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イスラエル・ハマス戦争の歴史的背景と経済への影響

こんにちは、やーちです。悲しいことに、今、イスラエル、パレスチナが大変なことになってますね… NYでもパレスチナとイスラエル支持者の両側が大規模な抗議デモが行われ、遠く離れたニューヨークにも緊張をもたらしています。

私は、気になった経済やビジネスニュースをYouTubeに投稿していますが、パレスチナ問題は本当に複雑で取り上げようか、悩みました… 私が働いている会社もイスラエルのスタートアップと提携していて、実は今月末にイスラエルの首都、テルアビブへ出張する予定だったので、もしかしたら、あの現場にいたかもしれないと思うとやっぱり人ごとだとは思えませんでした。できる限り、公平な立場で今回のイスラエル・ハマス戦争の歴史的背景とアメリカ、イラン、サウジアラビアとかの国がどう絡んでくるのか、そして国際経済と金融市場への影響についてを動画にしました。

YouTubeに投稿した動画がこちらで、要約したものを下にまとめました。

はじめに

先週の土曜日、10月7日の未明、パレスチナ・ガザ地区を支配する武装組織ハマスがイスラエルに潜入し、市民を殺害、人質を取って、大規模な襲撃を開始した。同時刻のイスラエルの西南側に位置するガザ地区からはイスラエルに向けて5000発のロケット弾を発射。ユダヤ教の祝日を祝う予定だったイスラエルにとってはあまりにも突然で過去50年で最大の攻撃となった。

イスラエル側も「この戦いは長い、難しい戦争になるが、敵にはそれ以上の代償を払わせる」とし、反撃を始めた。日が経つにつれ、両サイドから死傷者が増え、どんどん新しいショッキングな情報や動画が出てきている。

パレスチナ問題のおさらい

パレスチナ問題は民族も宗教も違うユダヤ教のユダヤ人とイスラム教のアラブ人(パレスチナ人)がパレスチナの地をめぐって争っている紛争で、世界で最も解決が難しい紛争といわれる。事の発端は2000年も前まで遡る。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教はどれも実は親戚のようなもので、聖地がどれもパレスチナの中心都市、エルサレム。その大昔はユダヤ人もアラブ人も一緒に暮らしていたが、ユダヤ人はローマ帝国によって追い出され、ヨーロッパとかで差別や迫害を受けながら、コミュニティを作って暮らした。一方のパレスチナの地ではアラブ人が暮らし続けた。

そうした中、ユダヤ人に念願の国を持つチャンスが訪れます。第一次世界大戦でユダヤ人にお金を出させようとしたイギリスはユダヤ人にパレスチナでユダヤ人国家作っていいよと吹き込み、ずっとパレスチナの地に戻りたかったユダヤ人は大喜び、1948年にイスラエルを建国します。しかしその裏で、イギリスはアラブ人にも当時パレスチナを支配していたオスマン帝国を倒せば、アラブ人国家を建設するのを約束した。せこいことにイギリスはその裏の裏で同盟国のフランスに戦争が終わったら、領土を半分こする約束をしていました。

当然ユダヤ人、アラブ人の両方とも国を保障されたもんだから、どっちも譲らず、その当時のイギリスの三枚舌外交が今日の悲劇につながっています。イスラエルの建国後、4度におよぶ中東戦争はどれもアメリカのサポートを受けたイスラエルの勝利となり、故郷を追われたパレスチナ人は、今、ヨルダン川西岸とガザ地区というところに住んでいます。国にはなれないまま、イスラエルの軍事支配下に置かれ、多くの人が難民として貧困を極めた生活を強いられています。

パレスチナ人の住処がどんどん小さくなっているのがわかります

ハマスとイランの関係

今回、襲撃に出た武装組織ハマスはイスラエルの南西側に位置するガザ地区を支配しています。ハマスはイスラエルの崩壊とイスラム国家の樹立を目標に今までイスラエルと何回もやり合ってきました。2007年からは治安対策を理由にイスラエルはガザ地区を封鎖そして監視しています。この種子島ほどの大きさのところに約230万人の人が暮らしていますが、ガザ地区から出ることはできなく、陸空海に関わらず、モノの出入れとかも全部イスラエルが管理しています。ガザ地区が「天井のない監獄」と表現されるのはそのためです。

襲撃を受けたイスラエルは報復攻撃としてガザ地区の電気と水、そして食糧の出入れも全て止めました。こうしたことから、すでに貧困を極めていた民間人に対する仕打ちは非人道的だという非難も上がっています。

今回ハマスはイスラエルの世界一ともいわれる防空システム、アイアンドームを破るほどのロケット弾を発射した。しかし、なぜガザ地区っていう世界でもトップクラスに貧しい地域から5000発ものロケット弾を発射することができたのでしょうか?彼らはどうやってあれだけのロケット弾を作れたのか?その裏には、イランの存在があって、イランはハマスに毎年1億ドル以上の資金、武器、そして訓練を提供しています。

