造作的無造作(短編小説)
学生時代、好きな女の子にどんな髪型が好き? と訊いたらこういった答えが返ってきた。
「無造作な感じ」
その時は僕も、なるほどなるほど。と脳内のノートにメモしたことを覚えている。
しかし、今一度そのノートを開いてみれば、ん? となる。
無造作ってどんなだ?
そのまま飲み込んでしまえば、ワックスもジェルも何も着けずにスタイリング一切なしな髪型なのだろうが、おそらくそういうことではないのだろう。
とりあえず消去法を行ってみる。造作的な髪型から潰していくのだ。
アフロNG。モヒカンNG。パンチパーマNG。オールバックNG。
いくつか挙げてはみたものの、そもそもが自分がし得ない髪型なことに気づく。
そして名前がある髪型が全て造作的なのではないかという境地に行き着く。
ボウズOUT。パーマOUT。ツーブロックOUT。
とにかく僕は鏡の前に立っていろいろ試してみた。
分け目を変えたり、前髪を立ち上げてみたり、横に流してみたり、毛先を立たせてみたり。
とにかく無造作に近づけようと必死だった。
しかし、それは何かしらが完成したところで無造作なのだろうか。
ここまで試行錯誤して作り上げたものは、実は最も造作的ではないのだろうか。
遂に僕は髪の毛を触ることをやめた。
そして僕に貼られた学生時代の印象は"清潔感がない"だった。
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