鰯田イノ

普段はmonogatyというサイトで活動してます。 大海原で他の鰯と泳いでいたところn…

鰯田イノ

普段はmonogatyというサイトで活動してます。 大海原で他の鰯と泳いでいたところnoteが楽しそうに見えてやってきました。 臆病者ですのですぐに隠れてしまいます。

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  • いわし日記

    いわしの日記を集めました。 駄文集です。

最近の記事

パオンパオン!

    • 〚鰯の鱗の国の姫〛Ⅲ #シロクマ文芸部 #花吹雪

       加速する宇宙の膨張は〝心〟の素粒子すら引きさいて、宇宙を極限まで薄めていった。  全てが均一に混ざり合い、過去も現在も未来もなくて、物質も空間も時間すらない世界。ただ、生ぬるく揺蕩うだけの世界。だがそこには次の宇宙を始める〝愛のエネルギー〟が満ち始めていた―――  〝愛〟は、収束をはじめた。  彼が引き金を引いたのだ。  〝愛〟の収束は刹那だった。だが、いく度となく宇宙の崩壊と再生を経験した彼らにとって、時間など、なんの意味をもつのだろう。彼らは手をつないだ。次に来る

      • 〚鰯の鱗の国の姫〛Ⅱ #シロクマ文芸部 #花吹雪

         月から降る〝鰯〟  それを、きみは〝雨〟と呼んでいた  「ねえ〝鰯〟は分かるけどさ、きみのいう〝アメ〟って一体何なのさ……」ってぼくいうと、きみは不思議そうに首をかしげた。  「―――〝雨〟、知らないの?」  この国には月から降るのは〝鰯〟くらいしかいなくって、きみのいった〝水玉の降る雨〟なんてぼくはみたことがなかった。もしあれば、素敵なんだろう、けどさ〝水玉の降る雨〟なんてどうせいつものきみのお話なんだろ? きみは、〝ぼくら〟とは少し感じ方が違うから。  そした

        • 〚鰯の鱗の国の姫〛Ⅰ #シロクマ文芸部 #花吹雪

           花吹雪のように舞い降りる   〝鰯の鱗〟  いつもの朝がやってきた。  今日の天気も〝鰯雨〟。  ―――シト、シト、シトと。月から降る〝鰯〟たちが、お城の庭園を跳ねていて。  〝鰯〟はとても弱いから、空気に触れると死んでしまう。〝鱗〟が、剥がれるんだって。降っては消えてを繰り返すのに、〝鰯の鱗〟だけは消えずに変わらず残っていて。知らないあいだに降り積もる〝鰯の鱗〟。  降り続ける〝鰯雨〟をみて、わたしは「明日、晴れたらいいのになあ……」って。乾いた〝鱗〟を踏みつけ

        パオンパオン!

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        • いわし日記
          12本

        記事

          サクラとアメ

           「ねえ、アメ。桜雨って知ってる?」  僕らが歩く川沿いの遊歩道には温かな春の雨が降り出していた。  「桜の散る時期に降る雨なんだって」  僕の少し前を歩くサクラは独り言のようにそういった。  「花起こしの雨。桜雨。桜流し。桜と雨。日本人にとって、〝サクラとアメ〟は、二人でセットなんだね」  やがて雨は強くなり、辺りに霧がかかり始めた。「雨宿りしない?」僕がそう言いかけたとき。  「ねぇ、アメ。私ね―――」  そう言って僕に振り返ったサクラは甲高いブレーキ音とと

          サクラとアメ

          #チョコレート #シロクマ文芸部 1377字

           「チョコレート食べて鼻血でるの何故だか分かる?」  頬杖突いてトロンと眼をした彼女はそう言った。  「わからないよ」  と言いながら僕はテオブロミンとポリフェノールの血管作用について考えていた。確かにある種カフェインには興奮作用があるしそれは鼻血と有意的に関連がありそうに思えた。でも僕はあえて言わない。  「チョコレートと鼻血なんて、なんの関係があるのだろう」  チョコレートをかじりながら僕は言った。そう。僕は言わない。彼女の考えを聞きたいのだ。彼女は僕の無知に頬

          #チョコレート #シロクマ文芸部 1377字

          お風呂でいただく茶がうまい #エッセイ 876字

           お風呂で戴く茶がうまい。  題名に悩んだので率直に。  最近お酒を控えているためか茶を戴く頻度が増えた。お気に入りは蕎麦茶。けど高いので特別な日にだけ。  最近の傾向……。  ルイボスもろこしルイボス烏龍ドクダミ黒豆ルイボス蕎麦茶。てかルイボス多いな。  ルイボスは安くて飲みやすいし美味しいのがいい。カフェインも、入ってないしね。ストレスフルエンカウント鰯田にカフェインは敵。胃が悪くなるし寝付きも悪くなるしね。とはいえ朝は飲むけど。出勤前のコンビニコーヒーが幸せ。コ

          お風呂でいただく茶がうまい #エッセイ 876字

          #青写真 シロクマ文芸部 3667字

           青写真を描いてみたいと思った。あなたのじゃなく、あくまで〝自分自身の青写真〟をだ。純粋で、綺麗で、心の通った青写真。未来予想図と言い換えてもいいのかもしれない。それは奥山にひっそり流れる冬の川のように清冽であってほしいと思う。  真白い雪が降り積もる中、凍らず途切れず透明な水がとうとう流れる豊かな清流であってほしい。そこは奥山の全ての命が生まれ育まれる場所。  一匹の白オオカミが獲物を捕えた。きっと彼は奥山の主。彼は荒い息を鎮めるために冷たい水を嘗めた。冷たい川水は霊気

