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柿と母


今年は猛暑だったせいかフルーツの味がイマイチのような気がする。もっともそれなりの金額を出せば美味しいものは買えるのだろうが、我が家はそんなに裕福なわけではない。

母は柿が好きだ。
なんでも「缶詰などがなくその季節にしか出ないから」らしい。そんな食材はごまんとあるから、きっと理由はあとづけで、単に柿が好きなのだろう。
調べてみると、柿の缶詰はあるにはある。ただ、この辺りにそんな洒落たものは売っていないし、まして母が若かりし時代に手に入るような代物ではなかっただろう。

母は歯が悪い。
治療するなり、入れ歯を作るなりすればQOLが上がるのはわかっているのに行けないのだ。
我が家は1週間のうちほぼ毎日誰かの訪問がある。その合間を縫って母は家事をし、最近では疲労が激しく、休んでいることもある。
私を置いたまま、どのくらい待つかわからないクリニックに行くことは難しく、その間ヘルパーさんを頼むにしても、簡単なことではない。


そんなわけで、母が食べられるものはずいぶんと限られてきており、これから益々食べられない食材が増えていくことだろう。

柿もまたその一つかもしれない。
今のところ、熟した柔らかい柿なら食べられるものの、歯の状態からいうと柔らかければいいというわけではないらしい。


そもそも食べることにあまり貪欲でない母は、飲食店に行っても、スーパーで出来合いのものを買うにしても選ぶのが面倒だという。
せめて残りの人生、好きなものを食べたらと思うのだが、好きなものより食べられるものをなんとか食べている。

母はあといくつ柿を食べることができるだろう。

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