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あの夏、僕が舞台後方から見た景色

今から十年以上前・・・ぐっでぃテレビを開設して少し経ったある日のこと、事務所の電話が鳴りました。
「今年の夏に宮川大介 花子さんが音楽劇をするので、舞台撮影を行いDVDを作りたいのですが・・・。」

いかがお過ごしでしょうか。ぐっでぃテレビのモーリーです。
今回のnoteは、今ではぐっでぃテレビの3大制作物の一つである舞台撮影・舞台コンテンツ制作の誕生秘話を綴ってみたいと思います。

私たちぐっでぃテレビの開設当初の奮闘記と、あの夏出会った、宮川大介 花子さんとの素敵なエピソードをちょっと紹介したいと思います。

初めての大プロジェクトにビビる・・・

正直、これまでイベントなどで複数台カメラでの撮影編集はしていたので、プロジェクトを成功させる自信はありました。とは言え作っていたのは夏祭りなどのメイン会場で行われている舞台を撮影し、良いところをチョイスして作るダイジェスト版がほとんど。

宮川大介 花子さんといった有名人の方の舞台を、当時まだまだ映像の世界に入りたての私が映像の現場責任者として中心となり、他のスタッフに指示をおくり撮影するなんて出来るのだろうか・・・と少しのためらいもありました。

しかし逃げてちゃだめだ!!これまでの経験で冷静に考えれば出来るはず!!自分の今までやってきたことを信じてやってみよう!!とその依頼をお受けすることとなりました。

勉強・研究・分析の日々

同じ舞台イベントでも良いカットをチョイスして何分かにまとめる番組制作と違って、開演からフィナーレまで時間軸で撮影を行い制作する舞台DVDは撮影方法など根本的に考え方が違います。
 
そのお仕事を受けてから本番までの数か月間、仕事の空き時間などを見つけては、とにかくめちゃくちゃ勉強しました。たくさんの舞台劇の映像を見てカメラワークを研究し、カット切りのタイミング、カットとカットの長さ、間のとり方など分析し、ノートにまとめました。

当時元町にあったヤマハ楽器店に仲の良い店員さんがいたので、なんども足を運び音響収録について教えてもらいにも行きました。

よしこれなら想定上、成功させることが出来るぞ!
そう思えるまで映像・音声収録の理論から、当日のスタッフ間の動きまで完全にシミュレーションしたつもりでした。

いざ本番当日!その日は一年で最も暑い日だった。

本番当日。その日はお盆真っただ中の一年で最も暑い日でした。
機材を運び現場入りする私たちでしたが、早速想定外の事態が発生。

音声ラインを頂きに(※1)、キャノンケーブル(※2)を2本もって音響さんのところへ向かう私。もちろん事前に連絡を入れているので大丈夫なはず。

(※1)音声ラインをもらうとは、会場で流れている音声をそのまま、音声ミキサーから横流ししてもらうこと。
(※2)キャノンとは正式名はXLR端子のことでキャノンケーブルとはXLR端子の付いたケーブルのこと。

するとちょっと無口な音響さんが登場。
気を使いながら恐る恐る
「すみません。先日ご連絡させて頂きました音声ラインをLRで頂きたのですがよろしいですか。」
するとぼそっと音響さんはこう呟きました。

「1番2番のフォン端子からとって。」

青ざめました。フォン端子・・・持ってきてないよ・・・てっきりキャノンでもらえると思ってた・・・。

また恐る恐る
「変換プラグ貸してもらえませんか?」
と伝えるも、音響さんも忙しくされているので全く相手にしてくれません。
とりあえず一旦引き上げることにします。

端子を買いに行っている時間もない。違う接続方法はないかを検討するも手持ちの機材ではどうしようもありません。どうしよう・・・焦っても焦ってもどんどん時間は本番に近づくばかり・・・とりあえず今は他の機材のチェックに集中しよう。

