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日下部かおりとシュターミツ四重奏団

When you hear music, after it’s over, it’s gone in the air, you can never capture it again…

私は、私たちジャズを愛する者なら誰もが心に刻んでいる、伝説のマルチリード奏者エリック・ドルフィのこの言葉を思いながら取材メモを捨てた。音楽は空中に消え、二度とつかまえることはできない。そう、終わったあとの男女の愛のように。そう、だからこそ限りなく美しく愛おしい。

最初に私の胸を打ったのは、その日の音楽全体をリードしたパズデラの第一ヴァイオリンだった。真正なbrio の体現。やがてそのbrio=パッションは他の演者にも熱く深く燃えていることを知る。

カルテットの美音はどうだろう!ヨーロッパの伝統をみごとに受け継いだその音楽性!スメタナでのプログラムミュージックにとどまらない芸術性!ショーソンの静謐から激情に至る美学!旧知の日下部だけではなかったヴァイオリン田中のパトス=brio!
フランクにいたって私は音楽文筆の書き手であることを諦めた。そこに現れた完成された芸術…

アンコール。私はじんわりと涙ぐんだ。

日下部かおり&シュターミツ四重奏団
‘24.jun.1 可児文化創造センターala 小劇場
スメタナ弦楽四重奏曲第一番
          我が生涯より
ショーソン詩曲(ヴァイオリン、ピアノ、弦楽四重奏)
フランクピアノ五重奏曲へ短調

日下部かおり(ピアノ)
シュターミツ四重奏団
田中和美(ヴァイオリン)

‘24. jun.1

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