          #青写真 シロクマ文芸部 3667字

          ついに買った 2038字

           低温調理は今まで何度となく試してきていて厚手の鍋を毛布で包んだり炊飯器の保温機能を使ったりとわたしなりに工夫を重ねてきたところですが、結局は温度計で管理しないといけなくて割りと面倒だった。でも機械がなくてもなんとかなっていたし、面倒と思いつつも料理のたびに工夫する手間が実は楽しかったり。わたしは料理は手間をかけてなんぼだと半分くらい思う。工程が多いほうが楽しいし、出来上がったときの達成感も大きいから。と思いながら、にわか素人は分厚い鉄鍋に温度計突っ込んで遊んでいたわけですが

          ついに買った 2038字

          布団から世に訴える。 豆乳切らしてセブン寄ったらカラアゲ棒が美味そうで勢い注文。店員の粋な計らいで塩レモンカラアゲ棒が手渡された。確かに胸肉のがヘルスィーだが。そんなことより月が綺麗だとカラアゲ齧ってたら知らんおっさんにタバコくれとせがまれ激しく動揺。喫煙者に見えたのか。怖すぎ。

          布団から世に訴える。 豆乳切らしてセブン寄ったらカラアゲ棒が美味そうで勢い注文。店員の粋な計らいで塩レモンカラアゲ棒が手渡された。確かに胸肉のがヘルスィーだが。そんなことより月が綺麗だとカラアゲ齧ってたら知らんおっさんにタバコくれとせがまれ激しく動揺。喫煙者に見えたのか。怖すぎ。

          ナイトルーチン #シロクマ文芸部 1157字

           布団から上の体だけ出してベットレストにもたれる。人より長い自慢の脚はあぐらに畳んで。風呂上がりにクリーム塗りたくったすへすへの肌はシーツの衣擦れが好き。  わたしは言った。  「睡眠不足…って、すいみん〝ぶ〟そく、なのか。すいみん〝ふ〟そく、なのか。濁点の使い所(ところ)……これは〝と〟でもいけるよね? そのつかいところって、なんだかなあ。とても難しく感じることがあるの」  え。急になんのこと?  そう思うよね。  きみにかまってほしくてさ。あえてどうでもいいことを言

          ナイトルーチン #シロクマ文芸部 1157字

          #雪化粧 カバー小説 755字

           ゆきけしょう。と、君は言った。  それはあまりに唐突だったから君が発した不思議な言葉は僕の胸の内をストンと降りてきて意味を理解する間もなく雪のように溶けた。  冷たく澄んだ空気。  鈴のような君の声。  ゆきけしょう。  君の声の余韻を探しながらオノマトペや言葉の成り立ちについて考え始めていた僕に君が言った。  「雪化粧、なんのかなあ。」  君は嬉しそうだった。霜柱を踏みながら楽しげに歩く君は振り返って僕を見た。あなたも嬉しいでしょ? そんな顔をして。僕は言った。

          #雪化粧 カバー小説 755字

          おつかれたぬきの唄 cover 163字

           椎名様、参加させていただきました。楽しいご企画、ありがとう!  以下、wsd983320987様[お疲れ狸]のカバーです。 〚おつかれたぬきの唄〛  たぬきたぬきというけれど、  手ぬきはしない、たぬきです。  明日きついというけれど、  ほんとにきつね……  じゃなかった明日もきついね。  仕事がきついね。  仕事はきついね。  仕事がきつねい。  仕事はきつね。  つかれましたたぬきつね。  きつねはいいなあ、お揚げお揚げ。  おつかれたぬきシロクマ書かなき

          おつかれたぬきの唄 cover 163字

          #雪化粧 シロクマ文芸部 1234字

           〝雪化粧〟 綺麗な言葉。  わたしは思う。  枯れた木も、踏み潰された芝も、田の畦も、みんなみんな真白く綺麗になってくれればいい。しんしんと、深く降り積もってくれればいい。汚いものや醜いものや嫉妬や失恋も、すべてを真白く消して、なかったことにしてほしい。 *  妻がいることは分かっていた。わたしと似合わないと分かっていた。それでも抑えられなかった。ただ一言。「好きです」と言ってやりたかった。  「山田鮎、営業いくぞ」  「はい」  「鮎、運転しろ」  「はい」  「

          #雪化粧 シロクマ文芸部 1234字

          #愛読書で自己紹介

           山根様、素敵なご企画いつもありがとう。僭越ながら参加させていただきます。  鰯田イノは連日ハードワークのせいか頭の整理がつかず言葉が書けなくなっていて、何か書きたいなあと思いながらもちょっと書いては消しちょっと書いては頭をひねってまた消すを繰り返す日々。この文章も何度も何度も書き直しています。  仕事ではまともなのです。会議も営業も上司のご機嫌取りもオートマチックにこなせてしまう。残業だって休日が潰れるのだってオートマチック。なのに家に帰るとスイッチが切れたように駄目に

          #愛読書で自己紹介

          濡れないきみを濡らしたい #シロクマ文芸部

           新しい傘を買った。  その日は雨だった。  駅の改札を出ると、世界中のバケツをひっくり返したような土砂降りの雨だった。  煙のように立ち上がる雨で曖昧な風景となった駅前ロータリーにはなぜだかいつものトゲトゲしさはなくて、親密で柔らかいものに感じた。  風はなく、駅の庇を境に立ち現れた[濡れた世界]と[濡れない世界]。  デティールの曖昧な濡れた世界を見ていると、ぼくらの生きているはっきりしすぎた世界から切り離された別の世界のようにまるで見えた。いや、今や、曖昧に雨露

          濡れないきみを濡らしたい #シロクマ文芸部