その舞台は1週間ほど連続で行われ、撮影当日は千秋楽。
毎日のように公演を行っているためゲネ(※3)もなく、ほぼぶっつけ本番。音声の問題が解決することなく刻々と時は進みます。

(※3)ゲネとはゲネプロの略で、リハーサルのことをさします。

その時救世主が現れます。

「どうされました?」
先ほどとは違うの音響さんが手を差し伸べてくれたのです。

「フォン端子のケーブルがなくって・・・」
事情を説明すると、笑顔でその音響さんは

「裏に端子あるんちゃうかなぁ?探してきますわ!」
といって颯爽と端子を探しに行ってくれました。

待つこと数分。
「これ使ってください。」

おおぉ~変換プラグ!!!ありがとう~!!助かったぁ~!!

開場ギリギリに問題解決!!本当にありがたかった~!
その音響さんの優しさに感謝感激したことを今でも覚えています。

もちろんこの反省を生かし、その後あらゆる端子、変換プラグ、あらゆる長さのケーブルを現場に常備するようになったのは言うまでもありません。(一番最初現場でこのようなことがあって本当に勉強になりました。)

初めての大プロジェクトは結果として大成功

その後、撮影は順調に進み、宮川大介・花子さんの音楽劇DVD制作は大成功。制作したDVDは反響を呼び、何度も追加納品をさせて頂きました。

何よりも嬉しかったのは音楽劇の音楽監督の谷川賢作さん(谷川俊太郎さんの息子さんです。)から

「映像が本当に素晴らしい!!ちゃんと世界観が表現されている!」

とお褒めの言葉を頂いたことでした。
 
初めて多くのスタッフの方と一緒にお仕事をさせてもらって、しかも映像部門は私がリーダー。演者は有名人の方。制作したDVDは大量に出荷。

まだ新米だった私には足が震えるような環境での仕事でしたが、この経験で学んだことは、予定外の端子事件はあったけれども、チャレンジすることの大切さ。そして知識を増やし、どのようなものが望まれているのかを全力で分析し、そのゴールに向かって準備することで、みんなに喜ばれる仕事ができる。とにかく時間いっぱいまで、全力でやり切ることの大切さを実感しました。

為せば成る、為さねば成らぬ何事も。

この経験が私の仕事に対する基本方針になったような気がします。

宮川大介 花子さんとの素敵な出会い

宮川大介 花子さんとの素敵なエピソードを少しだけ。

当日宮川大介・花子さんのところへ楽屋へご挨拶へ伺ったときのこと。
本番後、千秋楽ということもあり、再度ご挨拶とお礼に伺った際、他の子役の方などと花子さんは写真を撮っておられました。

裏方スタッフの私が写真をお願いするなんておこがましいと思い、何も言わず挨拶できるタイミングをそっと待っていました。
他の方との写真撮影が終わるなんと花子さん直々に私のところへ来て頂き「今日はありがとうなぁ。映像楽しみにしてるでぇ。一緒に写真撮ろう。」と言っていただき2ショットで写真まで撮ってくれました。

撮影前も緊張する私に大介さんも花子さんも声を掛け心づかいしていただき、大変気持ちが和んだことも覚えています。

またその数年後再度、とある撮影現場で花子さんと再会。
裏方の私のことを覚えているはずもないだろうと思いながらも、挨拶させて頂きました。

すると花子さんはいつもの笑顔で
「もちろん覚えてるでぇ~!あの時の映像今でも見てるわ!ありとうなぁ~!」
ってこれまた優しく声をかけてくださりました。

人にやさしく、思いやる気持ちを持ち、人の気持ちを考えて行動されている方で、自分もそんな優しく暖かい大人になりたいと思ったエピソードでした。


宮川花子さんは現在療養中ですが、花子さんの優しさに救われた方もたくさんいると思います。必ずや復活し、たくさんの拍手の中、スポットライトを浴びて満面の笑顔でステージに立つ花子さんと出会えるのを心待ちにしております。

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