木下智夫

おもにFacebook上で、音楽と精神医療のことを書いています。本名アカウント、フルオ…

木下智夫

おもにFacebook上で、音楽と精神医療のことを書いています。本名アカウント、フルオープンですのでご自由にご覧下さい。

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精神病院で隔離されるということ

精神病理と向精神薬についてやみくもに勉強した時期がある。これはある一定程度の知性があり、そうして精神病と呼ばれたことがある者はみなそうだろう。自分の主治医よりも自分に詳しくなければ一応の高等教育を受けたものとしてはやりきれない。自分という精神の主体が病んでいると言われるのだから。 朝の7時近くなっても駒ケ岳から太陽は顔を出さない。冬らしく冷めた空気に広いマレットゴルフ場が沈んでいる。そうしてやがてラヴェルのダフニスとクロエをを思わせる夜明けに駒ケ岳が鮮やかに白銀に輝く。

¥100
    • 熱狂! g-GODライブ❕

      この数日、ある「事件」がらみで、ひとの自由ということについて考えていたところだった。人はその「自然状態」で無限定な自由を持つことはない。日本国憲法に規定される自由、基本的人権も、公共の福祉を侵さない限りにおいて保証されるのだ。社会、他人を傷つけてまでもの自由は許されない。当然のことだ。ここで私は公共の福祉を人としての共同認識という言葉で置き換えてみた。音楽におけるコードである。 私はフリーフォームの音楽をする。そこでは多く奏者の身体性、手クセ指クセが音楽を規定する。だが私が

      • Cyber Papa + 森田修史  Jazz Live!

        いつものようにずいぶんと早くハコ入りしたオーナー孝平さんと私だった。孝平さんが、今日はこれを聴こうとEvans のYou Must Believe In Spring を取り出した。伝統的なバップを好む孝平さんにエディ・ゴメス?と怪訝な面持ちを向けた私に、孝平さんはベースは誰でも好きなんだ、と、屈託のない笑みを浮かべる。 やがてほぼ同時に四人がハコ入りした。肩の力の抜けたセッティングとアップ。息の合ったアンサンブルに安心して、私はリハの席を外した。 Cyber Papa :

        • ここに、あるかなしみ…

          また兄木下巨一を糾弾しているように見えるかもしれない。だが、私は、長野県飯田市役所でレジェンドとまで呼ばれ、成功者と見なされている兄木下巨一を哀れに思い、その深い哀しみがこの文章へと突き動かしている。この文章は公開書簡として兄木下巨一の『勤務先』に送られるが、小心で自己保身的になった巨一の目に触れることはないだろう。そうしてさらに深い哀しみに覆われながら、私は書き募る。 本日私は実家である町中の小さな美容院に髪を切りにいった。そこで衝撃的な知らせを受けた。来月店をやめ、実家

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        精神病院で隔離されるということ

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          森田修史トリオ 初夏の中央道ツアー

          いつものハコ、Over The Rainbow に早くに到着した私は、ひとり激しく練習に打ち込むドラムス中村海斗を見た。そのボキャブラリ豊富で色彩豊かなドラミングとはある種裏腹に、その姿を見て聞いて、私はそこに寡黙な求道者を感じた。 次いで現れたベーシスト落合康介は、バッハの無伴奏チェロ組曲第4番からジーグを弾き始めた。私はそのピッチの正確と修練を感じさせるボーイングにハッとした。最後にハコ入りしたリーダー・サックスの森田修史が、レギュラーグリップでアップを続ける中村を見て、

          森田修史トリオ 初夏の中央道ツアー

          日下部かおりとシュターミツ四重奏団

          When you hear music, after it’s over, it’s gone in the air, you can never capture it again… 私は、私たちジャズを愛する者なら誰もが心に刻んでいる、伝説のマルチリード奏者エリック・ドルフィのこの言葉を思いながら取材メモを捨てた。音楽は空中に消え、二度とつかまえることはできない。そう、終わったあとの男女の愛のように。そう、だからこそ限りなく美しく愛おしい。 最初に私の胸を打ったのは、そ

