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INTERVIEW | 学生が「IoTとFabと福祉」に関わる理由 ~山口県の1事例~

技術と福祉の関係を深めていくとき、そこには「福祉と技術をつなぐ人」が必要とされます。しかしながら地域にそのような人は少なく、職業として成り立つ仕組みもできていません。これに対して、山口県では学生を中心とした試みが始まっています。どのような経緯やモチベーションで「IoTとFabと福祉」に関わることになったのか、今後どのように活動していくのかを聴いてみました。

はじめに

福祉の現場にとって、機械やデジタル技術を使いこなすハードルは高く、気軽に相談できる人が身近にいることもあまりありません。機材のサポートをしてくれたり、一緒になってアイデアを考えてくれたり、福祉現場のことをある程度は理解してくれたり、そんな都合のよい「福祉と技術をつなぐ人」は、特定の地域に限ったことではなく、日本や世界に視野を広げてみても必要とされる人です。

少し前まで、障害のある人や高齢者をIT技術で支援する「福祉情報技術コーディネーター」という資格試験がありましたが、技術の急速な進展により、認定試験用の教材内容が新技術に合わない点が多々発生しているため、2017年2月12日の第36回試験をもって休止することになりました。それぐらい「福祉と技術をつなぐ人」は必要だけれども、実際のところは難しいという問題があります。

福井県鯖江市に、地場企業のブランディングや産業観光に取り組む「TSUGI[ツギ]」というデザイナー集団がいます。彼らは伝統工芸職人の町医者として、地域の人たちに必要とされる「インタウンデザイナー」として活動しています(企業に専属するデザイナーを「インハウスデザイナー」と呼ぶ)。

同じように考えると、地域の町医者として物事をつくりだす「インタウンメイカ―」という職業も考えられるでしょう。これはよくよく考えると、すでに世界中に存在し、市民が自由に利用できる工房「FabLab[ファブラボ]」が当てはまりつつあります。

このファブラボに学生が関わりながら、「福祉と技術をつなぐ人」として「スキルを習得すること」と「地域の企業や福祉施設に対して物事をつくりだすこと」を併行して進める仕組みづくりが、いま山口県山口市で始まっています。

他の都道府県で同様の仕組みをつくるときの参考としたいと思い、その活動に関わっている学生にインタビューしてきました。

インタビュー

今回インタビューに応じてくださったのは、溝崎陸(みぞざき りく)さんと豊田昂志(とよた たかし)さんのお二人。山口大学国際総合科学部の3年生で、在学しながら、ファブラボ山口で勤務しています。

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(写真はファブラボ山口にて 左 : 溝崎陸さん、  右 : 豊田昂志さん)

― 活動についてどうやって知りましたか?

[豊]: 冨本先生(冨本浩一郎・ふもとこういちろう、山口大学国際総合科学部 講師)が、夏ころに授業の中でIoTとFabと福祉の活動や今回の仕組みについて宣伝されていたのをキッカケに知りました。

[溝]: 国際総合科学部のFacebookグループがあって、そこに冨本先生からの投稿がタイムラインに流れてきて知りました。

― 関わってみようと思ったのはなぜですか?

[豊] : デザインやエンジニアリングが専門の大学ではありませんが、大学1年のときに「デザイン科学」という授業があり、アウトプットの方法はいろいろあるにしろ、課題を自分でみつけてプロトタイプ(試作、模型)をつくりながら解決手段を考える方法を学びました。ただ、大学のカリキュラムでは時間も限られていて限界があるので、実地でインタビューや発掘、そしてプロトタイプ制作までしたいと思い、今回の活動に関心をもちました。

[溝]: アイデアを出すことが楽しく、問題解決の手法としてのデザイン思考に魅力を感じています。実践する機会が学部ではほとんどなかったので実践でやってみたいと思いました。また、留学中にデザインを学んでいて、自分の将来の道としてUI(User Interface、ユーザーインタフェース)などデザインの中でもどの分野に行くのかしぼりきれない状態だったので、こういう機会に自分は何をしたいのかも考えてみたいです。

※山口大学国際総合科学部では、2年生の後半から3年生の前半まで、学生全員が交換留学としてアジアや欧米など各国に留学するそうです。

― この活動に参加する前から技術的なスキルはありましたか?

