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森田修史トリオ 初夏の中央道ツアー

いつものハコ、Over The Rainbow に早くに到着した私は、ひとり激しく練習に打ち込むドラムス中村海斗を見た。そのボキャブラリ豊富で色彩豊かなドラミングとはある種裏腹に、その姿を見て聞いて、私はそこに寡黙な求道者を感じた。
次いで現れたベーシスト落合康介は、バッハの無伴奏チェロ組曲第4番からジーグを弾き始めた。私はそのピッチの正確と修練を感じさせるボーイングにハッとした。最後にハコ入りしたリーダー・サックスの森田修史が、レギュラーグリップでアップを続ける中村を見て、「一曲だけビバップをやろうか」と言う。小気味よいブレイクの続くナイト・イン・チェニジア!ベース落合は一本でグイグイグルーヴする。
私はそこまでで、胸いっぱいの憧れを抱きつつ、リハから席を外した。

森田修史(TENOR SAX)TRIO
初夏の中央道ツアー2024   落合康介(BASS) 中村海斗(DRAMS)
      5.31 Over The Rainbow  飯田

ステージは良く知られたミディアムテンポのスタンダードから始まった。主題からソロに移る森田の音域がすこぶる広い。中村の攻撃的Fill In に負けないアグレッシブな森田。そしてベース。なんというソロだろう。音域広くグルーヴする。ボキャブラリーもすこぶる豊かなのにアウトに行っているとは感じない。正確なピッチとスウィング感!これみよがしにならない効果的なハイポジション。テナーが1コーラス入って、Ds 8小節交換から4。D.C.フリーキーなcoda。
次のナンバー、中村は3つに踏んでいたというが、私は一瞬取り損なった。テナーから入り、トリオのスリリングなインタプレイが続く。フリーっぽくも聴こえた。ベースソロ。サイズで極めて自由。Ds2コーラスインコーラスで。D.C.叫ぶように終わる。
森田オリジナル。ミディアム8。テナーの主題をDsがトリッキーにバックアップ。森田とのインタプレイ!ベース、サイズなのに奔放。ハイポジで歌い上げる。Dsインコーラスまた私はここでリズムが取りきれなくなる。D.C. codaの構造がわからない。
バラード。ベースバース。落合かき鳴らし、歌い上げる。テーマテナー入る。たっぷりとベース。この美しさはなんだろう。ジャズでしか、ジャズにしかない美!1st 最後は中村オリジナル。森田バースでテーマ、サンバビートでベースソロ。テナーが入って8コーラス、D.S.
2nd 落合オリジナルから。ユニークな3。そしてまたテナーでユニークなテーマ。中村雄弁で力強いバックアップ。楽しい。おなじみスタンダードのバラード。森田から。中村落合雄弁で的確なバッキング。森田らしいフェイク、私は森田節と呼んでいる。落合のソロが深い。歌。落合節と呼びたい!森田にかえって、D.C.ブレイクで森田。中村オリジナル。グルーヴご機嫌、リズムソロ。ここで中村の、雄弁なのに寡黙な求道者の顔が出た。テナー入る。唐突にFin.
最後落合の曲。ベース自由に。ミディアム。中村柔らかなマレットを選択する。重たく行進曲風か?森田主題からソロ、ベースソロ三人が絡み 、中村がいよいよ本番での強さを見せる。サンバ。森田からソロ。頻繁なキメ!メいっぱいサンバ!D.S.圧巻のドラムソロ!
アンコールはおなじみの高速バップナンバー!

このトリオ、コードレスと誤解されがちな編成だけれど、三人の個性と音楽的教養が色彩となって、このステージのさいちゅう私は目の眩む思いだった。そして確信したのだ。このトリオは次代を担うだろう、と。

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