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故郷とは幼いころの思い出の場所のことを言うのか? 映画「耳をすませば」


「故郷っていうのが私にはまだ分からないけど」
主人公の月島雫は、カントリーロードの日本語訳を終えて、仲間にこのように言った。故郷とはなんだろうか。それは、幼いころに住んだ町のことをいうのだろうか。また、雫はなぜ故郷が分からないのだろうか。そして、なぜこの映画の主題歌がカントリーロードなのだろうか。

 幼いころ住んだ町に帰ってみると、その時の記憶が戻ってくることがよくある。そういう場所を多くの人は故郷と言うのかもしれない。しかし、幼いころ聞いていた音楽聞いたりや小説を読んだりしても、その時の記憶は蘇る。このことから、〈故郷〉とは、幼いころの記憶を呼び覚ます媒体(町や音楽、小説など)とその記憶のことと言ってもいいのかもしれない。

 誰かが誰かに想いを寄せ、近づいたり離れたりする。嬉しくなったり、切なくなったりする。将来、何をすれば良いか、自分が何者なのか分からない不安を抱え、焦ったりする。若者が普遍的に抱く悩みがそこにはあった。雫が〈故郷〉が分からないのは、まさにその渦中にいるからではないだろうか。〈故郷〉がいたるところにうまれているのだ。雫が通った学校、読んだ物語、書いた物語、杉村に告白された神社、聖司と歩いた帰り道は、10年後、20年後には、きっと雫にとっての〈故郷〉になるに違いない。

カントリーロード
この道 故郷へ つづいても
僕は 行かないさ 行けない
カントリーロード


きっと、この映画は、老若男女すべての人に向けてつくられているのであろう。私や、映画を見た人にとっての懐かしい記憶や思い出がこの映画の中にはある。それはすなわち、この映画こそ私たちの〈故郷〉(カントリーロード)になるということなのだ。

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