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キム・ジュレ
2022年9月8日 14:52
五月二十二日 次の日、俺が『行ってきます』と、家の扉を開けた。するとそこには、既にYが家の前で立っていた。『よっ!』と、片手を上げて俺に近づいた。『よっ!』と、ギターを背負い直して、Yに近づいた。『そう言えばキーホルダー、あった?』『うん。あったよ。いやー、俺さぁ…』そういいかけた時、Yの顔が曇っていた。『…あれ?どうした?』と、俺がYの顔を伺うと、Yは浮かばない顔
2022年9月23日 17:27
五月二十三日 またも、スマートフォンから『ピピピ』と、音がなった。遮光カーテンなのにも関わらず、隙間から日差しが差し込んで、俺の目を覚まさせた。しかし、俺はこの感覚が嫌いじゃない。目を擦りながら身体を起こす朝の八時。ちょうどいい時間帯に目を覚ます事が出来た。俺は急いで服に着替える。インナーにジャケット、ジーンズにおまけに靴下。いつもの外出スタイル。初めて女の子と遊ぶ
2022年9月23日 17:55
六月十三日 ―――それから暫く経ち、六月も中旬を迎えた。俺達四人は、相も変わらず部室で新譜の練習に励んでいる。最初から最後まで演奏するのはもうお手の物。今回からヴォーカルを務めるのがねむちゃんだ。マリア先輩はドラムを専任することになった。少し余裕が出来たマリア先輩のお陰で、全体の違和感を少しずつ調整してくれる。それで、『mermaid in love』は少しずつ、姿
2022年9月23日 18:17
六月二十一日 『…ねぇ、本当にこのドラムセットの位置ってセンターかな?』『センターです!大丈夫ですよ!マリア先輩』『自分でセットしといてなんだけど、ちょっとズレてるように感じる…』『もう、今更ッスよ!ズレててもそこでやるしかありませんよ』『あ…。すいません!コード踏んじゃいました!』『大丈夫大丈夫!…あれ?マリー、さっきから全然喋ってないけど、緊張してるのか?』暗闇
2022年9月25日 17:35
六月二十二日 束の間の学園祭。それの最終日。あっという間にエピローグを迎えた。『それじゃあ準備はいいかい?』と、トランシーバーのイヤホンからは山田会長の声が聞こえる。俺とYとねむちゃんが、マリア先輩の方を見て一つ、一斉に頷いた。『OKだよ』とトランシーバーのマイクに向かってマリア先輩が言った。『それじゃあ、行くよ。笑っても泣いても、最初で最後の本番だ』緞帳が静かに、ゆっ
2022年9月25日 17:50
七月十六日『おーい!マリー!』今日も陽気なYの声が、俺の家の外で聞こえた。家のドアを開けると、母さんが『行ってらっしゃい』と、声をかけた。『行ってきます』と、俺はそれに答えるように振り向いた。また再び前を向くとYが腕を組ながら笑顔でこちらを見ている。何か長いトンネルを抜け出した様な、そんな気分をYを見て感じた。『なんか清々しい顔つきになってるじゃん!どうしたんだよ』
2022年9月30日 18:08
七月十八日 次の日の朝、暗雲が空一杯に敷き詰められていた。準備を終わらせると、Yは玄関の前で仁王立ちをしながら腕を組んで、俺が来るのを待っていた。『おそーい!』と、少し張らせた声が、俺を出迎えた。『ゴメンゴメン。あれ?今日はギター無し?』『勿論!今日はアンケート一辺倒!』と、百近いアンケート用紙をばたつかせてそう言った。『あ、マジで?』『当たり前だろ?七月も後二週間
2022年9月30日 18:14
七月十九日 次の日、エオンの前、自転車から降りて胸を張りながら自動ドアの前まで足を運ぶと思惑通りにYは来ていなかった。が、ねむちゃんは壁に背中を預けながらスマートフォンから流れる音楽を聴いていた。『あ、ねむちゃん、早いね』と、声を掛けたが、気が付かない様子でイヤホンから音楽を耳に流し入れている。ねむちゃんは目を瞑って暫くそのまま静かに、ゆっくりと上下に体を揺らせながら、音楽を楽
2022年9月30日 18:37
八月七日 夏休みも半ば、酷暑が続く。金刀比羅祭りが後三日と迫る中、俺達三人は学校の部室で猛特訓に励んでいた。ねむちゃんも徐々にドラムでリズムキープをしながら歌える程、上達が目覚ましい。そして俺もYも、学園祭の時より数段に質が上がった様にも感じる。むしろYなんて、一時期不調だったアレンジも曲調に違和感なく取り入れられる程だ。以前感じていた『蟠り』も何処かに取っ払ったような