渕社長:職人のなり手がいないんです。ハローワークでも建設業だというだけで敬遠されてしまうんです。親御さんたちも子供が職人になりたいと言っても、会社になっていないと社会保険もないし、年金も国民年金では将来も不安なので、親もやめろというんですね。だから、うちの職人さんの中からある程度年齢のいった人を正社員として採用し、若手の職人をその社員のもとで養成したいんです。これまで課題であった仕事の波については、現場常駐の管理者という形などにすれば社員として雇用できると考えています。
小林:それは良いお考えですね。どのくらいで達成したいですか。
小渕社長:5年後の達成を目指したいです。そのために、人を育て、品質を上げる仕掛けを今から着実に行っていきたいと考えています。
小林:他に御社独自の取り組みなどはありますか。
小渕社長:加藤会長の代から弊社で言っているのは「必要とされる企業になれ」です。お客様に限らず仕入先を含めた全ての人から必要とされる企業になることを目指しています。また、独自の取り組みとしては、週に1回の会議では進行役を持ち回りとし、進行役の社員が必ず冒頭のフリースピーチを行うことで、急に話を振られたときなどへの対応力を養っています。社内レイアウトも今より機能的に変えていく予定です。
小林:素晴らしいですね。今後は社員数も増えていくと思いますので、ぜひCREDO(クレド)の導入なども検討していただき、御社の組織文化を育てていただきたいです。最後に、日々ご苦労や悩みもあるかと思いますが、小渕社長の解消法を教えてください。
小渕社長:ストレスは解決して取り除くことで発散しています。また、最近では小学生の子供と一緒にゴルフの練習ができるようになりました。子供に対して「面倒を見る」だけではなく「一緒に楽しむ」ことができるようになり、楽しいですね。
子供用のゴルフクラブを買ってあげたらとっても喜んで、毎週練習に連れて行っています。
小林:それなら、ぜひラウンドに連れて行ってあげないとね(笑)。本日はありがとうございました。

社名:株式会社加藤建材
住所:群馬県前橋市青柳町875番地6
業種:内装仕上工事
創業:昭和45年3月
売上高:6億円
社員数:9名
昭和45年3月に加藤孝雄氏が群馬県前橋市で創業し、2代目の社長として当時役員であった小渕仁氏が平成24年に代表取締役に就任した。内装仕上工事で高い技術力と実績を有し、県内外の施設や店舗、マンション等の内装仕上工事を数多く手掛けている。専門工事業者として国内の大手建設会社との取引を続けている。

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