大人だって夢中になれる
大人になるとやりたいことができなくなる。
居酒屋の隣の席のスーツの人から
ライングループの誰かのアイコンから
夢を追うバンドマンが歌うはずのライブハウスから
どこにいてもその現実みたいなやつは
横から失礼と割り込んできて鼓膜をブルブル震わせる。
実際少し前まで僕もそう思っていた。
暮らしていくだけでお金は減るし
お金のために時間は減るし
時間と引き換えに溜まるのは疲れだし
新しいものに手を出すどころか
好きなことさえやれなくなってくる。
やがて熱もどこへしまい込んだか分からなくなってしまう。
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僕はゲームが好きだ。
中学、高校は路上ライブか漫画か、ゲームだった。
スーパーマリオRPGという僕を完全なインドアに育てた名作がある。
その日は今ぐらいの夏の入り口。
ドゥカティという村の炭鉱を学校に行く前にトロッコで駆け抜け
そしてそのまま学校に行き忘れた。
ゲームに限らずハマったものに一点集中するタイプの僕が
ゲームをしてもすぐにやめてしまう時期があった。
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僕のCD、trashy world。
制作に50万円かかった。(こだわりを増やせばもっともっとかかる)
ソロの僕には莫大な金額だった。
貯金もなかったけどよく出させてもらっていたライブハウスのご厚意で
レコーディング代を後払いにしていただいた。
人生で初めての借金というやつだった。
そのCDを持って路上ライブツアーをした。
真冬で指の感覚もなくて、移動も辛かった。
バレンタインに東京で大雪が降り、香川では風でキャリーバッグが浮いた。
岡山で泣きそうになるぐらい警察の方に怒られ
名古屋では路上スポットに車が突っ込んできて
少しずれてたら死んでたかもしれなかった。
広島で声が出なくなり、福岡のフェリーの階段でキャリーのタイヤが壊れた。
800枚買ってもらえた。
めちゃめちゃ嬉しかった。
だけどバスやフェリーの移動費やネットカフェの宿代、
家賃や食費、携帯代などを引くと25万ぐらいのマイナスになった。
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路上ツアーが終わってバイトをして月5万円ずつ返した。
音楽そっちのけになるぐらい働いてたら
モヤモヤが心の底に沈殿していくのがわかった。
その後も毎月ミュージックビデオを出すためにそのままのペースで働き続けた
気分転換にゲームをしてみたけど全然集中できない。
最初のボスを倒して次の街の入り口まで進めたあたりでやめてしまう。
みたいなことが続いた。
その後突発性難聴になったけど
おかげで方向転換するきっかけになった。
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今僕には時間がある。
いや、一度いままでの流れを断ち切って無理やり時間を作った。
アレンジの勉強をしたり、1日中アニメを見たり
自分が本当にやりたいことはなんだろうと模索しまくったり
好きな人を見つけてその人の本を読んだり、寝まくったりした。
もう湧き水は涸れてしまって
あの頃みたいに喉を潤したり水面に平たい石を投げて跳ねさせたり
魚を手で捕まえようとしたりすることはないのかな。
大人になるってそういうことなのかな。
と思っていたけど
やりたいことはどんどん溢れ出してくる。
湧いてくる場所に宝物とかゴミとか置きすぎて
塞いでしまっていただけだった。
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夢中になれないのは大人になったからじゃない。
余裕を作れていないから夢中になれないんだ。
確かにやることは増える。
言い訳にしやすいことばっかり増える。
それでも僕はこう言いたい。
大人だって夢中になれる。
余計なもの全部どけたら湧いてくる気持ちはなんですか?
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