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【詩】それは



いつも側にあった


欠片を失った


無くなってから


初めてそれの大切さを知る




無くならなければわからないのなら


最初から無ければ良かったのにと


現実を否定する様に


私は無慈悲な言葉を口にする




それは生まれた時から


いつもそばにあった


楽しかった時も


悲しかった時も



すぐ隣に




何の拍子も無く


触れてみた事もあった



ただそこにあるだけのそれは


無機質な質感と


微動だにしない姿で


まるで石膏像の様だった




でも少し違う




色は灰色っぽくて


形状も日によって変わる



生き物ではないが


動く粘土みたいで



粒子が細かいというかほぼ無い


液体の様な流動性を持ちながら


石の様にも固いそれは




この世の物とは違っていた




それがいつもの場所から消えていた


明日には戻るだろうと


何日か経過した時



それはもうここには戻らない



という事を私は理解し始める




確か最後に見た日は



完全な球状で



近づいてよく見ると



表面は微かに細かく波打っていた





あまり気にせず見ていたが



長く鋭く尖った剣の様な姿や



立方体に幾つかの穴がある形や



この部屋の天井まで伸びる糸の様な時もあった




日により変わるので


それは当たり前の事だった


それの存在はある意味日常となっていた






いよいよ探しに行こうと


意識した時


後ろで何かが光った




それがあったのだ




形は丁度扉サイズで



黒い板の様な形をしていて



回り込んで見てもただの板だった



いつかの映画で見た事がある様な姿




触れて見るとそこだけ色が変わる


カラフルに色が変化していく




微妙に振動しているのもわかる



少しばかり温かい気もした




文字の様な物が浮かび始める



今までに見たことの無い文字



でも内容は理解が出来た





あ な た よ
私 は旅 をした
あな たの 姿 で
少し ばか り考え た
あなた の悩み がわか った
わた しはも うどこにも 行かな い
あ なたの そば が 私の 居場 所 だ
どう か 許し て 欲 しい
あ な た だ から
そう 想 う





私がいいよと一言言うと




それはゆっくりと



小さく丸くなっていった



手のひらサイズになると



私の肩に乗り



見たことの無い鳥の姿になった





あなたよ どこまでも 生きて





そう言うと飛び立ち



細かく砕けて行きながら



消える様にいつもの場所に戻った






私は静かに微笑んでいた




また明日はどんな風に




形を変えて楽しませてくれるのか




私はそれに少し触れてから




今日はおやすみと言った


























shape changes depending on emotion










皆さまこんにちは、GOTOと申します。
いつも、読んで頂きありがとうございます。

SFっぽくて意味が分かりづらいと思ったので、
今回は、解説をしようと思います。



今回のタイトルにもなっている、
それとは、情の事です。

ふと、粘土が自由に動いて感情を示したら面白いだろうなと思い書いた作品です。

心の中にある感情と対話出来たら、私という何かは変化するのだろうか。更なる感情が惹き起こされるのだろうか。そんな事も期待しています。

内容は少し未来の話です。未来といっても、想像上の架空な明日のお話。
日々当たり前の様にある感情を具現化した装置と共に生きた人間の物語になっています。

日に日に形状が変化するのは、主人公が感情を抱いているから、喜怒哀楽でそれの形が変わっていたのです。
生まれた時から説明も無しにあった装置なので、それがこの物語の主人公にはわからなかった様です。
この装置が離れた時は感情を失った時、戻った時は感情に意識した時を表しています。
戻って来た感情装置が言葉を有したのは、主人公の心を思っての事なのです。

感情装置が感情を得ることはありません。決められたシステムに沿って動いています。
主人公はその事も知らないまま。だとしても、これから先もそれと共に生きて行く事になったというお話でした。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

また、私の作品を読んで頂けたら嬉しいです。

気になる作品があったら読みに行きますので
その時はよろしくお願いします。

























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