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高級魚サンマの味

サンマはすっかり「高級魚」になってしまった。
スーパーにあることはあるが冷凍だった。以前は、秋になると、サンマ寿司やサンマフライなども店頭に並んでいたのに、気がつけば口に入ることがなくなった。

某飲食店でサンマ定食を販売することを知ってから、度々webサイトをチェックしていた。販売は開始されたものの、入荷量が非常に少ないとの情報に更新されていた。
諦めてはいたが、念のため店頭に行ってみると、「サンマあります」の文字。
ヘルパーさん、母、私は迷わずその店に入った。

その日、その店舗では15尾しか入荷していないという。
そのうちの1尾を母、もう1尾を私が食べた。
入店してから約1時間後、サンマは売り切れた。

細い。その細さに比例せずお値段は”太め”だ。
正直物足りず、サンマを食べたという既成事実だけが残ったが、食べられないと思っていたものが食べられたというだけで幸運なのだ。

ただでさえ店頭に並ばないサンマだが、もし手に入ったとしても高齢の母と障害者の私の暮らしの中で、魚を焼くということは難しくなっていた。
週のうち、一体何食母の手料理が出てくるだろうか。
ほとんどがレトルトや買ってきたお惣菜だ。
歳をとることでいろいろなことが出来なくなるというのはわかっていても、料理ができなくなってくるということはあまり想像ができなかった。

亡くなった祖母と母の様子を見ていると、年々食べることに対しての貪欲さが失われていくのがよくわかる。
毎日毎食同じもので良いと言ってみたり、どこどこの何々が食べたいと言ってみたり、母は完全に食への欲望が失われる前の混乱期にあるようだ。

私たちが注文したサンマ定食には、ご飯とみそ汁がつく。
物足りなかった私たちはちょっとしたスイーツを追加し、店を出てから、「細かったね」と「食べられて良かったね」を繰り返した。

来年は一緒に食べることができるだろうか。

ごちそうさまでした。
おいしかった。

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