「昼寝」のできる仕事に就く
常軌を逸する「睡眠魔」である。
子供の頃から親にも呆れられていた。
正直に告白すると、大して儲かりもしないのに、この仕事をやめられないのは、
「睡眠時間を自分でコントロール」できるからだ。
「不規則な仕事で大変ですね。」なんて言われるが、大きな誤解だ。
BAR の経営など、生活の時間帯が普通の人から若干ずれるだけで、極めて「規則的」である。(仕事が終わった後、「付き合い」と称してお客さんと飲みに行ったりする輩は別だが)
突然上司から仕事を振られて残業とかもないし、大事なプレゼン前に徹夜で作業とかもない。
基本的に「飲食店」の仕事はどんなに忙しくても「就業時間内」で完了する。
(もちろん機器のトラブルなど急な雑務が発生することはあるが。)
ここでひとつ、僕の1日を詳解。
僕が眠るのは、仕事が終わって食事をして少し胃を休めて、だいたい午前2時半くらい。朝5〜6時に起きて家事などをやった後もう一度仮眠。9時半に正式に起床。朝食をとって11時前に出勤。お店で、仕込み・掃除・伝票整理・メニュー差し替え・SNS下書きなどをして、1日の前半の作業終了。
ここで開店前に一旦寝る。そう大切な「昼寝」だ。
時間にすると20分ほどだが、これが1日で最も重要、かつ不可欠な時間である。
「昼寝が?」と思われるかもしれないが、その後夜の12時まで店に立つ身としては、この20分はとても重要だ。
「そんな贅沢な」「何を甘えたことを」と言われるかもしれないが、僕に言わせれば逆である。
しっかりと良い仕事をするために「昼寝」が重要なのだ。
・中国では、昼は1日の「気」が切り替わる時間とされていて、人間は一旦そこで「眠る」ことが重要とされているそうだ。日本から進出した企業が、現地中国人労働者が皆昼に一斉に「眠る」という行為を要求してくるのに面食らったと聞いたことがある。
・スペインでは「昼寝」の時間、いわゆる「シエスタ」の習慣がなくなって、出生率が下がったと聞いたことがある。
・ある格闘家は、大きな試合に負けた理由を尋ねられて、「試合前の数週間、インタヴューなどに答えていたら、「昼寝」の時間が奪われて、満足な練習が出来なかった。」と答えていた。
・ある著名作家は、「もし「昼寝」がなかったら、僕の作品は今とは随分雰囲気の違うものになっていただろう。」と書いていた。
・医者は大事な手術の前には「仮眠」を取るそうだし、国際線のパイロットも交代での「仮眠」が義務付けられているとも聞く。
・「NASA」では随分以前から「昼寝」に関する本格的な研究がされているそうだ。
人間、そうタフではない。
もし仮に、昼食の後1時間、誰にも邪魔されず横になって眠る時間を貰える保証があるのなら、朝の目覚めもだいぶ違ってくるだろうと思う。
「昼寝」のできる安心感。
これはお金に代え難いものがある。
在宅勤務になって「昼寝」の有用性に気付いた人も多いと思う。
こんな時代になって、これから自分もどんな仕事に就くかわからない。
でも、「昼寝」が出来ない仕事にはおそらくもう就かないし、就けないと思う。
否、「昼寝」が出来ない仕事はおそらくもう誰も就かない時代になると思う。
そんなことを考えながら、ウトウトと眠りに入った。
The Dream / Swum
Chillhop Records
2019
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)
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