グロースハッカーがデザイン思考に過度な期待をしてはいけない理由
「デザイン思考」や「Design thinking(デザインシンキング)」という言葉が一時期トレンドになったことを覚えているでしょうか。もともと私自身が元デザイナーということもあり、デザイン思考には馴染みがあったのですが、一時期とんでもない期待値でデザイン思考が全てを変える!というような時代もありました。懐かしいですね。
あくまで、デザイン思考を否定する話ではありませんが過度には期待せず使い方を知って活用して欲しいと思っています。もちろん、私自身デザイン思考を取り入れていたり、グロースハッカーとして活用する部分もありますので、正しいデザイン思考の使い方を本日は綴りたいと思います。
デザイン思考=Design Thinking
デザイン思考とはデザインに必要な思考方法と手法を利用して、ビジネス上の問題を解決するためのアプローチです。もっと分かりやすくいうと、順序立てたプロセスに沿って何かを製作するプロセスと言っても良いでしょう。
デザインとつくので、クリエーティブやビジュアライズを行う表層的な表現方法に思えますが、デザイン思考のそれとは異なります。
しかし、デザインを行う上でのプロセスを用いたもので
1. Empathize:ユーザーを理解し、共感する
2. Define:アプローチすべき問題を明確にし定義する
3. Ideate:問題を解決するなるべく多くのアイディアを出す
4. Prototype:なるべく速くプロトタイプをつくる
5. Test:プロトをもとにユーザーにテストを行う
の思考プロセスをデザイン思考と定義しています。
実は、デザイン思考の起源は古くからあり、近年有名になったのは、デザインファームであるIDEOの創始者、ティム・ブラウンが改めて世に定評したことにより再燃したと言われています。
デザイン思考では革新的な課題の解決策にたどり着くために、デザイナーが使うさまざまなツールを活用する
https://www.ideou.com/pages/design-thinking
デザイン思考の落とし穴
先程もお伝えしましたが、デザイン思考の5つのステップを行えばデザイン思考ができてしまうと思っていることです。正しいのですが、実は正しくなくて…そんな微妙な点を独断と偏見の元お伝えします。
1.デザイナーが設計する上での思考プロセスは正しい
2. プロセスの比重やサイクル、行き来などは遥かに高速で順当ではない
3. デザイナーのような論理的思考(計算型)である
4. クリエイターのような感性だけでは難しい
1.デザイナーが設計する上での思考プロセスは正しい
元デザイナーの観点からプロセスを区分すると正しいと思います。もっと言うとある目的を達成するために、デザインという表現で達成に導きます。その際に、完成イメージを持ち、その状態に至るために逆算してプロセスを考えます。そのプロセスではデザイン思考のステップが当てはまります。
2. プロセスの比重やサイクル、行き来などは遥かに高速で順当ではない
実際この5つのプロセスでのかけるべき比重は均等配分ではありません。さらに、高速回転させる度に比重は変動しますし、前後に行き来することもあります。それは、目的を達成するためと、完成の精度を高めるために思考と行動を高速化させるので、この一巡でできる、や、このサイクルを回せばよいということではありません。
3. デザイナーのような論理的思考(計算型)である
デザイナーは感性で作っているように思えますが、実は理系が多く計算型が多いのです。デザイナーとアーティストは異なり、デザイナーは目的を伝えるために、効率的・合理的に拡散する必要があるため、市場調査や効果検証などを繰り返します。そのような計算や分析などを活用する思考は似ています。
4. クリエイターのような感性だけでは難しい
デザイナーは世に広めるに対し、クリエイターやアーティスト(芸術家)は、自身の世界に引き込むを指します。まさに、感性な世界です。もちろんクリエイターでもできるのでしょうけど、直感的な感性のもと実施しているため、それこそ真似ることは不可能でしょう。
これらからも分かるように、デザイン思考のワークショップや勉強会などがありますが、数日でこの思考を得ようとするのはまず無理だと思います。私自身デザイン思考を他のビジネスで転換できているのも、デザイナーを5年ほど実施しており、その中で圧倒的なアウトプット量を出したからこそ、アウトプットから逆算し、必要な内容やプロセスを落とし込むことができる思考が理解できているのです。