イスラエルとアメリカの「身内」関係

一方のイスラエルはというとアメリカという強力な後ろ盾を持っています。アメリカは中東戦争以降、イスラエルに巨額な軍事援助をしてきました。それもそのはず、アメリカには影響力のあるユダヤ系の人がたくさんいます。

20世紀に入って、アメリカには、ヨーロッパで迫害されていたたくさんのユダヤ人が移り住んできました。働き者のユダヤ人はアメリカでとことん活躍し、さまざまなビジネスを切り拓くことができた。政界、金融、医学とかさまざまなところに大きな影響力を持ち、私たちが知っている多くの著名人や大富豪もユダヤ系だったりします。

しかも、なるべくイスラエルの利益を反映するように働きかけるユダヤ系の政治団体もあり、こうした背景もあって、アメリカは今回も直ちにバイデン大統領がイスラエルへの支援を加速させていくと表明しました。

アメリカが取り持つイスラエルとサウジアラビアの仲

エジプトとヨルダンの2つの国はイスラエルと国交を持っていましたが、それ以外のアラブ諸国はイスラエルは認めないというスタンスでした。しかし、2018年、トランプ大統領がアメリカ大使館を聖地のエルサレムに移転したりととことんイスラエル寄りの立場を取る中、イスラエルとUAE=アラブ首長国連邦を仲直りさせました。当然、「アラブの大義」の鉄則が崩れたとパレスチナ人は怒りました。しかも、アメリカはもう一つの巨大な産油国、サウジアラビアとの仲も取り持とうとしました。

イスラエルとサウジアラビアの両国はどっちも中東におけるアメリカの同盟国で、イランという共通の敵がいます。だから、アメリカはイスラエルとサウジアラビアを和解させることで、協力してイランに対抗し、アメリカのために働くことができると考えました。

しかも、アメリカとそのお友達が中東でより大きな影響力を持てば、ますます中東で伸びてきている中国の影響力を押し除けることができるという利点もありました。

イスラエルにとっても、地図を見ればわかるようにイスラエルは歴史的な理由から四方を敵に囲まれています。サウジアラビアとの関係を正常化することができれば、巨大な敵が一つ減ることになります。

サウジアラビアもサウジアラビアで感情論を捨て、優れたハイテク産業を抱えたイスラエルと手を組むことでwin-winの関係になることができたのです。しかもサウジアラビアはお金は有り余るほどあるが、強い軍隊を持っていなかったので、アメリカサイドに入ることでイランとかの敵対国も手を出しにくくなるという利点がありました。イランとハマスとしてはこの仲直り劇をなんとしても阻止したいですよね。ハマスの襲撃はその狙いもあると言われています。

世界経済と金融市場への影響

終戦から50年の節目、そしてユダヤ教の祝日という日に襲撃されたイスラエルは倍返しに出ます。すでにガザ地区へ総攻撃に向かうとしていますが、すでにボロボロなところを攻めても何になるのでしょうか?大物は裏に隠れているのかもしれません。そして、イスラエルの他の敵対国がこの機会で出てくるのか、中東を巻き込んだ中東戦争をもう一回繰り返すのか、

こうした予期せぬ地政学リスクが起こった場合は金融システムへの影響はないか、売りたいときに売れない流動性への影響はないか、そして他の国や地域への影響はないかを確認します。いずれもなければ市場への影響は小さく済みますが、今回はアメリカや他の中東諸国がどう絡んでくるのかが焦点になります。

いずれにせよ、中東で戦争が起こっているということでまずエネルギー高騰のリスクが第一に考えられますよね。現に月曜日、原油価格がその前の週と比べて5%高騰しました。経済英語で「Flight-to-Safety」という言葉がありますが、こういう市場にとって不安定な要素が加わった時には、まず反射的に資金をリスクの少ない金融商品に移すという動きが出ます。通常、株が売られ、逆に金やドルのような比較的に安全な資産が買われます。その後で、入ってくる情報が増えるにつれ、もっと冷静に状況を判断した市場が修正していきます。今回も初めは株が売られ金が買われたりしたが、投資家たちはこの戦争が他の地域を巻き込んだ大きな戦争に発展するリスクは少ないだろうと判断し、金融市場への影響はあまりありませんでした。

でも、そんなことは100%言い切れませんよね。イランがハマスに協力していたという報道もありますが、最悪のシナリオで、アメリカがイランに追加の経済制裁を下せば、原油供給に対する不安が広がります。原油価格が高騰すれば、世界中の中央銀行が抑えようとしているインフレも上がります。そうすれば、またアメリカの中央銀行とかが利上げに出るかも知れません。

中東では、ハマスと距離を置く国もあるし、中東を巻き込んだ戦争にはならないだろうと、今のところ、市場も比較的冷静に状況を見守っている感じです。現に11日の水曜日にはほとんどの投資家の焦点はアメリカの中央銀行、FRBの政策がどうなるかでした。

ということで、今のところ、金融市場に大きな動きがなくても犠牲者の数が毎日増えています。本当に一刻も早く解決策が見つかることを願っています。

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