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花の色は

2週間ぶりの外は、動くと汗ばむくらい蒸し暑かったが、太陽の光はいくぶん力を弱めていた。真夏に盛大に咲いていたハルシャギクやオシロイバナは、もう疲れ切ってぐったり萎れており、夏は去ったのだなということがわかる。

バスに乗り、いつものように窓の外を見ていると、背の高いオレンジ色の花が見えた。
ノウゼンカズラである。
暑い盛りに咲く華やかなオレンジ、けれど毒々しいオレンジ色ではなく、温かみと優しさのある明るい雰囲気のオレンジだ。ヘルシーだと感じるのはところどころ黄色を含んでいるせいかもしれない。比較的大きめの花をユラユラとさせている。平安時代には渡来していたらしいから、清少納言や紫式部も見ていたかもしれないが、日本固有種ではないせいか古風な感じはしない。そして、こんな時期にまだ咲いているのがいじらしい。

この花に特別な思い出はないものの、私はこの花が好きだ。かつては我が家な庭にもあって、すみっこながら存在感のある花だった。
その頃は、夏はこんなに暑くはなく、家族も揃っていて、仕事や友達関係や、いろいろそれなりにあったものの、明日に対する不安のない暮らしをしていた。
それからだいぶ私や私を取り巻く世界は変わってしまったのだと、通り過ぎる景色を見ながら思った。

モールのコスメフロアには、もう金木犀のグッズコーナーが出来ていた。ハンドケア・ボディケア・ルームフレグランス類である。私は昭和の人間なので金木犀の香りを再現したそれらのグッズにはある特定のイメージがあるが、最近の若い人たちには人気の香りらしい。
その前を通りがかると、人工的ではあるが秋の一時を思い起こさせる。金木犀は華やかだが、秋の涼しさと寂しさを感じさせる香りだ。濃い緑の中にオレンジの小さい花の房がかわいらしい。
9月に金木犀は少し早いのではないかと思ったが、しかしもうそんな季節なのだ。

花の色は 移りにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに

小野小町


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