          日下部かおりとシュターミツ四重奏団

          木下 精神医療について語り始める

          ぼくがいわゆるところの「精神医療サービス」(それがサービスの名に値したのか疑問だが)の本格的消費者となったのは、二十歳の時のことである。 思えば発病の要因はごく幼少のころから考えられる。でも、はっきりといえるのは、上京して大学に入ってからのことだ。病歴をたどればきりがないけれども、分不相応な大学で、生まれて初めて落ちこぼれの実感を味わったぼくは、明らかな自閉と抑鬱の状態にあった。何度か精神科の門をたたいたりしたけれども釈然とせず、ぼくは酒におぼれていた。大学をやめ、音楽大学行

          木下 精神医療について語り始める

          森田修史Quatet Jazz Live Over The Rainbow IIDA森田修史(ts) 魚返明未(p) 安東昇(b) 小松伸之(ds)

          家に戻った私は、迫りくる睡眠の発作と戦った。いつもの表現衝動、内面との対話が形を成してこない。けっきょくその夜はやむをえず眠りをとったのだが、いま一夜以上を経て、かすかな睡眠欲求は消えない。実際、このメンバーの名前たちと、素晴らしいライブだったという一行があれば、私のモノ書きとしての仕事は終わったようなものなのだが、それは私の矜持が許さない。この「現実」から逃れようとするものに違いない睡眠への強力な誘いは何だったのだろうか。 いつものように、リハーサルなどはじまるはずのない

          森田修史Quatet Jazz Live Over The Rainbow IIDA森田修史(ts) 魚返明未(p) 安東昇(b) 小松伸之(ds)

          愛の挨拶 - 篠崎史紀の美学

          偶然にFb 上でマロこと篠崎史紀氏の知遇を得て、しばらくジャズを離れて思考を巡らすことになった。音楽とは一瞬に宇宙を、そうして真理を見る行為である。マロの、真実に生きる姿を見てそう思った。 YouTube で確認できる演奏では、マロの演奏は有名な小品の動画が多い。そのことがかえってぼくを音楽の本質に近づけた。 それは何という音楽的な空間だったことだろう。テンポはルバートしているようでいて、実は一拍の幅が広いだけで、基本的にシビアと言っていいほどのきっちりしたインテンポだ。

          愛の挨拶 - 篠崎史紀の美学

          精神病院で隔離されるということ

          精神病理と向精神薬についてやみくもに勉強した時期がある。これはある一定程度の知性があり、そうして精神病と呼ばれたことがある者はみなそうだろう。自分の主治医よりも自分に詳しくなければ一応の高等教育を受けたものとしてはやりきれない。自分という精神の主体が病んでいると言われるのだから。 朝の7時近くなっても駒ケ岳から太陽は顔を出さない。冬らしく冷めた空気に広いマレットゴルフ場が沈んでいる。そうしてやがてラヴェルのダフニスとクロエをを思わせる夜明けに駒ケ岳が鮮やかに白銀に輝く。

          精神病院で隔離されるということ

          私の躁鬱日記 2023.4.26.8

          私は年に何回か天才になる(実は日常的にそうではないか、という疑いを抱いているのであるが(笑)。テキメンなのは、ひとまえでピアノを弾くために一切の向精神薬を断つ時だ。感性さえわたり、天啓閃き、手指等の運動も鮮やかで、まさしく天の才能ここに開花せり、という感じなのだが、いかんせんまったく眠れなくなる。やがて眼も泳ぎがちになり、演奏行為だけはできるのだけれど、自分の天才を信じるあまり、現実認識が怪しくなっていく。そうして、本番のあとは、天才を信じてムダな抵抗をするがゆえに、保護室隔

