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とあるバンドマンの官能夜話 ~第七夜~

「グルーピー」って死語ですか?

中学1年でクラシックギターを始めた私は、中学2年生の頃には結構弾けるようになっていて、人前で下手なりの演奏をしたりしていました。当時ギターを弾く奴は誰でもモテたのですね、人前に出ることもしゃべることも苦手だったのが、ギターを弾くようになってからは180°方向転換して、生徒会長に立候補して副会長になって全校朝礼の司会進行までするようになっていたのです。そして女子からも沢山告白されましたが、もちろん学校関係ではエッチもお医者さんゴッコも一切しませんでした。

そんな割と真面目な中学時代でしたが、高校に入ると同時にそれまで貯めていたお年玉とかお小遣いをはたいてグレコのエレキギターと、ヤマハの100Wの自宅で使うにはデカ過ぎるギターアンプを買ってバンド活動に邁進します。もちろんその頃はバンドと言えばブリティッシュハードロック全盛の時代で、元野球部ピッチャーのパープルフリークな奴がボーカルでしたので、私のバンドは当然のようにパープルのコピーバンドでした。そして高校1年の夏休みには市民会館で近隣の高校のバンドが合同で開催していたライブに出演、これが私の音楽活動の第一歩となるのでした。

皆さん「グルーピー」と言う言葉をご存じでしょうか?バンドのメンバーと関係を持ちたがる女の子を指してそう言うのですが、高校1年の下手くそバンドにも何人かのグルーピーの女の子がつきました。私についた女の子は隣の市の子だったので、近隣の街で音楽のイベントがある時位しか逢うことはなく、普段はほとんど真面目に文通していました。その子は文学少女で、私はギターばっかり弾いて本も読まないアホな高校生だったので、手紙の中に書かれている哲学単語の意味がわからない事が多々ありましたので、文通と言ってもほとんど彼女からの一方通行でした。

同じ学内の女の子からも告白されたりしました。狭い地方都市のことですが、市内の他の高校にも知られるほどの可愛い子でした。駅前の喫茶店でその子と話していたと言うだけで、他の高校の生徒にも知れ渡っていたようで、バンドの繋がりのある他校生から「お前、あの子と付き合ってるのか!」って家に電話が来るほどの市内のアイドル的存在の女の子でした。

自分自身ではそんなグルーピーな女の子達とは心の中では少し距離を置いていました。それは私自身の事が好きなんじゃなくて「バンドをやっているミュージシャン」と付き合いたがっていると言うのが肌で感じていたからかもしれません。それでも健康な男子でしたので、ギター以外では実は頭の中は女の子のことばかりでした。

そんな「モテ期」の続いている高校生活でしたが、彼女と言える特定の相手と継続して付き合ったのは一人だけでした。実は同じクラスの女の子で、バトン部の女の子でしたが、彼女はクィーンのファンでした。入学してすぐに、私が下敷きにジミヘンとかリッチーブラックモアの写真を挟んでいるのを見て、声を掛けてきたのがきっかけでつき合い始めました。

この彼女が私の初体験の相手となるのですが、結局1年程のつき合いで彼女とは別れてしましました。別れた原因は私の方にあって、モテ期なのを良いことに他の複数の女の子と仲良くなっていたことで、私の方から距離を置くようになって行ったのです。しかし彼女は後ほど、そんな酷い男に相応の大逆転の仕返しをするのです。

高校2年生の頃にはフュージョンブーム(当時はクロスオーバーと言った)がやってきます。ジェフベックも「Blow by Blow」や「Wired」と言ったファンク系のサウンドに方向転換して、国内でもプリズムや高中正義などの16ビートのインストものが出てきた時期で、リーリトナー、ラリーカールトンと言うフュージョンギターのスターが登場しました。私を含め周りのギターキッズ達もこぞってフュージョンやジャズに方向転換した時代です。

私もディストーションから、コンプレッサーとコーラスにエフェクターを変えて、プリズムのコピーバンドを始めます。メンバーは市内のバンド仲間の中でも腕の良い奴ばかりを集めて活動を開始しました。私以外にももう一人、1つ年下のギターが加入しました。そいつはバウワウのコピーバンドからフュージョンに転身した奴で、私と同じく早弾きを得意とするテクニシャンでした。

いくつかのイベントのステージをこなしていくうちに、ドラムは高校を退学してプロのミュージシャンを目指すようになり、プロのミュージシャンのボウヤになりました。そいつを通じて私も色々なプロを目指すミュージシャンとの交流をするようになったり、プロの仕事現場にも出入りするようになりますが、バンドはまだ続いていて、いつもドラムの奴の家を練習場所にして夜な夜な集まっていました。

そんな若者達の集まりの中で、練習以外にもおきまりの初体験の赤裸々な泥んこリアリズム満載の体験談なども披露したりするのですが、私が昔付き合っていた女の子の話をした日に、後からもう一人のギターの奴から電話が掛かってきました。

そいつが興奮して言うには「今度、昔の彼女の話を皆の前ですると、ぶっ殺すぞ!」と言うような話だったのですが、その事で昔ふった彼女が、私が同じバンドで活動しているもう一人のギタリストと付き合うようになっていたと言うことがわかりました。たぶん彼女の痛い仕返し行為だったのだと思いますが、もしかしたら彼女は根っからのグルーピーだったのかもしれません。

第七夜 完

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