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コロナウイルス連作短編

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2021年6月の記事一覧

コロナウイルス連作短編その95「パララックス効果」

 松本理世と松本香能は姉と弟という関係性であるが、恋人関係でもある。手を繋ぐし、キスもす…

コロナウイルス連作短編その94「クソみたいなこと言ってやがる」

 藤棚真嗣は自閉症スペクトラム障害を患っており、これが自分の生きづらさと苦痛の源であると…

コロナウイルス連作短編その93「愛の記憶に」

 残酷な音が鳴る。  首藤竹子が持っている皿を落として、それを割ったのだ。 「ごめんなさい…

コロナウイルス連作短編その92「俺も結構、黒人」

 吉武瑛士はよく"黒人のハーフ"と間違われるが、ただ肌の色が濃いだけだ。もしかするとアフリ…

コロナウイルス連作短編その91「ホテル・ポドゴリツァ」

 クララ・フジノ・コスタの傍らで、ダニェラ・カストラトヴィチはワインを飲む。肌理の粗い、…

コロナウイルス連作短編その90「26分」

 長谷川勤は病院の待合室にいる。犇めきあう加齢臭、腐敗したような固さに包まれた椅子、潔癖…

コロナウイルス連作短編その89「1つの時代、肉体」

 志路摩誠は恋人である常川弓のヴァギナから自身のペニスを引き抜く。この行動で"もう絶頂に至りそうだ"という状況を示すが、これは嘘だ。部屋は常しえに昏い。誠はペニスからゴムを外し、それを弓のヴァギナに挿入する。亀頭には包皮が被ったままだ。先端の皮の窄みには、無色透明の弱アルカリ性である粘液が溜まっている。しばらくそのまま腰を動かした。ゴムが装着されたペニスと肉が剥き出しになったペニス、女性はヴァギナによってそれを判別できるのか、誠には分からない。部屋は昏いゆえ、他の感覚が鋭敏に

コロナウイルス連作短編その88「母の日」

 深夜、白井コウは一心不乱に車を走らせる。遺骨さながら乾き切った彼女の両腕はハンドルと既…

コロナウイルス連作短編その87「チェコの肉の塊」

 夕食にスパゲティを食べている際、小室安渡は突然皿に頭を突っ込んでそのまま動かなくなる。…