鹿児島県三島村を踏破 その3<日本全市町村踏破(制覇)>
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2017年12月30日午後、鹿児島県鹿児島郡三島村、薩摩硫黄島に上陸。島に着いてすぐに訪れたのは、港の左手、集落のはずれにあるこちら。
俊寛僧都の像。俊寛とは、平安末期、平清盛に対するクーデター計画「鹿ヶ谷の陰謀」が発覚した際、首謀者の一人として捕まった僧侶で、藤原成経、平康頼とともに「鬼界ヶ島」への流刑に処せられる。その「鬼界ヶ島」が、ここ硫黄島だという。
流刑となった三人のうち、二人は一年で赦免されて京に帰るが、俊寛だけは許されず、取り残される。俊寛は赦免された二人が乗る船を浜辺で追い掛け、「これ乗せて行け、具して行け」と叫ぶが、無情にも船は沖へと去って行く。この俊寛像は、そのシーンを再現したものである。
「鬼界ヶ島」の場所には諸説あり、ここ硫黄島の他、同じ南西諸島でももっと南の喜界島も有力だが、いずれにしろ当時の日本の「南の果て」に流刑されたということだ。喜界島の方は、近年、500棟もの建物跡が出土した、中世南西諸島最大の遺跡が発見され、大宰府が管理下に置いていたと言われる為、俊寛の時代にはまだ、この地域にしては都会だったと思われる。現代でも、硫黄島よりは喜界島の方が開けている。鹿児島や奄美大島との間の飛行機も、毎日飛ぶ。
一方ここ硫黄島はと言えば……現代においてすら、船も飛行機も、毎日はやって来ない(飛行機に至っては週二日)。今の日本で毎日いつでも行ける訳ではない、珍しい場所である。その上、前回の投稿で書いたように、思わず「人外魔境」と形容してしまう、火山と噴煙を上げ、海上にまで硫黄臭が漂う、過酷な環境。八百年も前に、都の生活に慣れた上流階級が、こんな場所に流刑に処せられたら、絶望しかないだろう。二人が帰った翌年、俊寛の侍童だった有王が訪ねて来たが、その時、娘の手紙を受け取り、死を決意して、自ら食を断ち、自害したという。
俊寛の話は、「平家物語」において詳細に語られ、能や歌舞伎など、後世芸能の題材ともされた。俊寛像の前には、硫黄島での歌舞伎上演の記念碑も立っている。
俊寛像が立っているのは、「三島開発総合センター」の庭。島に着いて真っ先にここへ来たのは、有名な俊寛像を見る為でもあったが、ここでキャンプ場の申込みをしに来たのであった。
硫黄島には五軒の宿があるのだが、年末年始は、全ての宿が閉まるのだ。そのことが分かった時、一旦は硫黄島行きを諦めたのだが、よく調べてみると、キャンプ場がある。キャンプ場も本来休みというか、そもそも受付する「三島開発総合センター」が休みなのだが、職員の方のご厚意により、船が着く時間に、特別に対応頂いた。この場を借りて深く感謝申し上げる。
「三島開発総合センター」から、再び港と、その前の集落を通り過ぎる。港の内側の防波堤の中は、まるで泥の海。
集落と港を通り過ぎて、「三島開発総合センター」の反対側の高台より。中央左、電線の下の平たい二階建ての大きな建物が「三島開発総合センター」。
集落は、五分も歩けば通り過ぎるくらいの規模。ただ、家の数は意外と多い。最初に火山を見て「人外魔境」と失礼なことを書いてしまったが(苦笑)、こうして集落を眺めると、結構住み心地も良さそうな気がする。年末年始は全島を上げて完全に商業活動はしないというのも、旅行者からは不便とは言え、良い文化だと思う。
キャンプ場は、高台の上にある「みしまジャンベスクール」の向かいの芝生。ジャンベとは、アフリカに伝わる手で叩く太鼓の一種で、1994年にギニアのジャンベ奏者が来島して以来、島での演奏が盛んになり、2004年には、アジア初の本格的にジャンベが習える施設として、このスクールが開校した。
みしまジャンベスクール
ジャンベスクールの向かいの、ガジュマルらしき木の根元に、愛用の一人用テントを広げてキャンプ。翌日の天気があまり良くなさそうなので、雨よけの意味合いも兼ねて、木の下にした。
他にもう一組、車で来ていた家族連れも、キャンプしていた。
キャンプ場の裏手の土手を登ったら、裏に何らかの工場らしきものが見えた。今は操業しているようには見えない。南国の離島には、小さな島でも製糖工場があったりするが、硫黄島ではサトウキビを育ててはいないので、違うだろう。かつては主峰・硫黄山で硫黄や珪石を採取していたというので、その加工場でもあったのだろうか。
次回は、集落内の探訪記を。なかなか行く人も少ない硫黄島なので、じっくり詳しく書いて行きたい。
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