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          Eiji Nakayama presentsENATONE —エナトーネ—  濤(とう)CD発売記念LIVE中山英二(bass)北沢直子(flute)武田明美(筝)  ‘24.Apr.21.      at Over The Rainbow IIDA

          打ち上げに至って、私は一種安寧な違和感の中にいた。アンコールのあと、皆の前で中山がステージから私を名指して礼を述べてくれたあと、オフステージでおよそ公にしたことのないフォームのピアニストとしての私を高く評価してくださったのだった。私のフリーフォームは「逃げ」だと言って。ただ、私にアーティストとしての凄みがあるとすれば、それはピアニストとしてであるよりも、ライターとして、であると願う。 その時間はライブの演奏にも劣らぬ充実したコミュニケーションの一瞬だった、というと演奏と演奏

          Eiji Nakayama presentsENATONE —エナトーネ—  濤(とう)CD発売記念LIVE中山英二(bass)北沢直子(flute)武田明美(筝)  ‘24.Apr.21.      at Over The Rainbow IIDA

          三人十色(さんにんといろ) LIVE内藤哲郎(和太鼓) 小野越郎(津軽三味線) 木村俊介(篠笛)     特別ゲスト 加藤木朗(舞踏・太鼓)               at飯田CANVAS ’24. Apr.17

          私には木遣りと聞こえる「合唱」を降らせながら、演者4人がすうと舞台に登場してきたとき、私はその圧倒的迫力に、ジャズやクラシックでやるようには書きとめる力を失っていた。複合リズムとどこまでも日本のこころを現す旋律!加藤木の深いヒューモアを含んだ口上!客層も思いのほか若く、加藤木に促されて舞台に参加した観客も若かった。幸せも危険も皆で分かち合うというくすぐりに私も思わず微笑む。そうして朗声・朗音のシャワー、信頼するプロデューサーK氏の神が宿るという言葉通りの加藤木の舞!終止がパチ

          三人十色(さんにんといろ) LIVE内藤哲郎(和太鼓) 小野越郎(津軽三味線) 木村俊介(篠笛)     特別ゲスト 加藤木朗(舞踏・太鼓)               at飯田CANVAS ’24. Apr.17

          A NIGHT IN SHICHIRIYA KANO YASUKAZU'S LIVE SHOW m.29.'24.

          Yasukazu Kano    and Kazumi Aren performed absolutely stunning Chord     music on the Shinobue at Shichiriya Sabo in Iida, Nagano, Japan During the performance, I even experimented with a glass of water to produce an even deeper and richer

          A NIGHT IN SHICHIRIYA KANO YASUKAZU'S LIVE SHOW m.29.'24.

          美しい和音の調べ          狩野泰一 篠笛LIVE (共演 愛蓮和美)    in 長野県飯田市七里屋茶房 2024.3.29.

          その、篠笛とイメージするときに思う音よりもはるかに深く太い音をサブスクで確認しながら、私は水割りのグラスを弄っていた。ジャズでもクラシックでもないレビューを書くときにありがちな戸惑いなのだが、今日はそういった違和ではない、自分のなかの血の問題に沁みこんだ感動を、言葉に異化して定着する行為に苦慮していた。休憩時に狩野が横山門下の尺八の手練れでもあることを確認している。エルヴィンに深い影響を受けたプロのジャズドラマーであったことも。だが、そういった過去の学習・経験は、必ずしもいま

          美しい和音の調べ          狩野泰一 篠笛LIVE (共演 愛蓮和美)    in 長野県飯田市七里屋茶房 2024.3.29.

          Princess Clarinet of Iceland

          Arunnungur Arnadottir (I was struck at first hearing; some Internet friends told me that this is a very convenient thing these days: my Japanese sensibilities would not allow me to call this charming lady Arunnungur, etc., I'm sorry, Icelan

          ¥300

          Princess Clarinet of Iceland

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