デザイン思考が失敗するポイント
デザイン思考が失敗するであろうポイントはあらかた想定できます。デザイン思考の5つのポイントから以下の3ポイントになります。
1. Empathize:ユーザーを理解し、共感する
4. Prototype:なるべく速くプロトタイプをつくる
5. Test:プロトをもとにユーザーにテストを行う
1. Empathize:ユーザーを理解し、共感する
よく人間中心設計からユーザーを知ろうとデザイン思考では伝えていますが、半分正しいです。もちろん、ユーザー(ターゲット)を知ることは重要です。ただ、ユーザーが答えを持っているわけではありません。どちらかといえば、マーケッターが持つ市場ニーズとサービスのコアを行き来させ、ユーザーを形づくる、ということが正しいと思います。
4. Prototype:なるべく速くプロトタイプをつくる
これもデザイナーなら「そうそう!」となるのですが、1回で正解を掴むことはできません。そのため、ある程度解決させるための打ち手を決めれば、作り込まずプロトデザインを複数作ります。私も昔1つのロゴを作る際に50~100個作ったものです。ここで大事なことはワークショップや付箋、制作量でやった気を得ることではなく、次のテストへの設計を行うことです。この先でテストを行うのですが、ただ感性で作ってしまったら、なぜそれが良かったのかを検証できません。選ばれた理由は、テキストなのか、ビジュアライズなのか、構図なのか、それを検証できる設計を作るべきです。
5. Test:プロトをもとにユーザーにテストを行う
ここも社内で決めずに、ユーザーに体験いただき選んでもらうが効率的です。これにより、求めるユーザーの傾向値が掴むことができるでしょうし、統計的有意差が得られば数的根拠をもって判断もできます。大事なことは、
・対照実験により正しくテストを行う
・なぜそれが求められたのか検証すること
につきます。得られた結果をナレッジとして蓄積し、さらなるテストへ進める事が重要です。
グロースハッカーがデザイン思考を取り入れている訳
簡単に言うと、グロースハッカーの目的達成のためのプロセスが酷似していることがあげられます。詳しいグロースハッカーの内容は以下に綴っています。
さらに理由はもう1つあり、0→1(創出)、1→100(改善)に最適であるからです。いろいろ諸注意や誤解、実際のデザイン思考からそもそも活用難度は高いものの、利用範囲は広く、正しく使えば有力なフレームワークだと考えております。
0→1(創出)
デザインの表現から意外かもしれませんが、0→1のほうが難易度は高いです。が、正しく使えれば生み出すことにも応用ができます。その場合では、デザイン思考の5つのプロセスを分解し改変する必要があるため、難しいですが、新規事業の設計や、サービスデザイン、プロダクトデザインなど、生み出すことにも活用ができます。
1→100(改善)
そもそもデザイン思考は、PDCA前提なため改善に向いています。ユーザーに目を向け、マーケティング視点での顧客とサービスを繋ぎ、その線上の課題を洗い出し解決を目指すという方法は、事業を飛躍させるには有効だと思います。
この話の結びとして
いつしか神格化されたデザインシンキングですが、思考プロセスがあるべき論に近く、その上、取得難易度が低い(実際は高いが表層的な思考ではなく、プロセスは数日で取得できる)ため、期待値がおかしなことになっていました。
確かにデザイン思考は、使い方によっては優良なフレームワークだと思います。しかし、期待値を見直さなければ失敗を招くでしょう。また、その実態として、この日本市場でデザイン思考を活用した優良な事例がまったくありません。(間違っていたり、ズレていたり、そうじゃなかったり・・・)
デザイン思考から革新的なものが生まれることはないが、プロダクトデザイン以外にも、プロジェクト進行や、組織課題を考える時など、あらゆる場面でデザイン思考が活用できます。意外に、デザイン思考を得るには、グロースハッカーになることが近道かもしれません。面白かったり、興味を持った方はスキを!良ければフォローしていただけると嬉しいです。
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