[豊]: 以前に授業の一環でホームページをつくったりしてましたが、ずいぶんとしてなかったので忘れています。パワーポイントでプレゼンテーションを綺麗につくることが好きで、どうすれば美しく見えるのかを考えたりします。3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタルファブリケーションも好きな分野の1つです。

[溝]: 何かひとつのソフトウェアを集中して学んだことはなく、授業でイラストやグラフィックを作るillustrator(イラストレーター)や、3Dのデータを作成するFusion 360(フュージョン)や Tinkercad(ティンカーキャド)を学んだくらいで、ほとんど技術に関しては初心者です。

― 具体的な活動はいつから始まりましたか?

[豊]: 河口さん(河口隆・かわぐちたかし、株式会社アワセルブス 代表取締役、ファブラボ山口 運営)が大学に来られて、冨本先生と一緒に今回の活動についてプレゼンがあり、興味があったら意思表明をすることになっていました。

そこに手をあげてから、9月中にSlack(グループチャット用のアプリ)のアカウントつくって、アルバイトとして勤務するための条件や、これからのスケジュールなどをやりとりして、9月25日に実質的にスタートしました。

[溝]: そこから9月25日~10月25日の1ヶ月の間に、FabとIoTの基礎として、河口さんに機材講習を受けました。

0回目: slackの設定や今後の方針を打合せ
1回目: Illustratorでファイル作成して、レーザーカッターで出力
2回目: Fusion 360 で3Dデータを作成
3回目: MESH(メッシュ)、 micro:bit(マイクロビット)に触れる
4回目: 振返り、とくにレーザーカッターの使い方

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― 戸惑ったこと、困っていること(スキル、環境、人間関係など)は?

[溝]: イラストレータ―は慣れつつありますが、レクチャーを受けてたときにはスムーズにいけたけど、自分ひとりだとファイルをつくるときに細かい設定のやりかたなど何度かつっかかることがあります。あとFusionをまだ使いこなせていないのが不安です。

[豊]: 機材的な面倒くささもあります。ファブラボ山口にあるレーザーカッターと山口大学にあるレーザーカッターの機種が違うので、細かい話ですが、一方は彫刻とカットを同時にするのが面倒だったりします。

ただ、アウトプットしたものが前回より良くなってきているので、スキルの習得を実感できて楽しいです。自分のパソコンにはまだIllustratorは入っていないのですが、入れて自主的にも学んでいきたいと思います。

― 今後はどのように活動を進めていくんですか?

[豊]: 毎週金曜日にファブラボ山口にアルバイトとして勤務します。そのなかで福祉施設とのやりとりや、ファブラボ山口の他のプロジェクトに参加もしながら技術習得をしていきます。

[溝]: 一緒に活動させていただく福祉施設は「社会福祉法人大和福祉会 光あけぼの園」です。帆布を使った製品をつくる障害福祉事業所で、現場の人たちとヒアリングやリサーチをして、施設内の問題解決というよりは、商品開発のブラッシュアップや端材の有効活用などを考えていきます。

[豊]: 製品のある施設なので、製品そのものの改良や、端材を使った地域の人とのワークショップなどの体験など、いろいろな可能性を粘土細工みたいにこねくりまわして形にしていきたいと思っています。

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[溝]: 大学の中で、冨本先生から「ライブラリ(学部スタジオ施設の一つ)」の学生サポートスタッフの募集があり、これに参加しています。ライブラリには、デザインや技術に関する書籍があったり、3Dプリンターなど機材が置いていて、基本的にオープンで実験的な場所として運営していく予定です。

[豊]: 1年生を含む7名で率先して活動をはじめていて、ライブラリ内の機材で成果物を1個ずつ作ることを身近な目標としながら、機材の活用して「つくってみようかな」と思える文化をつくることを目指しています。

(以下は山口大学国際総合科学部のライブラリの一部と冨本先生)

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冨本写真

― 溝崎さん、豊田さん、ありがとうございました!

【参考】
■ 福祉情報技術コーディネーター認定試験の休止について
■ 伝統工芸職人の「町医者」に インタウンデザイナーという生き方
ACTIVITY | 山口 - IoTとFabと福祉 -


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